Vol.1 No.4 2008
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研究論文:ナノテクノロジーから大容量・高出力型リチウム電池の実用化へ(本間)−255 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)定せず、多様な新技術を生み出す協創(Co-Creation)型プロセスとしての水平連携開発、の2つの構成手法が存在する。実際に筆者が研究開発責任者となったNEDOプロジェクトではハイブリッド車用の高出力・大容量型リチウム二次電池という明確な製品をいかに短期間で開発するか、という目標があったため、前者の収束型プロセスを採用し、大学から企業に至る産学官垂直連携スキームによる研究開発を行い、ナノテクとエネルギー分野の融合によるイノベーションシーズの迅速な実用化を試みた。明確な製品目標を“最短距離”で完遂するには要素技術を効果的に統合する収束型メカニズムが最も適しており、実際に行った開発では短期間で革新的な高出力型電池を生み出すことが可能であった。従来型の連携開発プロセスでは、まず大学の基礎研究の種が産総研に移転され、そこで、電池デバイスとしての性能実証や量産化プロセスなどの産業界へバトンタッチする直前までの技術開発が行われ、順次電池メーカーから自動車メーカーへと技術移転していくシナリオが普通であった。しかしながら、この逐次的連携開発は各機関の研究者の趣向により研究開発のベクトルが振れる場合には、エンドユーザーの求める技術と大きく異なった形で川下の機関に届いてしまう可能性がある。今回の産学官垂直連携では、このような時間がかかる川下への技術移転のスピードアップと製品が要求する適確な技術の移転のため、プロジェクト開始から全ての機関が参加し自動車メーカーの要求する技術開発項目をバックキャスト的に大学、産総研に伝えて基礎研究の方向付けを行った。このように技術の流れを直線化することによって川上と川下の“短距離化”を図ったわけであるが、3年の開発期間でナノ結晶電極という極めて有望な革新的材料を生み出すことに成功し、一般に融合が難しいとされているナノテクノロジー分野とエネルギー技術分野の橋渡しと革新技術開発が行えたことは幸運であった。今回のプロジェクトではハイブリッド車電源として十分な性能を達成しつつも、最初は小型セルで市場投入できるパワーツールの数年後の実用化を目指して、ナノ結晶電極を用いた製品開発が進捗中である。図13は研究開発プロセスとして類型化されたイノベーションの構成手法を示しているが、最終目標が明確にイメージされるような製品がある場合は本稿で紹介したように垂直連携型の収束(Convergence) メカニズムが有効であろう。短期間での実用化を図るのならさまざまな要素技術を統合して最終製品に技術を収束させるのがもっとも効率が良いし、また垂直連携体制を取ればそれがもっとも短時間で技術移転できる。他方、現存しない革新的な萌芽技術や多様で汎用性の高い技術標準を生み出すことを目的とするなら、水平連携型の協創 (Co-Creation) メカニズムの方が良いであろう。これは多様なイノベーションシーズを生み出し、スペクトルの広い産業界に文字通り水平的に貢献するからである。本稿では収束メカニズムに関して実施例を述べたが、産総研のイノベーション構成手法としてはどちらも重要であり、今後ともその方法論を深めていく必要があることは言うまでもないことである。5 将来への課題図1に電池分野の産業鳥瞰図を示したが、自動車電源に応用する場合は容量特性、サイクル特性に加えて大型化図13 イノベーションの2次元的構成法協創(Co-Creation) と収束(Convergence)研究開発プロセスにおけるイノベーション構成手法水平連携垂直連携収束(Convergence)大学産総研企業A企業A企業B企業C企業B協創(Co-Creation)(9)−
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