Vol.1 No.4 2008
33/87

研究論文−276 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)図1 ガバナンスの構造と環境改善への取り組み環境施策の社会システムとして法規制(ガバメント)と自主統制(ガバナンス)のアプローチの違いを示しており、リスク評価・管理は主にガバナンスの方法論として適用される。1 はじめにわが国の土壌汚染対策のパラダイムは、一律に環境基準や指定基準を与える法規制から、土地用途の状況や環境条件に応じた自主的なリスク管理に大きく転換しようとしている。その基礎となったのが科学的な曝露・リスクの解析に基づいた合理的なリスク管理とガバナンス(自主的な取り組み)の考え方である。地圏環境媒体である土壌や地下水は、地表水や大気とは違い、有害化学物質の人への曝露のコントロールが比較的容易である。地表水や大気が生活に必須で、日常的に人が接するものであるのに対して、土壌や地下水は、人がそれらに接する機会(曝露機会)が比較的少ないことが主な理由である。このような地圏環境のリスク評価では、環境を経由した曝露評価に関する普遍的な要素と、地圏環境に特有な土壌物性や地下水流動のような個別的な要素についての包括的な関連性を構築することがきわめて重要である。本研究では、土壌や地下水など複雑な構成要素をもつ地圏環境に関して、それらの汚染が人の健康に与えるリスクを評価する技術を開発した。関連するそれぞれの学術分野の要素技術を個別に開発しただけでは評価システム全体の完成には至らないため、地質学と環境科学を中核とした分野融合型の研究計画を立案して、6カ年の長期間にわたって研究開発を展開した。この中で、これまでの土壌・地下水汚染の諸課題を解決するためのパラダイムを転換して、わが国独自のリスク評価手法とデータベースを構築し、リスク評価の実践においてスパイラル的な研究展開という新たな試みを行い、研究開発を成功に導いた。本報告では、土壌・地下水汚染のリスク評価に関して、要素技術に関する研究開発の成果、技術の融合と構成、研究成果の公開と普及、さらには管理規格など社会システムへの組み込みについて述べる。また、それぞれの学術分野における要素技術の成果とともに、第2種基礎研究用語1から製品化研究用語2に至るまでの構成学的なシナリオおよび研究プロセスについて論じる。 2 土壌汚染対策の現状と本研究の社会的な意義2003年の土壌汚染対策法の施行以降、わが国の土壌・地下水汚染への対応は増加の一途をたどっている。最近の統計では、法規制の下で調査・対策が実施された件数だけで年間約1200件、企業などの自主対策を含めると数千件にものぼっている[1]。この背景として、環境汚染問題に対する意識の高まり、土地取引の活発化などがあげられる。また、図1に示すように最近では法規制(ガバメント)土壌・地下水汚染のリスク評価技術と自主管理手法ー リスク管理の実践に向けた構成学的研究アプローチ ー駒井 武*、川辺 能成、原 淳子、坂本 靖英、杉田 創産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 〒305-8569 つくば市小野川16-1 産総研つくばセンター *(30)−政府、自治体、規制団体等ガバメント基準値総量規制条例等自主対策環境リスク管理環境監査ガバナンス企業、市民、NPO等 土壌と地下水の汚染が人の健康に与えるリスクを評価するための手法を開発した。種々の要素研究を基盤として、評価システム全体を最適に構成した。このため、分野融合型の研究計画を立案して、要素研究の実施からリスク評価システムの開発までを行い、さらに産業や社会で利用可能な形にした。本報告では、研究開発において採用した要素技術の統合と構成のシナリオ、リスク評価の実践におけるスパイラル的な研究展開を中心に、目標達成に至るまでのプロセスについて論じる。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です