Vol.1 No.4 2008
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−329 Synthesiology Vo.1 No.4(2008)編集後記シンセシオロジー第1巻第4号をお届けいたします。今回も広い分野からの多彩な論文を掲載することができました。関係された方々に心から感謝いたします。さて、今回特筆すべきことの1つは、2008年度のノーベル化学賞受賞となった下村脩博士の研究成果との関係です。ご存知のように下村博士はオワンクラゲが光る謎を解明し、緑色の蛍光タンパク質(GFP)を発見されました。この研究は後に今回共同受賞された他の研究者による第2種基礎研究、製品化研究を通して実用化された本格研究の典型であることを、今回論文を執筆された近江谷克裕氏が追記で述べています。同様に近江谷氏らの研究は、ホタルの発光メカニズムに興味を持ち、それを明らかにする過程から発光タンパク質(ルシフェラーゼ)を利用して細胞内の複数の遺伝子発現を検出する技術を実用化したものです。こちらも、ノーベル賞として評価された生物発光メカニズムの基礎研究と実用化研究を一貫して結びつけた好例であり、新たな第2種基礎研究-構成的研究の1つと言えましょう。また、今回は中島秀之氏から構成的研究の方法論と学問体系について論説を寄せていただきました。その中で言語と思考について大変興味ある指摘があり、構成的方法論の中で言葉の持つ意味の重要性が述べられています。特に、「英語は神の視点、日本語は虫の視点」「言葉から思考が規定されているとしたら、我々日本人というのは構成学 (Synthesiology)を世界に発信するには非常にふさわしい」と言う指摘も、非常にユニークだと思います。ここでは中島氏の論考に関連して、シンセシオロジーの論文の言葉について別の視点で二点述べてみます。まず第一点目は、術語 (ターム)としての言葉です。研究分野や技術分野が異なれば当然異なる術語を使います。ある専門分野 (ディシプリン)特有の術語は、いわばその分野特有の知識の蓄積と体系化の証 (あかし)でもあり、むしろ他分野の術語と区別があることに意義があります。一方、シンセシオロジーの論文では個別分野のそれぞれの研究方法論を超えて、第2種基礎研究の構成的方法論で研究が記述されています。したがって、その方法論に相応しい新たな術語の出現が今後予想されるところです。それにはまだ時間がかかるかも知れませんが、構成的方法論共通の術語が少しずつでも形を現してくることを大いに期待したいと思います。それはまた構成的方法論の概念が少しずつ明瞭になることを意味すると思います。二点目の言葉の課題は、言語(ランゲージ)です。シンセシオロジーを発刊するに当たり、論文の言語を日本語にするか英語にするかについて白熱した議論がありました。国際的な場で広く読んでもらい高い認知度を得るためには、当然英語で論文を発表すべきという意見がありました。その一方で、第2種基礎研究の論文というこれまで他に類を見ない論文を記述するには、日本人の場合はまず母国語である日本語で表現することが重要であり、その内容もまず国内の研究者・技術者に日本語で読んでもらう必要がある、との意見がありました。編集委員会としては、後者の観点の重要性を重視し、まず日本語で論文誌を発行 (英語で投稿された論文はそのまま英語で発行)することといたしました。他方、前者の観点も重視して別途英語版 (Synthesiology - English edition)を発行することとしました。お蔭様で、英語版も第2号まで無事発行することができました。日本語版に比べて数ヶ月遅れの発行になりますが、今後日本語版と同様に英語版も広く読まれることを期待しております。その上で、海外の研究者・技術者からの積極的な投稿があれば非常に嬉しいことです。英語版もご覧になり、折に触れて内外における外国人研究者・技術者の方へも積極的に宣伝をしていただければ誠に幸いです。(編集副委員長 小林 直人)(83)−

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