Vol.1 No.4 2008
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研究論文:ロータリエンコーダに角度標準は必要か(渡部)−298 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)かし、偏心の大きさが目盛りの間隔の1/4を超えたり、またはセンサヘッドの配置精度が目盛りの間隔の1/4を超えたりすると、出力される電圧強度が減少し信号が出力されない可能性がある。例えば目盛り間隔を20 µmとすると、軸偏心やセンサヘッドの配置精度を約5 µm以内にする必要があることから、①~③と同様に部品の高精密化であるともいえる。したがって複数個のセンサヘッドを配置する案[4]もあるが、このセンサヘッドの配置精度の問題から実質的に4個以上のセンサヘッドを配置するのは難しい。3 研究シナリオブラックボックス化したカタログ「精度」の情報しか得られないため、ユーザーは、装置に組み込んだエンコーダが取付けの軸偏心や使用環境の変化により、その角度偏差がカタログ「精度」の許容範囲内に収まっているかが不明なまま、いつも不安視しながら利用している。しかし、もし図3に示すロータリエンコーダの校正値(曲線)を求め、角度偏差の「見える化」ができれば、その校正値を用いて角度信号を補正することで、カタログの「精度」に比べてさらに数倍から数10倍の精度向上を達成し、高精度な計測と制御が可能になる。産業技術総合研究所が開発した角度の国家標準器は、ロータリエンコーダの数10万本の目盛スケールの角度偏差を検出することが可能である。これにより図1に示す先天的偏差要因と、後天的偏差要因の測定環境要因などを、定量的に評価することが可能となった。しかし、後天的偏差要因の他のほとんどの要因は、エンコーダの個体差や取り付け状況や使用環境により一定ではなく変化してしまう。したがって、実際に使用する装置に組み込んだ状態で校正値を検出し、ユーザー自らが「見る」ことが重要となる。そこで、ロータリエンコーダ自身に角度偏差を自ら検出し校正値として出力できる自己校正機能を付加することで角度偏差の「見える化」を実現することにした。4 自己校正機能付きロータリエンコーダ「SelfA」表1に示すように、ロータリエンコーダの角度偏差を検出する自己校正法の原理[5]-[7]は、これまでにいくつか考案されている。角度の国家標準器では等分割平均法[8]を用いて、国家標準器内部の参照用ロータリエンコーダと校正器物であるユーザーのロータリエンコーダとの2個のエンコーダ間で自己校正法を行うことで、両エンコーダの角度偏差を同時に検出する方法を採用してきた。そこで、ユーザーが使用するロータリエンコーダに、国家標準器と同様に別のエンコーダを取り付け2つのエンコーダ間で等分割平均法の自己校正を可能とする国家標準器型小型校正装置[9]の開発を検討した。しかし、すでにユーザーが使用機器に組み込んでいるロータリエンコーダの周りに、小型の国家標準器を設置する空間の確保は難しく、サイズダウンには限界があるであろうという観点からこの開発は断念した。次に、1個のロータリエンコーダ単体で自己校正法が適用できる原理について検討した。マルチ再生ヘッド法[10][11]、3点法[12]は複数個のセンサヘッドを目盛盤の周りに配置し、図3に示す角度偏差を連続的な360度の周期曲線と考えて、そのフーリエ成分を検出する方法である。複数個配置したセンサヘッドの1つを基準とし、マルチ再生ヘッド法の場合には180度、90度、45度、22.5度・・・と配置し、3点法の場合には、例えばマルチ再生ヘッド法の配置の中から2箇所を選び配置させる。基準センサヘッドに対して他のセンサヘッドの配置により検出できるフーリエ成分が求まり、逆フーリエ変換により校正曲線を求める方法である。そのため、センサヘッドの個体差や設置精度により検出されるフーリエ成分の精度に大きく影響する。したがって開発においても、また実用化する場合においても、多くの労力が必要と考えられる。そのためこの方法も開発には及ばなかった。そこで、これまで国家標準器に採用してきた等分割平均法を拡張し、ユーザーの1個のロータリエンコーダだけ等分割平均法を実現する方法を考案することにした。図4 (a)は等分割平均法の原理図である。下部に示している目盛盤の周りに複数個のセンサヘッドが等角度間隔に配置された装置内部の参照用ロータリエンコーダと上部の校正したいユーザーのロータリエンコーダとの間で自己校正を行う。図4(b)は等角度間隔に配置されたセンサヘッドの中に基準となるセンサヘッドを配置することで1個のエンコーダで等分割平均法を可能にしている。図4(c)は図4(b)の基(52)−①543215432154321=①①(a)(b)(c)不確かさの累積逐次検出法エンコーダ個数デバイダ法校正方法クロスキャリブレーション法等分割平均法マルチ再生ヘッド法2、3点法特徴総当り比較法フーリエ成分検出法12長所高精度高精度・短時間高精度・短時間短時間短時間短所長時間・作業量大エンコーダ2個ヘッド個体差の影響ヘッド個性の影響ヘッド間隔が厳密図4 等分割平均法の変化表1 ロータリエンコーダの校正原理
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