Vol.1 No.4 2008
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研究論文:粘土膜の開発(蛯名)−273 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)(27)−このような連携を基にした複数の開発スタイルを「統合開発」と呼び、特に連携を行わない場合「個別開発」のケースと比較する。図3では、粘土膜関連の製品開発A、B、Cのそれぞれが統合開発されている場合、個別開発されていた場合の進捗をそれぞれ実線と破線で描いてある。個別開発のケースでは粘土膜全体の開発はそれぞれの製品A、B、Cの総和と等しい(Ⅱ)。ここで製品開発Aが達成された時点Tで、統合開発型に移行したと考える。製品Aの開発過程で蓄積された技術とノウハウの一部を提供することにより、製品Bの開発が加速される。さらにAとBの開発によって蓄積された技術とノウハウが製品Cの開発に生かされる。統合開発型でなければ生まれなかった製品開発Dが統合開発型の場合に生まれることもありうると考えられる。結果として粘土膜全体の開発は加速的に行われる(Ⅰ)。悪いシナリオとしては、企業間の連携が失敗し、お互いの技術を使うことができなくなり、単独開発よりも製品化が遅れてしまうこともありうる(Ⅲ)。この場合、特許の権利が消滅するまで製品化が遅延することもある(Ⅲ)。統合開発により生み出されたDに対応する事例としては、高圧水素ガス容器用水素ガスバリア素材の開発がある[16][17]。これは炭素繊維強化プラスチックシートの間に粘土膜を挟み込んだ素材であり、粘土膜メーカー、炭素材料粘土膜複合材料のシーズ技術を有するメーカーなどとの協力で進めている。7 クレースト連絡会上述の統合開発を具現化するために、2008年8月にクレースト連絡会を発足させた。上述のように産総研東北センターの産学官連携の研究会であるGICがクレーストの実用化に大きな役割を果たしてきたが、この分科会として作られたものである。2008年7月現在民間企業30社程度が入会しており、さらに企業間連携を密にしながら粘土膜技術の実用化を推進していく予定である(図4)。具体的活動内容としては、特許や論文などの最新技術動向提供、粘土ライブラリの管理、連絡会会合の運営、共通基盤技術の提供などである。幹事は産総研の研究者が含まれているが、ほとんどは企業側の会員によって構成されている。統合開発に支障をきたさないよう、細心の注意を払って運営することが肝要であるとの意識からである。8 まとめ 粘土膜の開発においては、時系列的な意識を強く持ちながら広報・知的財産・技術要素研究・技術移転のそれぞれの連携により戦略的な知財確保(質・量)を行うとともに、粘土膜製造ノウハウの確立と、実用化ロードマップの策定を行った。第1種基礎研究から実用化研究に至るそれぞれのステージでの出会いが重要であった。このような出会いは、研究グループの融合、広報活動、研究会設立などによって生み出すことができる。これらのアクションを戦略的に開発過程に組み込むことが本格研究の加速的展開に対して有効であると考えられる。粘土膜のケースではアスベスト代替ガスケットという実用化例を生み出すことができた。コントロールされた情報開示によって、産総研が技術・知的財産・情報の中心となり、開発のイニシアチブを取っている。このことは同時に産総研が、企業間の調整役を果たさなければならなくなることを意味する。コンソーシアム活動は個別の製品開発を効率的に調整し統合するために有効な手段であると考えられる。最後に、時系列的に単純化したストーリーとするため後図4 クレースト連絡会-会員間の相互関係図3 統合開発の概念A-Dは個別の製品開発展開、実線は統合開発の場合、破線は個別研究の場合Ⅱ個別開発型Ⅰ 統合開発型Ⅲアンコントロールド型ABCD時間称賛TGIC粘土膜連絡会粘土膜連絡会の活動内容・ 粘土膜に関する情報交換・ 粘土および粘土試料ライブラリ・ 技術移転企業会員 約30社研究者会員(産総研など)特別会員(官など)ユーザーA食品容器ユーザーFディスプレーユーザーEディスプレーユーザーD水素タンクユーザーユーザーC電子部品ユーザーBガスケットユーザー協力共同研究粘土メーカー天然・合成粘土膜サプライヤーAIST東北センター知的財産粘土ライブラリR&D施設・試作装置・加工装置・評価装置特許 約40件ノウハウ 約2件商標 クレースト天然・合成約120種DB化提供可能展開ゼオライトなど他のシリカ系鉱物も豊富2004年AIST東北センターで粘土膜を開発東北はベントナイト粘土産出量日本一(約30万トン/年)↓ポリアミド樹脂生産量に匹敵東北粘土イノベーション
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