Vol.1 No.4 2008
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研究論文:ロータリエンコーダに角度標準は必要か(渡部)−302 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)執筆者略歴渡部 司(わたなべ つかさ)1993年東北大学大学院理学研究科物理学科博士課程修了。博士(理学)。米国標準技術研究所(NIST)の客員研究員を経て、1998年に工業技術院計量研究所(現産業技術総合研究所)入所。角度の国家標準器の開発などに従事。現在、自己校正機能付きロータリエンコーダを用いた新しい角度標準器の普及とともに角度の世界標準を目指している。市村学術賞、つくば奨励賞などを受賞。査読者との議論 議論1 研究の狙いとタイトルについて質問・コメント(赤松 幹之)角度標準のための角度校正技術を、製品としてのロータリエンコーダの信頼性を確保するための技術として展開した本研究は、基礎研究を社会に活かした良い研究例だと思います。製品として組付けられた状態のエンコーダの精度が随時校正できることで、その時点での精度を確保することができる、というのが信頼性向上というこの開発の狙いですが、一般読者には「信頼性向上」が研究成果の社会導入によるインパクトであることがわかりにくいように思います。少し説明を加えて、社会インパクトの強さを強調されたらいかがでしょうか?また、同様に、これによる社会的インパクトを少し強調したタイトル/サブタイトルもご検討下さい。回答(渡部 司)長さの標準には約100年以上の歴史があり、世界が同歩調で同じ原理を用いて国家標準器を開発してきた状況に対して、角度標準は約20年の歴史しかありません。産業技術総合研究所も10年前からようやく国家標準器の開発が始まるなど、諸外国の国家標準器の原理も今もってばらばらでまとまっていない状態です。さらに加えますと、諸外国は国家標準器の精度を向上させるために部品の精度を上げ、その結果、高価で複雑な機構を持った装置と化してきました。これが今もって共通の原理を共有できない原因となっています。しかし、産業技術総合研究所の国家標準器は、本文でも述べましたが、等分割平均法という方法論です。この原理に基づけば誰でも国家標準器と同じ装置を持てることになります。本研究は、この原理をもっとコンパクトにして、誰でも簡単に安く使える装置にできないかというところが始まりです。標準器を作るかたわら、標準器を必要としない装置も作っているという矛盾と葛藤があったのも事実です。角度標準の歴史がまだ浅く、角度計測器にはどのような角度偏差を引き起こす要因があるのか、さらに、どのようにすればその要因を推定できるのか、まだまだブラックボックスとなっている部分が多いのです。「信頼性向上」とは、このブラックボックスの蓋を開ける手がかりが得られることにより、これまでカタログに記載されていた「精度」とは異なる定量的な評価を可能とすることで、メーカーもユーザーも安心して角度偏差を引き起こす要因を同じ土俵で議論できる場を設けることができることを示しています。それこそが角度にとっての標準ではないかと考えています。そこで思い切って次のタイトルとサブタイトルに変更してみました。自己校正機能付きロータリエンコーダの開発― 誤差要因の「見える化」により角度精度と信頼性向上の実現 ― ↓ロータリエンコーダに角度標準は必要か― 角度偏差の「見える化」を可能にしたロータリエンコーダの開発 ―質問・コメント(田中 充)「はじめに」の部分、第2パラグラフで、近年のユーザーがなぜ精度の信頼性が無いので困っているかがわかりません。エンコーダの(56)−ることを意味している。しかし、不要になるのは上位標準となる「角度標準器」であり、『角度標準』は自己校正機能付きロータリエンコーダ(SelfA)とともにさらに身近なものになると考えられる。「計れないものは作れない」というように、ものづくりの分野において高精度な計測技術の確立は必要不可欠である。さらにその高精度化された状況の「見える化」は、これまで手探りだった精度評価の信頼性をさらに高め、これまで以上に高度なものづくりに貢献できると考えられる。用語説明用語1:用語2:トータルステーション・セオドライト:セオドライトは角度を計測する測量機器の1つで、三角測量において水平方向と垂直方向の回転角を測定する光学機器。トータルステーションはセオドライトにさらに対象物までの距離を計測する機構が付いている。エリプソメータ:エリプソメータは光を試料に照射し、試料から反射される光の楕円偏光状態を測定することで、薄膜の厚さ、屈折率や吸収係数などの光学定数などを解析する装置。反射角度を計測するためにロータリエンコーダが使われている。キーワードロータリエンコーダ、角度標準、偏差評価、自己校正渡部司, 益田正, 梶谷誠, 藤本弘之, 中山貫:ロータリエンコーダの高精度校正装置の開発(第一報)−校正システムと基礎実験−, 精密工学会誌, 67 (7), 1091-1095(2001).T. Watanabe, H. Fujimoto and T. Masuda: Self-calibratable rotary encoder, J. Physics: Conference Series, 13, 240-245 (2005).特許3826207:自己校正機能付き角度検出器.特開平6-313719:ロータリエンコーダ.X.-D. Lu, D.L. Trumper: Self-calibration of on-axis rotary encoders, Annals of the CIRP, 56 (1), 499-504 (2007).K. Štépánek: Messung der Genauigkeit von Getrieben und Winkeln mit magnetischen Maβstäben, acta IMEKO, Proc. Int. Meas. Conf.,1st, 258 (1958).E.W. Palmer: High-accuracy angle measurement, NPL, Teddington, U.K. (1984). T. Masuda and M. Kajitani: High accuracy calibration system for angular encoders, J. Robotics and Mechatronics, 5 (5), 448-452 (1993).特開2000-258186:自己校正型角度検出装置及び検出精度校正方法.特開2003-262518:自己校正型角度検出器.益田正, 梶谷誠:角度検出器の精密自動校正システムの開発,精密工学会誌,52 (10), 1732-1738 (1986).特開平6-317431:エンコーダの校正方法.(受付日 2008.8.21, 改訂受理日 2008.10.28)[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12]参考文献

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