Vol.1 No.4 2008
38/87
研究論文:土壌・地下水汚染のリスク評価技術と自主管理手法(駒井ほか)−281 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)接摂食および地下水摂取であるのに対して、トリクロロエチレンでは、大気吸入および地下水摂取が主要経路となっていることが分かる。また、それぞれの化学物質の全曝露量はヒ素で0.85μg/kg/day、トリクロロエチレンで0.76μg/kg/dayと算出された。曝露基準値と比較するとヒ素の場合で4倍高くなっており、リスクが大きいと判断される。一方、トリクロロエチレンの場合ではリスク基準値より小さくなったことから、この程度の汚染では、リスクは許容される範囲と判断される。本曝露評価モデルでは、各曝露経路からの曝露量やその割合およびリスクが評価できる一方で、逆に、目標リスクから浄化目標を設定することも可能である。この適用事例ではヒ素による土壌汚染のリスクがあると判断されたが、何らかの浄化手法により土壌含有量を37 mg/kg以下まで浄化できれば曝露量は基準値以下となる。また、主要経路からの曝露を遮断することにより、リスクを低減することも可能である。ヒ素の場合では主要経路が土壌の直接摂食および地下水摂取となっている。したがって、これらの曝露経路からの曝露を遮断できれば(例えば、飛散対策や地下水飲用の指導)、リスクを大幅に軽減させることができる。 5.4 評価システムの公開と普及GERASのうち、スクリーニングモデルGERAS-1とサイトモデルGERAS-2をまず開発し、専門家のレビューを受けた後、2006年2月に一般公開した。公開にあたっては、リスク評価システムおよびデータベースをCD-ROMにインストールし、シリアル番号を付けて使用者に配布している。また、汚染現場での活用を考慮して詳細マニュアルを作成し、評価システムとともに提供している。これまでに、国内では800件を越える事業所、工場、自治体、浄化企業、地質コンサルタント、大学関係者などに配布し、産業や社会で広く活用されている(図8)。その主な用途は、事業所や自治体における土壌・地下水汚染の自主管理であり、全体の60 %程度を占めている。また、海外用に英語版のGERAS-E バージョンを開発し、英国、中国、韓国、タイ、ベトナムなどに配付している[19]。また、鉱物油(ガソリン、軽油、灯油等の石油系燃料)に特化した評価システムの開発も進めており、2009年までに公開と普及を目指している。(35)−土壌直接摂食吸収土壌飛散蒸発土壌飛散間隙水地下水浸透土壌含有量土壌空気屋内・屋外空気作物沈着経口吸入吸収曝露量 [μg/kg/day]0.054(6.4 %)(0 %)0.0014(0.2 %)0.35(41.3 %)0.45(52.2 %)(0 %)飲用水土壌直接摂食吸収土壌飛散蒸発土壌飛散間隙水地下水浸透土壌含有量土壌空気屋内・屋外空気作物沈着経口吸入吸収曝露量 [μg/kg/day]0.057(7.5 %)(0 %)0.49(64.6 %)0.20(26.8 %)0.0081(1.1 %)(0 %)飲用水(0 %)海外の活用 英国王立大学 オランダ環境研究所 米国環境保護局 中国地質調査所 韓国・釜山大学 韓国・KIGAM タイ・コンケーン大学 タイ・MTEC ベトナム・ハノイ大学主な用途 自社内のリスク管理 サイトアセスメント 環境リスクの把握 浄化のリスク軽減効果 調査結果の検証 浄化コストの算定 リスクコミュニケーション 自治体の自主調査 環境教育 大学などの教材 個人的な使用その他20教育関係72自治体等65コンサルタント120浄化企業110企業マネジメント132事業所等290図6 汚染土壌からの曝露量と割合の推定結果(ヒ素)リスク評価システムGERAS-1の解析結果として、ヒ素で汚染された土壌からの曝露経路ごとの曝露量とその割合を示している。ヒ素の場合、直接摂取および地下水経由の曝露が最も多いことが分かった。図7 汚染土壌からの曝露量と割合の推定結果(トリクロロエチレン)リスク評価システムGERAS-1の解析結果として、トリクロロエチレンで汚染された土壌からの曝露経路ごとの曝露量とその割合を示している。トリクロロエチレンの場合、屋内・屋外空気(大気)および地下水経由の曝露が最も多いことが分かった。図8 GERASを配布した業種の割合と主な用途これまでに配布・活用されているGERASの業種別の件数とその割合を示している。約800件のうち、事業所や企業におけるリスク評価の実績が多く、浄化企業やコンサルタントの実務にも多数使用されている。
元のページ