Vol.1 No.4 2008
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研究論文:粘土膜の開発(蛯名)−269 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)2004-5年でピークを迎えた。3.3 技術移転と共同研究ポリシー技術移転は研究試料提供契約および研究情報開示契約によって行った。前者は約70件、後者は約20件を数える。技術移転では粘土膜の製造ノウハウの十分な蓄積と、そのノウハウの正確かつ詳細な情報伝達をすることに努めた。研究情報開示契約の際は、単なる未公開特許およびノウハウブックの開示だけではなく、ラボ内に立ち入っての見学を積極的に受け入れた。未公開特許およびノウハウブックの開示はそれほど詳細なものとなっておらず、その情報だけで開示先が完全な再現ができるとは限らないためである。結果としてほとんどの場合、開示先は産総研のサンプルと同程度かそれ以上の品質の膜を製作することに成功していることから、この研究情報開示契約のスタイルは技術移転に有効と考えられる。2004年より研究情報開示契約を前提とした用途別の共同研究を開始した。これらの共同研究は2005年あたりから増加し、粘土膜の開発ステージは徐々に実用化研究へ移行していった。結果的に同じ製品に用いられる場合でも、川上・川下に仕分けが可能である場合には共同研究を開始することを可能とした。研究開発段階が進めば、川上・川下企業に渡る垂直連携が研究開発を加速する場合もあると考えられたためである。同時にビジネスの衝突が起こる可能性があり、適切な時期に友好的に開発を進めるための措置を講じる必要が出てくる。このとき産総研職員は守秘義務のために踏み込んだ内容はなかなか難しく、後述のような主要研究先を含めたコンソーシアムを利用することが有効な手段である。コンパクト化学プロセス研究センターはグリーンプロセスインキュベーションコンソーシアム(GIC)を主宰しており、この場で企業間の水平連携および垂直連携を支援している。企業などとの共同出願特許件数は2006年から多くなり、2007年には総出願数の8割程度にまでなっている。共同出願をしている相手企業が10社以上と多いことも粘土膜開発の特徴である。4 アスベスト代替ガスケットの開発多くの技術相談を受けた企業の中で、J社とともに高温条件下で用いられるシール材の開発を2005年度の経済産業省地域中小企業支援事業として行うことになった。この研究成果を基礎として、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトによって、膨張黒鉛と耐熱粘土膜を複合化させた、既存の非アスベスト製品よりも耐熱性、耐久性、耐薬品性に優れ、さらにアスベスト製品並みの優れた取扱性を実現したガスケット製品を開発した。開発したガスケットは、製油所などの化学プラント、火力発電所など広範に適用可能である。4.1 従来のアスベスト代替ガスケットの問題点多くの化学産業分野では、高温条件下での生産プロセスにおいて、その配管連結部などで、液体や気体のリークを防止するために、ガスケットが用いられている。高温部に対してはアスベスト製品が広く用いられてきた。昨今アスベストの健康被害に対する緊急の対応が迫られていたが、代替品の開発が途上であり、安全性・信頼性の評価も進んでいなかった。膨張黒鉛製ガスケットは、シール性に優れ、長期保存が可能であり、加工が容易であるなどの長所があることから、非アスベスト製品として最も有力だが、黒鉛粉同士の結合が強くないことから、製品表面から粉が剥がれる「粉落ち」、使用後ガスケットに接している金属面に黒鉛が付着して剥がれにくくなる「固着」などの問題点があった。さらに400 ℃以上の高温で酸素雰囲気下では酸化劣化が進みガスケットが痩せていくため、シール性能が保たれず、使用できないという問題点があった。4.2 シナリオの設定4.2.1 膨張黒鉛と粘土の複合化によるガスケットの耐熱性の向上黒鉛は400 ℃以上で酸素が存在すると燃焼してしまう現象は根本的な解決が困難である。しかし粘土は酸化物であり、耐熱性に優れている。粘土膜に用いられている粘土は600 ℃程度までは安定で、これを混合・複合化させて全体の耐熱性を向上させることが考えられた。また、粘土膜は酸素に対する高い遮蔽性を有するため、粘土膜でコーティングすることで酸素の内部への移動を遅延させ、ガスケットの寿命を延ばすことに役立つと考えられた。4.2.2 粘土層の付与による粉落ち・焼付きの防止膨張黒鉛表面からの粉落ちについては、現行のフッ素樹脂コーティング品がそうであるように表面に均一な粘土膜コーティングを行うことで解決できると考えられた。また、焼付き防止についても粘土膜コーティングによってフランジの金属面と黒鉛が接しないようにすることができ、焼付き防止に有効と考えた。4.2.3 ガスケットの表面平坦化によるシール性の向上ガスケットのコーティングした粘土膜の表面を平坦にし、膨張黒鉛ガスケットと金属フランジ間から漏れる流体の量を低減させることが可能であると考えた。4.3 要素技術4.3.1 ナノ複合化技術粘土はプラスチックよりも耐熱性が高い。さらに、緻密に成型することによりガスバリア性を発揮する。しかしながら、粘土の膜をガスバリア材料として応用する場合に重大(23)−

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