Vol.1 No.4 2008
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研究論文:光触媒技術の開発と応用展開(垰田)−293 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)(47)−より、水処理への応用を行った。河川や海洋の水質浄化を行うためには、大量の浄化剤が必要となるため、そのコストが問題となる。愛知県は三州瓦の大生産地で年間約38万トンの瓦の廃棄物が排出されている。そこで、この瓦の廃棄物を浄化剤の基材に利用して低コストの光触媒水環境浄化剤を開発した。これは瓦を砕いてつくった安全無害なペレットに光触媒洗浄剤を染み込ませて乾燥することにより作製したもので、河川や海洋のヘドロに散布するとヘドロが分解されてきれいになる。この光触媒水環境浄化剤は1 kg当たり100円以下という低コストを実現しており、開発途上国などでの使用も期待される。4.1.5 可視光光触媒や新規材料の開発酸化チタン光触媒は上に述べたように多くの利点を持っているが、エネルギーの大きな紫外線を当てなければ働かないという制約がある。紫外線は太陽光には3~4 %しか含まれず、蛍光灯にはわずかしか含まれていない。したがって、室内用途で光触媒を効率良く利用するためには、可視光で働く光触媒の実用化が不可欠である。現在、可視光で働く光触媒として酸素欠陥型や窒素ドープ型などの酸化チタン光触媒やレアメタルなどを使用したものが開発されているが、高価なため、使用しにくかった。そこで、酸化チタンと安価で安全無害な鉄を組み合わせることにより、低コストの可視光光触媒を開発した[13]。これはこれまでの可視光光触媒の3分の1以下と低コストであり、今後、室内用途を中心にして、利用が大きく伸びると期待される。また、光触媒は抗菌防かびや鮮度保持などの応用が可能であるが、脱酸素機能を持たせると、さらに鮮度保持や品質保持の機能を向上することができる。そこで、酸素欠陥型の酸化チタン光触媒をさらに進めて、酸化チタンから酸素を抜いた酸化チタン脱酸素剤を開発した[14]。これは写真7に示すように青い色をしており、酸素を吸うとまた元の白い酸化チタンに戻るため、酸素のインジケーターとしても利用できる。そして、従来の鉄系の脱酸素剤と異なり、食品に混入しても赤くなったりせず、磁性を持たないため、電子レンジにかけても発火せず、不燃性であり、金属探知器にも反応しないなど、いくつもの利点を持っている。この脱酸素剤は酸化チタンのまったく新しい応用であり、これまでの脱酸素剤にない利点を持っている。4.2 産学官の連携と光触媒性能試験法の標準化高機能光触媒の開発を試行錯誤で進めていく際に、それを迅速にかつ効率的に行うためは、触媒科学、材料工学、合成化学、分析化学、応用化学、化学工学、反応工学など、さまざまな分野の研究者、技術者の協力が必要であり、光触媒を実用化するためには優れた生産技術を持つ企業の協力も必要である。中部地方は我が国の産業首都として研究開発力に優れたさまざまな企業や大学、公設試験研究機関が集積している。そこで、その高度の生産技術や研究開発力などを活用し連携しながら、高機能光触媒の開発について戦略的に取り組むことにした。そのために、展示会や講演会、新聞、雑誌、テレビなどを通じて積極的に情報発信するとともに、光触媒についての産学官連携の研究会を主宰することによってさまざまな企業や大学、公設試験研究機関の研究者や技術者に参加してもらい、光触媒の研究開発を連携して行った。この研究会は約350人の会員を擁する我が国初の光触媒業界団体でかつ我が国最大の光触媒に関する産学官連携組織である光触媒製品技術協議会に発展し、光触媒工業会へと引き継がれていった。そして、そこで粗悪品の横行を防ぎ、光触媒製品の信頼性を高め、光触媒産業の健全な発展を図るため、光触媒製品の品質規格の策定や光触媒性能の評価試験法の標準化、光触媒マーク(SITPAマーク)の策定、表示・用語等に関する基準の策定などを行い、さらに光触媒性能評価試験法の国内規格化(JIS化)及び国際規格化(ISO化)を推進するとともに、光触媒の国際展示会などを開催・出展し、光触媒技術の啓蒙・普及に努めてきた。これによって研究者や技術者、企業、消費者などの関心を集め、新規参入を促し、連携してくれる酸素吸収前(青色)酸素吸収後(白色)洗浄前洗浄中洗浄後写真7 酸化チタン脱酸素剤(酸素吸収前(青)と吸収後(白))写真6 光触媒洗浄剤を用いた建物の外壁の洗浄結果

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