Vol.1 No.4 2008
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研究論文−296 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)図2 ロータリエンコーダの角度偏差要因の概念1 はじめにロータリエンコーダは角度計測器の1つであり、その用途は機械産業分野では工作機械や半導体製造装置あるいは産業ロボットの角度計測や制御に用いられ、「長さ」で構成される直交座標に、「角度」の極座標の自由度を与えることで、より複雑で精巧な製造を可能としている。またオフィスにあるプリンターには、正確な紙送りロールのためにロータリエンコーダが内蔵され、精密な印刷を可能としている。このように先端科学の測定装置から身近な電化製品にいたる幅広い分野において、ロータリエンコーダは「角度」の計測装置として利用されている。そのため、ユーザーはロータリエンコーダに対して更なる高分解能化、小型化、高機能化への要求を高めており、企業側もアブソリュートとインクリメントエンコーダ、磁気式と光学式、モジュラー型とホロウシャフト型とシャフト型、ベアリングの有無といったさまざまな形状と機能を持った製品や、0.1秒(1秒=1度/3600=約5µrad)を超えた高分解能な製品を開発し市場に送り出すことで、ユーザーの要求に応えてきた。しかし、近年、ユーザーが要求し始めたのがロータリエンコーダから出力される角度情報の正確さの信頼性である。ロボットの腕を滑らかに制御するためには一周360度内に刻まれる目盛スケールの数を増やし分解能を高めることで達成することができるが、腕の位置を正確に制御するためにはロータリエンコーダから出力される角度情報と理想的な角度位置とのずれ(偏差)量の大きさを評価し、その角度偏差を補正することで正確な角度位置制御を達成することができる。そのためには図1、図2に示すロータリエンコーダが出力する角度情報の偏差の要因を検出しなければならない。しかし、これまでエンコーダメーカーは、目盛スケール数10本の偏差を検出する技術は持ち合わせていたが、数千から数10万本の全目盛スケールを検出する技術を持ち合わせていなかったため、さまざまな角度偏差要因を総合的に、そして定量的に評価することができないでいた。その結果、エンコーダの製品カタログに記された 「精度」は図3に示された角度偏差を示した校正曲線ではなく、角度偏差を0とし、それを2つの上下の線で挟んだ大きな安全許容幅を「精度」と称して載せている場合がロータリエンコーダに角度標準は必要かー 角度偏差の「見える化」を可能にしたロータリエンコーダの開発 ー渡部 司産業技術総合研究所 企画本部、計測標準研究部門 〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 つくば中央第2 産総研つくばセンター E-mail:t.watanabe@aist.go.jp(50)−ロータリエンコーダは360度の分度器のように円周上に目盛スケールが刻まれ、それを検出することにより角度位置情報を出力する装置である。しかし、ロータリエンコーダの目盛スケールのずれや、回転軸の偏心の影響により理想的な角度位置から偏差が存在するため、ユーザーはエンコーダから得られる角度情報の信頼性をどのように確保して良いのか困っていた。この問題を解決するべく、さまざまな角度偏差の要因を、自分自身で検出し角度校正値として出力することができる自己校正機能付きロータリエンコーダ(SelfA: Self-calibratable Angle device)を開発した。このエンコーダはこれまでブラックボックス化していた角度偏差要因を検出、分離し、そしてそれら要因を定量的に評価できる「見える化」を実現した。先天的偏差要因(エンコーダ内部構造に起因する要因)目盛スケールの偏差エンコーダ軸と目盛盤との偏心後天的偏差要因(ユーザーの使用状況に起因する要因)機械構造要因エンコーダ軸と装置軸の偏心取付け時のゆがみ軸ぶれ、ベアリング等測定環境要因温度変化、経年変化等エンコーダ軸と目盛盤の偏心エンコーダ軸と装置回転軸の偏心センサヘッド(偏心のキャンセル)装置回転軸ベアリング・軸ぶれカップリングエンコーダ回転軸目盛スケールの偏差目盛盤0°センサ信号180°センサ信号平均化信号180°センサ位置0°センサ位置偏心による偏差角度位置 (度)角度偏差 (秒)060120180240300360図1 角度情報の偏差要因
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