Vol.1 No.4 2008
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研究論文:ナノテクノロジーから大容量・高出力型リチウム電池の実用化へ(本間)−251 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)量メカニズムを用いた場合は、電流密度を増大させても表面の擬似容量はあまり減少していない。これは表面反応では電荷移動が極めて高速に起きていることを示している。6 nmのナノ結晶では実に40 A/gまでの高速充放電を行っても、この表面の擬似容量の成分は減少せず、リチウムイオンの可逆的な高速貯蔵特性を有していることを示唆している。すなわち、ナノ結晶活物質においてはその大きな比表面積に起因して擬似容量が発現するため、化学量論組成以上のリチウム貯蔵が可能となること、さらには固体内部へのインターカレーションを伴わない表面での高速リチウム貯蔵メカニズムが存在するという新しい電極物性が明らかとなった。このナノ結晶特有のエネルギー貯蔵物性を用いれば、大容量・高出力な革新的なリチウム電池電極材料を実現できる。産学官垂直連携開発においては電池メーカー側が製品化を想定している活物質材料でナノ結晶を合成し、その高出力特性を検証することが必要になる。製品に使用される活物質を用いてそれらのナノ結晶を合成し、大容量・高出力・高サイクル特性を実証すれば直ちに実用化に結びつくはずである。本プロジェクトの参画機関である日立マクセル社のパワーツール用電池の製品開発にナノ結晶活物質のコンセプトを生かすため、チタン酸化物材料では高出力特性が期待されるチタン酸リチウムLi4Ti5O12のナノ結晶合成とナノポーラス構造の作製プロセスの開発を行った[4][5]。Li4Ti5O12活物質はリチウムイオンの挿入(insertion) と脱離(extraction) 反応に対して無視できる程度の結晶構造変化が起きる電極活物質であるため、良好な充放電サイクル特性を有する電極材料として注目されている。そこで産総研ではLi4Ti5O12活物質合成時にメソポーラス構造を導入する分散材としてポリマーを添加し、連続的なメソポアとナノ結晶活物質のフレームワークから成るナノポーラス構造電極の作製と高出力特性の評価を行った。高イオン拡散性のメソポアをナノ結晶電極体に導入するためLi4Ti5O12電極のゾルゲル合成時にテンプレートであるポリマーP123 (Pluronic; EO20PO70EO20)を添加しナノ結晶Li4Ti5O12の高分散化を図った。前駆体にポリマーを添加の後、400 ℃で6時間、さらに750 ℃で2時間空気中焼成することにより約60 nm 程度の大きさのLi4Ti5O12粒子が高分散で連結したナノポーラス構造電極を作製した。これらの電極特性を評価した結果、低抵抗・高イオン拡散性電極のコンセプトからも予想されるように、ナノポーラス構造Li4Ti5O12電極では大きな充放電電流密度でも十分な電極容量が得られ、またサイクル特性も良好であった。産総研の研究により、高出力型負極として可能性の高いLi4Ti5O12で数10 nmの活物質サイズでナノポーラス化を行うことにより、出力特性が向上することが判明した。また同様なチタン酸化物であるチタニア(TiO2)においては6 nmのサイズまで電極特性を調べ、高速充放電特性や擬似容量などナノサイズ物質特有のエネルギー貯蔵特性を基礎化学的観点で明らかにした。他方、現状の電池製品においてはバルク(μmレベル)サイズの電極を用いており、このような小さい活物質を用いた製品化例はなかったため、産業界・学会の双方で電池出力特性を最適化する活物質サイズの系統的研究例は存在しなかった。したがって、ナノテク電極を製品化フェーズに展開していくためにはどのようなナノサイズを目指すのか、すなわち高出力特性に最適な活物質サイズはどこにあるのかを常に意識して、産学官連携研究を進めていく必要がある。またこれは大学・産総研と電池メーカーの研究開発を直線的に接続する意味でも重要な技術項目である。図8に示(5)−図7 ナノ結晶チタニアの表面擬似容量メカニズムとそれを用いた高速充放電特性充放電電流密度 (A/g)容量 (mAh/g)表面擬似容量 (30 nm)インターカレーション容量 (30 nm)インターカレーション容量 (6 nm)表面擬似容量 (6 nm)A6-CbcA30-CabA30-CbcA6-Cabナノ化により表面擬似容量が増大0.1110204060801001201400表面擬似容量インターカレーション容量電位速い電荷移動過程遅い電荷移動過程Cab

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