Vol.1 No.4 2008
7/87
研究論文:ナノテクノロジーから大容量・高出力型リチウム電池の実用化へ(本間)−250 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)を得た。これらの電極では3次元的なフレームワーク型連続構造を取り、また規則正しいナノポアと活物質の配列を形成しているため高いイオン伝導性、電子導電性とリチウム貯蔵容量を得ることが可能となった。次に産総研では、これらナノ結晶を用いた高出力電池電極材料の合成と構造評価、さらに電気化学特性の評価を行い、なぜこのようなナノ材料技術から革新的エネルギー特性が得られるのかについて高速電荷移動特性の物理化学的メカニズムの探求を行った[1]。実際の材料開発では電気化学的に活性なナノ結晶のチタニアを高出力型電極のモデル物質とし、アナターゼ構造とルチル構造のものをサイズ6 nm ~100 nm の範囲で用意し、リチウム電池電極特性のサイズ依存性の系統的な評価を行った[2][3]。ナノ結晶チタニアにおいては粒径がナノサイズ領域にあるためその比表面積が大きく、表面エネルギー貯蔵特性が現われやすいことから、リチウムとの電気化学反応を起こす領域としては、表面と固体内部の2つの相が共存すると考えられる。すなわち、前者はナノ結晶表面に電荷授受を伴いながら吸着される表面リチウムであり、後者はナノ結晶内部へのインターカレーションで貯蔵されるリチウムという2つの異なるリチウム貯蔵メカニズムである。表面吸着によるファラディックな容量は擬似容量として現われ、固体内部の貯蔵リチウムはインターカレーション容量として現われる。これらの2つの異なるリチウム貯蔵メカニズムは、実際に実験を行うと、図6に示したように充放電曲線に顕著に現われる。すなわちナノ結晶チタニアでは充放電曲線はバルク材料のものから大きく変化し、通常チタニア固体内部へのインターカレーション容量は、平衡組成Li0.5TiO2から168 mAh/g の容量であるはずのものが、実験結果では230 mAh/g程度まで増大する。またこの容量は結晶サイズが小さいほど増大する。すなわち、容量の増大はインターカレーション容量に加えて表面の擬似容量としてナノ結晶表面に貯蔵されたリチウムにより発現しているものと考えられる。実際、充放電曲線に現われているようにリチウム組成として理論容量のLi0.5TiO2までは一定のサイトポテンシャルでリチウムが貯蔵されるため約1.75 Vの一定電位で放電曲線が現われ、次にこのリチウム組成を超えたところから、容量増大とともにゆるやかに電位が降下する擬似容量的な放電曲線が出現する。この1.75 V以下の電位領域に現われる大きな擬似容量は明らかにチタニアの酸化還元容量であるため、活物質表面に電気化学的に吸着したリチウムの容量を現しているものと考えられる。これらは一定のサイトポテンシャルを有しておらず、チタニア表面でリチウム濃度が増大するにつれて表面が金属的になり電位が下がっていくものと考えられる。一方、高出力型活物質を設計する上で、どのくらいのナノサイズが最適なのかは最も重要な課題である。図6のサイズ依存性の結果からチタニアの結晶サイズが100 nm と30 nmでは電極特性が大きく異なり、30 nmサイズの活物質ではナノ化の効果が顕著に現れている。さらに6 nmサイズの活物質ではもはやバルクと異なるナノ結晶物性が支配的になっている。この結果から革新的なナノ結晶特性を利用するなら数10nm以下のサイズの活物質を用いることに大きな可能性があると考えられる。 これらのチタニア表面の擬似容量を用いた充放電メカニズムにおいては、固体内部への遅い拡散過程を伴わないため高速電荷移動が可能となろう。図7に示したようにナノ結晶内部へのインターカレーションは2相共存領域のプラトー電位を示す電池材料としては良好な電気化学特性であるが、一方、固体内拡散により遅い電荷移動過程を伴うために高速充放電には適さない蓄電メカニズムである。他方、表面へのイオンの吸着・脱着だけによる表面擬似容量メカニズムでは、拡散過程を伴わないためおそらく秒オーダーの電荷移動とリチウム貯蔵が可能となるであろう。実際、6 nm と30 nmのアナターゼ構造のチタニア結晶の充放電電流密度を変えたときの放電容量の変化を図中に示した。どちらのケースにおいても電流密度を上げるにつれてインターカレーション容量は低下する傾向にあるが、30 nm結晶サイズのチタニアでは容量低下が激しく起きている反面、6 nm結晶サイズのチタニアでは10 A/gの大きな電流密度の条件でも容量低下の度合いは小さく、結晶内部への高速インターカレーションが起きてることが判明した。充放電曲線では特に30 nm結晶では電位平坦部の容量の低下が激しく起きており、結晶内部へのリチウムイオンのインターカレーションが大きな電流密度の条件下では抑制されていることが判明した。一方、ナノ結晶表面の擬似容(4)−図6 ナノ結晶チタニアの充放電曲線0501001502002501.01.52.02.53.03.5容量 (mAh/g)電位 (Li+/Li)6 nm100 nm30 nm15 nm表面擬似容量バルク容量Li0.5TiO2 (168 mAh/g)
元のページ