Vol.1 No.4 2008
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研究論文:粘土膜の開発(蛯名)−272 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)階は産総研内、あるいは同じ研究グループ内では単なる依頼・命令になる場合がある。このとき、Bの技術αについては研究Ⅱが終了しており、活用先を探している状況にあると両者の思惑が一致し、合意が得られやすいと考えられる。研究Ⅱが継続中の場合は、すべての情報を開示できない場合もあり、協力も限定的にせざるをえない場合がある。このとき、Aに期待されることとして、柔軟に可能性探求をすることである。例えば技術αについて、他の技術との複合活用の可能性を含めて想像力を高めることなどである。また、研究計画の柔軟な変更も必要になることがある。次に、Bに期待されることとして、オリジナリティに関する適切な説明がある。Aは技術αをよく知っていないため、オリジナリティについて間違った理解をする可能性があるからである。また同様の理由で関連技術のうち、αの採用が最も適切な選択であるかどうかについて客観的な助言をすることが求められる。このモデルを今回の粘土膜の開発に当てはめてみたのが表1である。第1種基礎研究ステージにおいては粘土研究者がBであり、上司がAとなる。また、第2種基礎研究ステージにおいては、コンパクト化学プロセス研究センターがBであり、J社がAである。いずれの場合も出会いの理想的なパターンに近いと考えられる。さらに実用化研究ステージにおいては、コンパクト化学プロセス研究センターとJ社がBであり、ユーザーM社がAと考えられる。このモデルのポイントは、本格研究のステージ毎の分析に用いられる点と、出会いにタイミングがあることを含んでいる点である。第1種基礎研究から実用化研究に至る過程で、出会いはより組織内部から外部へと広がっていく。具体的には、粘土膜をもっぱら研究している専従度の高い職員から、専従度の低い職員へ、産総研にID登録している外部研究員へ、そして産総研にID登録していない製造販売従事者へと広がっていく。図2は粘土膜に関してそのような関係者の広がりを示したものである。関係者の数が増え、ユーザーとして恩恵にあずかる人口が増えることもイノベーション進捗の評価軸の1つと考えられる。6 統合開発モデルこれまでは粘土膜における個別の製品化開発の議論であったが、粘土膜の製品化研究は製品毎に仕分けされており、それぞれ別の企業等と行われている。また、川上と川下の関係になっている例もある。具体的には、粘土生産の企業と、それを用いた粘土膜の製造企業、さらに粘土膜を用いた製品を製造する企業などである。また、上記のような垂直展開とともに、製品は別であるが技術開発要素を共有する企業がある。それは例えば耐水性の高さ、膜の透明度の向上、ガスバリア性の高さ、などである。これらの企業を含んだ開発全体でバランスされた成果を上げるためには、個別の開発を行う時期から、情報交換によって開発を加速する時期へと移行することが好ましい。守秘義務のために他社との共同研究の内容や進捗について伝えることができないため、産総研が仲立ちになった企業連携を進める方法を工夫しなければならないが、前述のGICの場を利用することによって少しずつ企業間の壁を下げていき連携を進めていきたいと考えている。実用化例を生み出し、企業との共同出願特許が開示され始めている2008年が技術の融合を始める好適な時期と考える。上述の出会いのモデルでは独自技術の確立という点で先行企業をBとし、それに続く企業をAと考えることができる。この連携に産総研が直接関与する必要はない。(26)−図2 粘土膜研究における関係者の広がり(Nは関係者数)表1 ガスケット開発における出会いの形態2005200620072008050100150200250300西暦製造販売従事者民間登録者数AIST職員数AIST専従NステージABXα研究開発Ⅰ研究開発Ⅱ研究開発Ⅲ研究内容出会いをもたらした機会第1種基礎研究上司粘土研究者マイクロリアクター用水素ガスシール材粘土膜による均一なフィルムマイクロリアクター開発粘土圧密体による水バリアー研究産総研内部グラントハイバリア性の確認、ハイバリア性発現機構の検討新ユニット立ち上げ第2種基礎研究企業J産総研研究ユニットガスケットの耐熱性向上耐熱ガスシール材産総研内部グラント経済産業省地域中小企業支援事業粘土膨張黒鉛ガスケット・パッキンの開発技術相談実用化研究ユーザー企業M企業J+産総研研究ユニットアスベスト代替ガスケット製品高性能ガスケット経済産業省地域中小企業支援事業NEDO緊急アスベスト代替開発PJ非アスベストガスケットの開発コンソーシアム(GIC)イノベーションユーザー企業群企業J+産総研研究ユニット高性能ガスシール製品高性能ガスシール製品開発技術NEDO緊急アスベスト代替開発PJNEDO大学発事業創出実用化研究開発事業汎用高性能ガスシール製品の開発、標準化に向けたデータ収集製品広告など

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