Vol.1 No.4 2008
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研究論文:粘土膜の開発(蛯名)−270 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)な3つの問題があった。1つ目はクラックの存在である。粘土だけの膜は見た目に均一にできていてもガス分子が透過するような小さなクラックを完全に排除することが簡単ではなかった。しかしガスバリア材料はたった1つのクラックが性能を維持できない原因となる。2つ目は機械的強度の低さである。粘土膜は曲げられるといってもプラスチックほど柔軟ではなく、また膜強度も弱く、さらに一旦亀裂が入ると破断しやすいという問題点がある。3つ目は水に弱いことである。前述したように水によく分散することが自立膜を得るための粘土の条件になるが、これは同時に粘土膜が水に溶けやすいということを意味する。このような材料はガスバリア材料として多くの場合要求される水蒸気バリア性に劣るという問題点がある。ガスバリア材料としては以上の3つの問題をクリアしなければ、なかなか汎用材料としての未来は見えてこない。これまでこの問題点を解決できずギブアップしたエンジニアが少なからずいたのではないかと推察する。これらの問題点を解決するために投入された技術として、ナノコンポジット技術がある。粘土原料とバインダーとなる有機材料を微視的なレベルで均一に混合し成膜する。多くの場合、粘土表面の帯電状態を利用した粘土の前処理に基づく分散技術が取り入れられる。ナノコンポジット化により、粘土膜のクラックを排除し、機械的強度と耐水性を向上させることが可能である。一般的なナノコンポジットは有機物中に微量の無機物を加えるのに対し、粘土膜は粘土の中に少量の有機物が含まれていることから、両者は全く逆転した組成になっている。4.3.2 粘土膜製造技術最適な成膜方法を知るために、数千枚の試作を必要とした。結果的に5年間に渡り毎日粘土膜を作り続けることによって成膜ノウハウを蓄積することができた。その結果、厚みが10 μm程度の粘土膜についても再現性よくできるようになった。同時にコーティング法についても検討を行い、ディップコーティング、スプレーコーティング、キャスト法、バーコーターを用いる方法などが適用可能であることを知るに至った。前述の研究試料提供契約の際は、ラボレベルではあっても最低限のクオリティコントロールを行うことに努めた。試料の作りこみを行い、再現性を確認し、外部に委託し主要特性値をできる限り多く取得し、特性値表を作成した。また、出荷前チェック項目として明確な仕様を内部で設定した。それらは具体的にはサイズ、厚みムラの程度、ダマなど肉眼で確認できる不均一性の程度などである。このようなクオリティコントロールが粘土膜の製造ノウハウの蓄積に役立った。4.3.3 粘土ライブラリ粘土膜に適した粘土を探索する過程で、国内外の130種程度の粘土試料を収集した。これらは天然あるいは合成の粘土で、そのほとんどが市場に流通しているものである。また精製を行っていない安価な粘土試料も含まれている。これらの試料に関する成膜性の評価結果などは現在データ収集の過程であるが、粘土-膨張黒鉛複合材に適した粘土はこのライブラリの中から選定した。4.4 統合プロセス4.4.1 膨張黒鉛への密着性のよいコーティング方法の選択本ガスケットは最低でも400 ℃の耐熱性を要求される。そのため有機系接着剤を使うことができない。当初は貼付法をとっていた。一定の密着性が得られたが、膨張黒鉛と粘土膜の間に空気が入ってしまうという問題点があった。そこでディップコーティング法を採用した。ディップコーティング法は側面にもコーティング層を付与できる利点がある。試作を行った結果、膨張黒鉛に厚さ約20μmの粘土膜のコーティングができることがわかった。溶剤としては、水を採用した。4.4.2 幅広い原料から適切な組み合わせを選択(粘土および添加物、粘土のブレンド)粘土ライブラリから膨張黒鉛表面への密着性に優れた粘土の種類を選択する作業を行った。今回、粘土膜に透明性を要求されないため、コストの面からこのスクリーニングは天然粘土を中心に行った。その結果、スメクタイトという鉱物を多く含む粘土で成膜性・密着性などが優れていることが分かった。さらに添加物としてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂などが選択され最終仕様ではその中で最も適したものが選ばれた。耐熱性を確保するため、添加量については機械的強度を保てる範囲で最小限に抑えることにした。さらにコーティング液の固液比を高め、乾燥にかかる時間を短縮し、製造性に優れた膜とするために粘土のブレンドを検討した。その結果性状の異なる粘土を混合して用いることで、膜特性に優れさらに製造性にも優れたコーティング膜ができた。4.4.3 要素試験、実プラント試験の評価結果を改善に生かすフィードバック体制要素試験については、ガスケットメーカーであるJ社が行い、シール性、焼付き試験、取扱性評価などで良好な結果を得た。開発品の実用化過程においては、GICの会員であるユーザー企業M社の協力を得られることになり、使用実績のないガスケットであるにも関わらず、実際の石油化学プラントにバイパスを設置しテストしてもらうことになった。この垂直連携の取り組みがNEDO緊急アスベスト代替開発プ(24)−
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