Vol.1 No.4 2008
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論説:構成的研究の方法論と学問体系(中島)−310 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)含まれているという点が肝要である。ほとんどすべての生成という行為にはこういった、制御不能の相互作用が絡んでくる。従来、このことはあまり重要視されてこなかったように思うが、環境との相互作用があることによって、構成が非常に困難になる。企業で製品をつくる場合には、ユーザが思わぬ使い方をすることがある。ポケベルのメッセージ伝達機としての使用や、携帯電話利用の普及などはそういった例である。ただし、芸術などではこの相互作用を積極的に応用している例も少なくない。書道における滲みや墨の掠れ、陶芸(萩焼など)における火のまわり具合や灰の付着などはその好例である。できたものを、環境との相互作用の後で分析し、今自分がどういう音楽を奏でているかを認識し、最初に構想したものとの差分を次の瞬間の演奏にフィードバックして行く。このループを回すというのが音楽の演奏における構成の手法となるが、この場合は非常に周期の短い、速いループになる。研究の場合はもっと時定数の大きなループになる。ただし、いずれのループもフラクタル構造を持っており、各遷移をより詳細に見ると、また同様のループになっていることが多い。このノエマとノエシスのループは前述の構成のループ(図5)と同型であることに気付かれたかもしれない。実際、これを時系列で展開したものが図8であり、我々の考える構成的手法のFNSダイヤグラム用語3[20][21]になっている。図8における矢印の意味は以下の通りである。(C1)未来ノエマを実現すべく行われる行為。(C1.5) 生成されたノエシスは環境との相互作用を起こす。(C2)その結果、上層では、期待された未来ノエマとは異なる現在ノエマが生まれる。(C3)未来ノエマへとフィードバックする行為。制御変数を増やしたり、プランを変更したりすることが含まれる。ノエマとノエシスの図式は自然科学を行う科学者の行為(分析科学)にも当てはまる(図9)。未来ノエマとしての理論(あるいは仮説)が存在し、それを検証すべく外在化したものが実験の道具立てである。実際に実験を行うと、それは環境中の様々な要素と相互作用し、特定の現象を引き起こす(これが、演奏に相当する)。その現象を観測・分析し、理論へのフィードバック(修正あるいは検証)が行われる。多層システムを扱うときにはFNSがノエシス層において多層化される(図10)[22]。図は3層を示しており、左に行くほど上位の層になる。下位の層(右側)では環境の要素となっていたものが上位層(左側)ではノエシスに含まれる。つまり、右側では中心にあるノエシスと、それを取り巻く環境中の要素に分離して表示されているシステムが、左側では中心のノエシス、あるいは環境中の要素1つに対応する。音楽の例でいえば、演奏家のレベルで見た時には環境に含まれていた観客が、より上位の、演奏全体という層ではシステムの一部となる。また、逆に上位で観客や演奏者という1つのシステムとして扱われるものは、下位の層では更なるサブシステム(たとえば目や耳や手)へと分解される。下位層ではノエシスはPART-OF関係で分解されると考えてよい。一方ノエマは別の記述体系を採る。たとえば個(64)−未来ノエマ現在ノエマノエシスC3C1C3C3C1.5C1C1C2C1.5C1.5C2C2図8 構成的手法のFNSダイヤグラム理論観測もの(外在化)環境との相互作用ノエマ層ノエシス層図9 科学という行為におけるノエマとノエシス未来ノエマ現在ノエマノエシスC3C1C3C3C1.5C1C1C2C1.5C1.5C2C2図10 多層システムのFNSダイヤグラム

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