Vol.2 No.1 2009
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研究論文:産業技術の社会受容(松本ほか)−27−Synthesiology Vol.2 No.1(2009)して、同式の属性の項目jを決定し、コンジョイント分析の結果に基づき選好重み係数wijを設定する。製品属性の水準値skjを設定する。また学習曲線モデルを設定し、基本ケースにおける環境製品の価格低下推移を設定する。また基本ケースにおける属性の水準値の変化を設定する。学習曲線以外の要因による価格変化要因(例えば補助金)等があれば設定する。基本設定と併せた以上の設定に基づき、式(4)により普及をシミュレートする。これが基本ケースの普及予測である。次にシナリオケースを設定し、シナリオ分析を行う。基本ケースとは異なる属性の水準値の変化を設定する。例えば補助金や炭素税等の政策的措置や技術進歩による属性水準値の将来変化をシナリオとして設定する。基本ケースと同様に式(4)に基づき普及をシミュレートする。5 データの収集5.1 過去の製品の普及係数値過去の製品の普及係数を参照するために、過去の製品の普及曲線を収集し、普及係数を抽出した。図5は洗濯機の普及推移実績とBassモデルによる近似曲線である。本研究では28の製品の普及曲線を収集した。表2はこのうち20製品の普及係数値である。表の最右列には、普及率が10 %から50 %に至る年数を普及の早さの目安として示している。販売開始から飽和までは概ねこの4倍から5倍の年数を要する。自動車関連では40年から50年、60年代のテレビなど家電で普及の早いものでは10年程度である。5.2 コンジョイント分析本研究では3件のコンジョイント分析を実施した。それぞれ、1) 10万円前後の家電製品、2) 100万円程度の家屋の付帯設備、3) 自動車製品、に対して実施した。1)の10万円程度の家電製品を対象にしたコンジョイント分析の方法と結果を示す。ウェブ上で統計的にサンプリングして選定した1,112名の回答者に対して実施した。属性jは初期価格、年間電気代、製品信頼性、環境性能の4属性とした。図6はプロファイルの例である。図の2枚のプロファイルは 「製品価格」と 「環境性能」の水準が異なる。各回答者に12枚ずつのプロファイルを提示し、各プロファイルの望ましさを7段階で回答してもらい、回答をもとに各回答者iの各属性jに対する選好重み係数(式(5)のwij)を算出した。各属性は製品価格に換算すると回答者平均で以下の価値を持つと算出された。・年間電気代が1,000円安い → 製品価格が5,500円 安いことと等価。・製品信頼性が高い → 製品価格が10,000円 安いことと等価。・環境性能が良い → 製品価格が32,900円 安いことと等価。図5 洗濯機の世帯普及率の推移(実績)とBassモデルによる近似曲線( p=0.044, r=0.165, N=101.2)表2 過去の製品の普及係数値図6 コンジョイント分析のプロファイルの例非常に魅力的どちらとも言えない全く魅力的でない選択肢2普通環境性能高い製品信頼性① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦選択肢115,000円年間電気代10万円製品価格非常に魅力的どちらとも言えない全く魅力的でない良い環境性能高い製品信頼性15,000円年間電気代12万円製品価格① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦02040608010019551960196519701975実績値Bassモデルによる近似曲線実績値Bassモデルによる近似曲線19551965196019751970020406080100製品期間Npr早さ水洗トイレ1964-2003118.10.120.13317AT車(軽を除く)1958-200587.80.000420.18214AT車(軽)1959-200587.80.000530.18213電子レンジ1970-2004100.50.00590.15113パソコン1987-200676.50.0110.19013蛍光灯1953-2005760.0210.09913エアコン1961-200392.30.00690.14812ステレオ1961-200465.90.0410.14512温水洗浄便座1992-2006112.20.0230.06712乗用車1960-2003900.0110.12011ファクシミリ1964-2006118.10.00950.14210全自動洗濯機1983-200477.80.000140.3139ガス瞬間湯沸器1966-1981800.0380.2608CDプレイヤ1987-200462.30.0120.5306洗濯機1955-1979101.20.0440.1656VTR1978-2004840.00420.4105冷蔵庫1955-198298.13.6x10-70.4295白黒TV1955-196895.90.0130.6814カラーTV1967-198299.20.000230.6383携帯電話1993-2007920.000420.7093普及推移データの出典は主に内閣府経済社会総合研究所「家計消費の動向−消費動向調査年報」平成16年版、平成18年版。最右列は普及率が10 %から50 %に達するまでの年数。
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