Vol.1 No.4 2008
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研究論文:ロータリエンコーダに角度標準は必要か(渡部)−301 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)御、そして使用しているベアリングの精度評価など、これまでのロータリエンコーダと交換することにより、さまざまな現場でさらに高精度な計測と制御が可能になる。そのためには、ユーザーがすでに使用している装置を改造することなしに、内蔵しているロータリエンコーダをここで紹介したSelfAに交換するだけで良いように、さまざまなサイズのSelfAの開発が必要である。6 実施のためのノウハウここでは、自己校正機能付きロータリエンコーダ(SelfA)を活用するに当たって必要な技術的ノウハウを紹介する。6.1 センサヘッドの数SelfAの原理により求めた角度偏差は図7に示したように、センサヘッドの数に依存したフーリエ成分が求まらない。例えば5個のセンサヘッドを配置した場合は、5、10、15・・と5の倍数次のフーリエ成分が求まらない。6個の場合は、6、12、18・・・の成分が求まらない。また角度偏差のフーリエ成分は一般的に高次になるほど小さくなる傾向がある。したがって配置するセンサヘッドの数を増やせば、それだけ影響の大きい低次成分項を検出し、高次の項までフーリエ成分の抜けのない校正値を求めることができる。図12は、センサヘッド数と到達精度の関係を示している。例えば、到達精度が0.1秒の場合は10〜15個のセンサヘッドが必要であるが、1秒の場合は5個で十分である。したがって、ユーザーが目指す精度により、むやみに多くのセンサヘッドを用いる必要はなく、最低限必要なセンサヘッド数を選択すれば良いことがわかる。6.2 センサヘッドの配置精度従来のロータリエンコーダが偏心よる角度偏差をキャンセルするために、目盛り間隔の1/4以下という厳しい制限の中で2つのセンサヘッドを配置しなくてはならなかった。さらに述べれば軸偏心や目盛りスケールの偏差のばらつきも同様に目盛り間隔の1/4以下という制限があるのである。これに対してSelfAは、2個ではなくさらに多い複数個のセンサヘッドを等角度間隔に目盛盤に配置する必要があるため、本当にSelfAは実用化が可能なのであろうかといった疑問が出てくる。その答えは「可能」である。SelfAにはリアルタイム性は必要なく、各センサヘッドが検出した目盛スケール位置の角度信号をまずはコンピュータに収納し、測定終了後に式(1)、(2)の差を計算するため、たとえ偏心による角度偏差が目盛り間隔を超えた大きさがあっても計算することができる。またセンサヘッドはそもそも目盛り線1本1本に対して角度信号を出力しているのではなく、図13のように数10から数100本の目盛り線の平均値として角度信号を出力している。そのため近接した角度信号間の角度偏差の変化量は小さいため、たとえ数目盛りずれた位置に配置しても、校正値に特段大きな影響を与えないのである。7 まとめこれまでメーカーが行ってきたロータリエンコーダの開発は、部品の精密化により角度偏差を小さくし、さらにキャンセル技術で見えなくするといった方法論であった。しかし、本研究における開発は、これとは異なり、全ての角度偏差を積極的に出力することで見える状態にするといった方法論である。より角度偏差が小さい製品開発を目標とするメーカーと、角度の国家標準器開発により角度偏差を評価することを目標とした本研究との立場の違いが、新しい自己校正機能付きロータリエンコーダ(SelfA)の開発を可能にしたと考えられる。角度の国家標準器は、最高精度の角度標準ではなく等分割平均法という自己校正法の1つによる方法論によりロータリエンコーダを校正している。これはユーザーやメーカーの誰もが国家標準器と同等な「角度標準器」を持てることを意味している。さらに、自己校正機能付きロータリエンコーダ(SelfA)は校正装置が無くとも角度偏差を自ら検出できる機能を持っている。これはユーザーやメーカーがもはや「角度標準器」を持つ必要がない状態が到来してい(55)−100510152025300.010.1110センサヘッドの数SelfAの角度偏差検出能力 (秒)センサヘッドの検出領域目盛り線図12 SelfAのセンサヘッドの数と到達精度の関係図13 ロータリエンコーダの目盛り検出サイズ
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