Vol.1 No.4 2008
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研究論文:光触媒技術の開発と応用展開(垰田)−295 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)執筆者略歴垰田 博史(たおだ ひろし)1977年京大工学部卒。同年、通商産業省工業技術院名古屋工業技術試験所入所。93年名古屋工業技術研究所融合材料部環境技術研究室長、2001年独立行政法人産業技術総合研究所セラミックス研究部門環境材料化学研究グループ長、2004年4月から現職(サステナブルマテリアル研究部門環境セラミックス研究グループ長)。2000年科学技術庁長官賞、01年永井科学技術財団賞、および環境賞受賞。入所以来、太陽エネルギー利用技術の研究に従事、特に、太陽エネルギーの貯蔵(蓄熱技術)、二酸化炭素の還元、光触媒の研究を行ってきた。博士(工学)。査読者との議論議論1 研究開発が進展するプロセスについて 質問・コメント(一條 久夫)要素技術の選択・統合が分かり難いように思います。第1種基礎研究と第2種基礎研究の間を往き来しつつ研究開発が進展するそのプロセスが重要と思います。専門外の読者でも第1種基礎研究に該当する部分が分かるように、該当する原著論文を引用しつつ簡潔に説明された方が理解が深まるのではないでしょうか。回答(垰田 博史)触媒や新しい医薬を開発する場合、何を加えて性能や薬効を上げるかということについては、確率を上げるための支援システムなどがあるにしても、基本的には試行錯誤(トライエンドエラー)だと思います。そして、それは発見のための研究であり、第1種基礎研究だと思います。一般的に技術開発は第1種基礎研究から第2種基礎研究を経て開発・実用化へと直線的に進んで行くというふうに考えられています。しかし、第1種基礎研究の結果の知識(要素技術)が料理しやすいように台所の流し台の上に並べられていて、それを選択してまな板の上にのせて料理 (第2種基礎研究)すればよいというのは、通常なかなかないと思います。試行錯誤で第1種基礎研究を行い、その結果を用いて第2種基礎研究、開発・実用化を行い、それをフィードバックさせて第1種基礎研究を行うというふうに、第1種基礎研究、第2種基礎研究、開発・実用化を連環させて進めることが必要不可欠であり、それが本格研究ではないかと思います。どのように考えて研究を進めていったかは、4.光触媒の実用化に向けた研究開発等の実行の個別の項目のところにできるだけ書き入れました。また、第1種基礎研究に該当する部分が分かり易いようにして参考文献に特許を加えました。議論2 3つの「死の谷」について質問・コメント(大和田野 芳郎)光触媒技術が社会に普及するまでに、技術的、経済的、社会的、と3つの「死の谷」があったと分類しているのは優れた見方です。これに沿って記述する構成にすると全体が理解しやすくなると思います。 具体的には、(1)「技術的な死の谷」はどこにあり、どうやって乗り越えたか、(2)「経済的な死の谷」はどこにあり、どう乗り越えたか、(3)「社会的な死の谷」はどこにあり、どう乗り越えたか、について記述していただきたい。これによって、他のテーマにも適用できる一般的な知見に昇華することができ、価値の高い内容になると思います。回答(垰田 博史)(1)技術的な死の谷は、粉末状のため取扱いが困難で、光触媒の性能も低かったことです。これらの課題を、透明多孔質基材などに固定して有効面積を拡大し、使用中にも基材を劣化させない方法を考案したこと、可視光領域にまで感度を広げ性能を向上させたこと、等により克服しました。これにより、光触媒の機能は大幅に向上し、取り扱いや利用が容易になりました。(2)経済的な死の谷は、コストが高く、既存技術に対して競争力が低かったことです。これを、廃棄物など安価な基材を用いること、透明基材や繊維などに固定する方法の考案などにより、コスト削減や、独自の用途拡大を実現して克服しました。(3)社会的な死の谷は、法的規制や、社会受容性の低さでした。これらを、時間をかけて認可を受けること、産学官の協力により技術協会を組織し、性能評価法の確立、JIS化、ISO化などを行うこと、光触媒の適切な使用法など、光触媒技術の啓蒙と普及を図ること、等により克服しました。104-105 (2007).垰田博史:セラミックス光触媒を用いた環境浄化技術, 太陽エネルギー, 26-2, 13 (2000). 垰田博史:企画特集 用途開発進む光触媒, 月刊地球環境, 439, 96-97 (2006).垰田博史:光触媒の農業への応用, オプトロニクス, 305, 110-115 (2007).垰田博史:企画特集 光触媒, 月刊地球環境, 463、98-99 (2008).光触媒粒子及びその製造方法, 特許第2945926号.垰田博史:光触媒の農林水産・食品分野への応用, Techno Innovation, 61, 38-43 (2006).垰田博史:トコトンやさしい光触媒の本, 102-133, 日刊工業新聞社, 東京 (2002).(受付日 2008.7.25, 改訂受理日 2008.9.19)[9][10][11][12][13][14][15](49)−

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