Vol.1 No.4 2008
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研究論文:光触媒技術の開発と応用展開(垰田)−292 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)うそれ以上吸着することができない。そこで、活性炭に光触媒を付けると、光がなくても活性炭が有害化学物質や悪臭、VOCなどを吸着し、光が当たれば光触媒がそれらを分解してくれるため、効率よく環境を浄化することができるが、活性炭も光触媒によって一酸化炭素や二酸化炭素などに酸化分解されてしまう。そこで、金平糖型の酸化チタン光触媒粒子を用いることにより分解を抑え、繰り返し使用できる機能性吸着剤を開発した。これは外観が青く美しい活性炭になっており、環境浄化機能を持った美しいインテリアとして使うこともできる(写真5)。この機能性吸着剤を用いてさまざまな応用を進めており、温室の畝に敷設することによりトマトの無農薬栽培にも成功している[10][11]。これは、機能性吸着剤を用いたことにより温室内の浮遊菌やかびの胞子などが減少し、病気やかびの発生が抑えられたためと考えられる。4.1.4 光触媒と酸化剤との複合化[12]光触媒を用いて廃水処理を行うと、最初は反応速度が大きいが、だんだん遅くなり、ついには反応が止まってしまう。この原因を調べていくと、水中の有害物質を酸化分解するために溶存酸素が消費されてなくなるためであり、光触媒反応により有害物質を分解するには酸素が必要なことが分かった。そこで、光触媒反応が止まってしまわないように、曝気して溶存酸素を増やすように工夫したが、これをさらに進めて、光触媒と酸化剤との複合化を行った。過酸化水素やオゾンなどの酸化剤を光触媒と一緒に用いると、溶存酸素がなくても光触媒反応によって酸化剤が活性酸素に効率よく変換され、酸化分解が加速される。これを利用した応用を考え、歯を白くする歯牙漂白剤を開発した。これは酸化チタンと低濃度の過酸化水素を組み合わせたもので、歯に塗って光を照射することにより、歯の汚れを分解して歯を白くすることができる。過酸化水素を組み合わせることにより、短時間での処理が可能になり、また、これまで歯のホワイトニングには劇薬が使用されていたが、これにより安全に処理できるようになった。この光触媒歯牙漂白剤を製品化する際、薬事法の壁があり、安全性データなどをそろえて厚生労働省の認可を得るのに3年間かかり、2006年の12月に市販された。このように医薬品や医薬部外品、医療器具などを実用化する場合には薬事法などの社会的な死の谷があり、安全性などの基準に適合する必要がある。この光触媒歯牙漂白剤をさらに発展させて屋外の外壁などを洗浄する光触媒洗浄剤を開発した。光触媒を外壁にコーティングすると防汚・セルフクリーニングなどの機能が得られるが、汚れた外壁の上に光触媒をコーティングすると、汚れが光触媒によって分解され、光触媒が剥離してくる。そのため、光触媒施工を行う際、下地の洗浄が非常に重要であるが、一般に行われている高圧洗浄水を用いる方法では大量の水が必要で外壁を傷める場合もあり、簡単に行うことが難しい。そこで、光触媒と酸化剤を複合化した水溶液を開発し、外壁に塗布してしばらく置いた後、水を染み込ませたスポンジで洗ったところ、汚れをきれいに落とすことができた(写真6)。この光触媒洗浄剤は、使用した後に、ごく少量の酸化チタンと無機イオンが残るだけであり、安全無害である。しかも、光触媒洗浄剤に30万個の鳥インフルエンザウィルスを混合した結果、30分後にはその99 %が不活性化されるという鳥インフルエンザに対する優れた効果も得られ、さらに抗菌効果と同時に脱臭効果も得られおり、これを用いた脱臭抗菌装置・システムも開発した。現在、生ゴミ処理施設や介護施設などの脱臭抗菌などに使用され始めており、エビや魚の養殖場での病気の予防などへの応用も進んでいる。この光触媒洗浄剤を多孔体に染み込ませて用いることに(46)−写真4 金平糖型酸化チタン光触媒粒子を付けた光触媒環境浄化造花写真5 インテリアとしても美しい光触媒機能性吸着剤
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