Vol.1 No.4 2008
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研究論文:光触媒技術の開発と応用展開(垰田)−291 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)などを開発した。4.1.2 酸化チタン透明多孔質光触媒の開発光触媒は表面反応であるため、光触媒を吸着剤のように表面積の大きな多孔体に固定化すると、対象物質を吸着によって吸い寄せ、それを光触媒で効率良く分解することができる。しかし、通常の多孔体は光を透過しないため、光触媒が多孔体の陰にあると反応が起こらないという欠点があった。そこで光触媒の性能を上げるため、安価で透明で多孔質のシリカゲルを基材に用いることを考え、それに酸化チタン透明薄膜光触媒をコートした光触媒を開発した。この光触媒シリカゲルはシリカゲル内部の細孔の表面にも酸化チタン膜がコートされており、450 m2/gもの比表面積を持ち、光が細孔内まで透過するため、悪臭の分解や水処理を効果的に行うことができ、しかも吸着された有害化学物質は二酸化炭素などに安全に分解される。そのため、この多孔質光触媒は自己再生型の吸着剤ということもできる。この光触媒シリカゲルは企業によって特許実施され製品化されており、それを用いて産業廃棄物の焼却炉から排出される排ガス中あるいは廃水中のダイオキシン類を99 %以上と効率良く分解・除去できる排ガス浄化装置や水処理装置を開発した(写真2)[5][6]。そして、これを用いた着色廃水脱色システムや光触媒し尿処理システムなども開発した[7]。さらに、多孔質のコンクリートブロックの表面に光触媒を付けた光触媒透水ブロックを開発した[8](写真3)。これは抗菌防かび作用と防汚作用を持つだけでなく、大気中のNOxやSOxを吸着・分解除去し、雨水を保水してその蒸発により表面温度が低下するため、ヒートアイランド対策の効果も有する。これは低コスト化のため、基材に石炭灰などの廃棄物を利用しており、吸音ブロックとして防音壁などに施工され、排ガス浄化やヒートアイランド対策として駐車場にも施工されてきている。4.1.3 繊維やプラスチックに使用可能な光触媒の開発[9]光触媒を繊維やプラスチックに練り込むと繊維やプラスチックが光触媒作用で分解されてしまうため、これまで繊維やプラスチックへの適用が不可能であった。そこで、そのような使用を可能とするため、光触媒活性を持たないセラミックスで酸化チタンの表面を部分的に被覆することを考え、マスクメロン型や金平糖型の酸化チタン光触媒粒子を開発した(図2)。マスクメロン型の粒子は、酸化チタンの表面に光触媒活性を持たないシリカをマスクメロンのマスクのように被覆したもので、繊維やプラスチックに練り込んでも、表面にある光触媒作用を持たないシリカによって酸化チタンが繊維やプラスチックと接触せず、分解が抑えられる。この粒子は、酸化チタン粒子表面に均一な細孔を有するシリカの薄膜をコートすることによって調製されている。また、金平糖型の粒子は酸化チタンの表面に光触媒活性を持たないアパタイトを金平糖の角のように付けて被覆したものである。アパタイトは骨や歯を構成している物質で生体親和性に優れている。この金平糖型の粒子は、カルシウムイオンやリン酸イオンなどを含む溶液に酸化チタン粒子を浸漬しておくことにより、省エネルギーで酸化チタンの表面に骨や歯ができるようにアパタイトが自然に生成して調製される。マスクメロン型の粒子と同様に繊維やプラスチックに練り込んでも、表面にある光触媒作用を持たないアパタイトが酸化チタンによる繊維やプラスチックの分解を防ぐ。しかも、アパタイトは菌やかびを吸着することができるため、酸化チタン光触媒で効率良く抗菌防かび効果を発揮できる。さらに生成したアパタイトはバラの花のような形をしており、表面積が大きいため、大きな脱臭効果を持っている。どちらの酸化チタン光触媒粒子も企業によって特許実施されて製品化されている。また、それらを用いてカーテンやスーツ、学生服、靴下、マットレス、タオル、シーツ、シューズ、ぬいぐるみ、造花(写真4)、人工観葉植物、壁紙など、さまざまな繊維製品やプラスチック製品が国内外で製造販売されており、これにより光触媒の実用化が飛躍的に進んだ。さらにこの金平糖型の酸化チタン光触媒粒子を活性炭に付けることにより、繰り返し使用できる機能性吸着剤を開発した。活性炭は有害化学物質や悪臭、VOCなどを吸着して環境を浄化することができるが、吸着して飽和するとも(45)−酸化チタンセラミックス酸化チタンセラミックス光触媒有り光触媒無し図2 マスクメロン型及び金平糖型酸化チタン光触媒粒子写真3 光触媒透水ブロックの表面の防汚効果(右)

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