Vol.2 No.1 2009
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研究論文:産業技術の社会受容(松本ほか)−29−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)により、省エネ製品と従来製品の価格差の5万円が学習曲線定数0.1で縮小して低下するとした。省エネ製品の普及1台あたりのCO2削減効果は電気代差8,000円を換算して115 kg-CO2/年とした。表3にまとめる。シナリオケースとして、省エネ型エアコンに補助金を付与する3つのシナリオを設定した。1台あたり2万円の補助金を想定した。シナリオは、1つは2008年度から2030年度の間付与するものとし、基本ケースと比較して補助金の効果を検証する。第2と第3はそれぞれ補助金の付与期間を2008年度から2013年度、2015年度から2020年度とし、補助金付与の時期による効果を比較した。7.2 結果基本ケースと補助金付与ケースでの消費者選好の分布を図8に示す。基本ケースではサンプル消費者(コンジョイント分析対象者)1,112名のうち、従来型エアコンより省エネエアコンを選好する消費者(Ui, EAC – Ui, TAC>0 を満たす消費者i)が675名であった(H0 = 675/1112 =0.61)。約6割の消費者が省エネエアコンを選好する(図8)。補助金で2万円製品価格が安くなったときの選好分布では Ht = 751/1112 =0.68であった(同図)。これらのデータを利用して式(4)で省エネ型エアコンの普及推移をシミュレートした。結果を図9に示す。基本ケースで省エネ型製品が2020 年に49 % (6,400万台)、2030 年に87 % (1億1千万台) に達し、2040 年にほぼ飽和する。普及によるCO2 削減効果は、2020 年に740万t-CO2、2040 年に1,400 万t-CO2であった。補助金付与シナリオ(2008-2030)では、2020年、2030年に普及がそれぞれ57 % (7,400万台)、92 % (1億2千万台) に増加した。補助金期間が2008-2013年と2015-2020年の場合では、2020年を過ぎるといずれの場合もほぼ同じ数の普及になった。しかし前者の方が普及の初期であるため、補助金を付与する台数は後者より少数で済む。付与数の合計は前者は後者の約2/3であり、費用負担も2/3である。この結果は補助金の付与は普及の初期の方が効率的であることを示唆している。8 結論と課題本研究では温暖化対策に資する環境製品の社会受容モデルを構築した。本研究を発展させるとともに、本モデルを1つのコンポーネントにした より大きな技術と社会の相互関係のモデル化の研究に発展させていくことを目指す。本研究の課題としては1つは本研究で仮定したBassモデルと消費者選好モデルの統合の方法(式(4))の妥当性の検証がある。統合法の妥当性を予測の精度という観点で、データに基づき検証する方法を検討する。第2は本研究の目標が長期の普及分析であったことから、本研究ではBassモデルをベースにしたモデルを構築し、普及係数(式(4)のp. r. N)の設定は過去の類似の製品の普及係数値を参照することとした。本研究では類似の製品を分析者が設定することとしたが、類似であることの基準があることが望ましい。係数値を参照する製品を選択する指針を検討したい。今後、本モデルでは明示的に取り扱わなかった企業の意思決定や、政府の産業技術政策の効果、公的研究の社会影響評価[11] 等も併せて技術と社会の相互関係のモデルとして発展させていくことを目指す。謝辞本研究は経済産業省の平成18年度地球温暖化問題対策調査「温暖化対策の技術選択モデルに関する調査」で実施した内容に基づく。当調査研究で協働した東京大学 藤本 淳教授、大阪大学 梅田 靖教授、システム技術研究所 槌屋治紀所長に謝意を表する。図8 消費者選好の分布横軸:Ui, EAC−Ui, TAC ,縦軸:人数(計1,112名)図9 省エネ型エアコンの普及分析結果縦軸:%(100 %は1億3千万台、そのときのCO2削減効果は約1,500万t-CO2(日本の総CO2の1 %強))20002040203020202010208060400100基本ケース補助金 : 2008-2030補助金 : 2008-2013補助金 : 2015-202012010080604020012340-1-2-3-4基本ケース補助金シナリオ

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