Vol.1 No.4 2008
68/87

論説:構成的研究の方法論と学問体系(中島)−311 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)(65)−人レベルのノエマと細胞レベルのノエマは別ものとなる。ただし、これらの関連が分析可能な場合もある。熱力学における、温度(上位)は分子の運動エネルギー(下位)の平均値であるというのはその典型例であるが、このような関係がわかっていることは希であろう。7 物語構成されたものの評価あるいは実証には物語的手法しか存在しないという仮説を述べた。物語を客観的に評価する指標は無い。物語の良し悪しの判定は属人的であるし、それらが一致するとは限らない。しかしながら、良い物語は多くの人には受け入れられるし、賞も多数存在する。そのような意味では構成を評価することは可能であろう。良い物語は概ね以下のような条件を備えている:・物語の構成要素間に強い関係(因果関係)が存在する。・1つの要素はできるだけ多くの他の要素と関係するのが良い(他の要素と関連しない孤立要素は存在しない)。・要素間の関係は自明でない方が良い。物理学においても物語的説明が用いられることがある。光の反射・屈折を説明するのに実は2通りの方法がある(図11)。入射角と反射角が等しいという法則を用いるものが1つ、もう1つは、A地点からC地点へ時間的に最短の経路を光が通るのだという目的論的な説明。屈折の場合も同じで、屈折角と最短時間の両方がある。到達点が先にわかっていないと最短時間経路は決まらない。したがって、光の身になってみればそういう経路は計算できない。つまり、時間を捨象し、空間的問題として展開する場合には分析的説明は可能であるが、時間に沿った構成的考え方では局所メカニズムを問題とする反射角と入射角の法則(実際には波としての光のより詳細なメカニズムがあるのだが、本質は変わらないのでここでは割愛する)を採用するしかない[23]。8 サービス工学産総研にサービス工学研究センターが設立されたことは大変喜ばしいことだが、サービス工学というのも構成的な学問体系である。「service」という単語は、ある英和辞書を引くと23個の日本語訳が並んでいる。要するに、日本語に対応する概念(言葉)がないので、使用例23通りを全部並べたわけである。そのため「サービス工学」の「サービス」という用語も人によって解釈が違うと思うが、私は無料奉仕のことではなく、実際に「使用すること」と規定している。また、工学は本稿の主旨である構成的方法論のことである。したがってサービス工学はいわゆる第三次産業としてのサービス業にかかわる学問ではなく、構成的学問体系の実証に関連するものとして捉えるべきである。そしてこのプロセスはFNSダイヤグラム上にマップすることができる。図12は、私も参加した科学技術振興機構主催のワークショップ[24]でまとめられた、今後の研究の在り方の図である。従来型の研究開発では、右下のモノを創る部分ばかり注目されてきたが、その開発されたモノを実際に使用する、サービスに供する部分が重要である。使用し、それを評価し、必要ならば新しい価値観を創造し、また研究開発に戻すというループを回していくというのが、私の理解する「本格研究」であるし、構成的な方法論はこの図の上に乗ってくる。実際、図12を左へ120度回転させればFNSの1サイクルと同型になる。Peter Druckerは既に1960年代に使用(サービス)の重要性を予見していたらしく、「断絶の時代」[25]には以下の記述が見られる:知識の探究と教育は、その利用から切り離されていた。知識は研究対象ごとに、いわば知識の論理と思われるものに従って組織されていた。大学の学部、学科、科目、学位にいたるまで、高等教育全体が専門別に組織さコトモノ研究開発新しい価値・評価サービスSPINCABD分析的 / 目的論的説明AC(AD)間の「最短経路」C(D)の位置が分かった後でないと不可構成的説明入射角と反射角(屈折率)の法則経路(およびC/D)の予測図12 サービスをループに含む新しい研究開発の実体像図11 分析的(過去)説明と構成的(未来)予測

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です