Vol.1 No.4 2008
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研究論文:ロータリエンコーダに角度標準は必要か(渡部)−303 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)(57)−ユーザーが求めるべき機能が、従来の分解能ではなく本来何であるべきだったかを示すことが重要です。また、ユーザーにとって重要な 「取り付け後」に着目した表現は大変良いと思います。ただ、取り付け後の角度値の信頼性を顧客に対して保証するのはユーザーの仕事ですから、「ユーザーは取り付け後のエンコーダから得られる角度情報の信頼性をどのように保証して良いかできないで困っている。」とした方が良くないでしょうか? 回答(渡部 司)「1.はじめに」の中盤でロボットの腕の制御を例に、分解能、角度偏差とそのブラックボックス化した理由等の説明を加えました。また、「2.角度偏差と現状」に述べたように、ロータリエンコーダの製造時に決まる先天的角度偏差と、ユーザーがロータリエンコーダを使用するときに決まる後天的角度偏差とに分類しました。これにより現在市販されているロータリエンコーダが持つ角度偏差とカタログの「精度」の隔たりを説明することができました。これにより、ユーザーが困っている内容を特定できるようになり、ご指摘の文面に導入が可能になりました。したがって、次の文章に変更しました。「ユーザーはこの「精度」を信用してエンコーダを使うことを強いられ、実際に使用状態での角度情報に含まれる角度偏差をどのように検証し、その信頼性をどのように確保して良いのかわからずに困っていた。」議論2 ブレークスルーとしての「見える化」について質問・コメント(赤松 幹之)第1章の第3段落で、信頼性向上のための新しい技術導入の必要性がうたわれ、そのブレークスルーとして「見える化」が必要であると書かれています。信頼性向上に 「見える化」が必須のことであるか、それとも他にも選択肢がある中で「見える化」を導入したのか、など技術の選択のシナリオを記述できませんでしょうか?回答(渡部 司)ロータリエンコーダから出力される角度信号には角度偏差を引き起こすさまざまな要因があります。その分類を静的、動的角度誤差要因と分けてきましたが、これは本稿の内容には適さない分類方法であったと考えました。つまりメーカー(作る現場)とユーザー(使う現場)の異なる状況で発生する角度偏差が、最終的には合成され分離不可能な角度偏差として出力されます。したがって分類方法を先天的・後天的角度偏差要因と変えました。しかし、もっとも問題となるのはメーカーもユーザーも、これまで角度偏差を定量的に評価するすべを持ち合わせていなかったことが角度偏差のブラックボックス化を招き、角度の信頼性を低下させていた原因といえます。メーカーとしてはこのブラックボックスの部分をできるだけ小さくすべく、「部品の精密化」と「(偏心)偏差のキャンセル」の2枚のカードを使ってきました。この2つの技術は今後も重要な技術であることは間違いありません。しかし、本論文では3枚目のカードとして「自己校正機能」=「見える化」を提案しました。「2.角度偏差と状況」の内容を膨らませることで、「見える化」の導入意図を示してみました。先天的・後天的角度偏差要因の名前については、もっと良い分類名が欲しいところです。質問・コメント(田中 充)このパラグラフにある、静的角度誤差要因と動的角度誤差要因とを分けることは方法論記述の上では、要素論に含まれます。しかし、この区別を明確に述べれば述べるほど、「これまで」と「見える化」との関係を理解しようと苦慮する事態に陥ります。何か工夫はないでしょうか?静的=メーカー・他力校正=これまで、動的=ユーザー・自力校正=見える化の図式のどこがどうなっているのかをはっきりするのが良いと思います。回答(渡部 司)「静的角度誤差要因・動的角度誤差要因」の分類から「先天的角度偏差要因・後天的角度偏差要因」に変更し、さらに先天的角度偏差要因の低減に対するメーカーの取り組みである①~④を説明しました。質問・コメント(田中 充)研究シナリオについてこの記述が方法論の本質と言えますが、ユーザー自らが「見る」ことが大切であればそのように書くべきではないでしょうか?「見える化」といっても誰が見るのかがはっきりしていません。さらに、「見る」ためには、これまでは、時間も人もコストもかかっていたのが簡単になった(つまり、自己校正)ことが方法論の展開ではないでしょうか?回答(渡部 司)メーカーには先天的角度偏差を出荷前に評価する装置がない、ましてやユーザーには全ての角度偏差がブラックボックス化しているため、どのような方法でカタログの「精度」と本来の角度偏差の対応付けを行ってよいかわからない、このことが問題となっています。メーカーもですがユーザー自ら角度偏差を検出し、角度偏差の 「見える化」を行える技術の導入が必要です。そのためには、装置内部に取り付けられたロータリエンコーダを外部につけた装置で評価するのではなく、ロータリエンコーダ自身が角度偏差を出力することで、他の装置を必要とせずに簡単に、そして短時間に角度偏差の「見える化」を実行することができました。質問・コメント(田中 充)研究シナリオ部分でさらに、国家標準とメーカーの「作る」エンコーダ、ユーザーの「使う」エンコーダ、校正してもらう「エンコーダ」の関係をあらかじめ説明しておかないと読者は混乱します。その中で、なぜサイズダウンが必要なのかもわかりません。回答(渡部 司)「ロータリエンコーダ」の前に「ユーザー」、「国家標準器、参照用」などの言葉を付け加え、どのロータリエンコーダについて述べているかを明確にしました。角度偏差を「見える化」できる技術が複雑で、その装置が巨大になるとメーカーもユーザーも導入に対して及び腰になります。したがって、実用化と普及を目指すならば、現在使用しているロータリエンコーダの体積容量とほぼ同じサイズでありながら角度偏差の「見える化」が可能な技術が必要となります。本文の内容を次のとおりもう少し具体的にしました。「しかし、すでにユーザーが使用機器に組み込んでいるロータリエンコーダの周りに、小型の国家標準器を設置する空間の確保は難しく、サイズダウンには限界があるであろうという観点からこの開発は断念した。」議論3 「見える化」技術について質問・コメント(赤松 幹之)この技術開発は「見える化」がポイントとなっている、という論旨になっていますが、一般に使われている「見える化」すなわちデータのビジュアライズによって状態を把握する、という意味と若干異なるように思います。本論文の記載内容から、平均値を求めたものを校正データとして使えば精度が求まるというのが開発技術であると理解したのですが、もしそうだとするとビジュアライズする必要がないように思われます。もし「見える化」をビジュアライズを元にした分析、とは異なる意味で使われているのでしたら、それを説明する記述を記載してください。回答(渡部 司)これまでにも、センサヘッドを2個、4個と配置したロータリエンコーダが市販されています。しかし、これらは軸偏心など一部の角度偏差のキャンセルに用いられてきました。これは式(1)の右辺第1項
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