Vol.1 No.4 2008
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研究論文:ナノテクノロジーから大容量・高出力型リチウム電池の実用化へ(本間)−254 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)(8)−格研究の加速を図った。まず、産総研の特徴として異分野融合によって革新的な新技術が生み出されやすい点を強調したい。研究者の数と密度が大きく、また標準・地質からバイオ・情報まで産業技術のほぼ全域をカバーする広い研究スペクトルを有しているため、容易に異分野との融合や要素技術のインテグレーション(総合化)が可能である。このことは従来にない新技術やコンセプトを創出することに適した、いわゆるイノベーション密度の高い研究組織であることを意味している。この組織構造の特徴を生かせば、分野の境界領域で革新的な萌芽技術を生み出すことが容易であろう。すなわちバイオ+エネルギー、標準+ナノテク、エレクトロニクス+環境など多様な境界領域で、従来にない新しい技術の芽を創出し、革新技術のプラットフォームとなるイノベーションシーズを高密度に産出することが可能である。次に考えるべきは、いかにしてこのようなイノベーションシーズの有効性を短期間で検証するかという方法論、すなわちイノベーションの構成学である。そこで筆者がNEDOプロジェクトで実施した高出力型リチウム電池の研究開発を例として、産学官の垂直連携スキームによりイノベーションシーズの有効性を極めて短期間、例えば数年で検証できる研究開発プロセスについて述べたい。垂直連携は図12に示すように基礎研究を行う大学(川上側に位置する)から本格研究を行う産総研、さらに電池メーカーとエンドユーザーである自動車メーカー(川下側)までを1つのプロジェクトにまとめて垂直的に連携させ、イノベーションシーズを迅速に実用化に持っていくスキームである。この連携スキームでは大学・産総研の新技術が迅速に自動車メーカーまで伝わり、有効性や信頼性を迅速に検討することが可能になる。また、バックキャスト的に自動車メーカーの技術的要望が電池メーカーを通して産総研・大学に伝わり、その基礎研究に方向性を与えることが可能となる。この双方向性を参画機関で共有することにより、密度の濃い情報交換と製品仕様に合致した基礎研究を行うことが可能となり、数年の短期間でも実用化に結びつく効果的な研究開発プロセスになり得る。では次に、このような新しい研究開発プロセスにおいて産総研の役割は何であろうか。結論から言えば、このような垂直連携において、産総研は中核的なイノベーションハブとして機能することが可能である。すなわち、研究者の数と密度が高く、さらに研究分野のスペクトルが広いため、異分野融合により新しいイノベーションシーズを高密度かつ高効率に創生できる。このように異分野融合により創出される新技術の中から実際、製品まで応用できるものを迅速に見出すには本稿で記述しているような産学官垂直連携型のプロジェクトが有効であろう。図12に示したように異分野融合により創出した革新的技術を産学官垂直連携スキームを用いて、明確に目標化された製品に迅速に技術移転するプロセスはイノベーションの“短距離化”を可能にする有効な収束型(Convergence)研究開発プロセスである。このプロセスの中で産総研は、中核的なイノベーションハブとして機能する。本稿では、ハイブリッド自動車電源のキーテクノロジーである大容量・高出力型リチウム二次電池の迅速なイノベーションに成功し、上記の収束型研究開発プロセスが有効であることを示した。連携を前提としたイノベーション構成学においては図13に示したように、①明確な製品目標を設定し、さまざまな要素技術を統合する収束型(Convergence)プロセスとしての垂直連携開発と、②明確な製品目標を設図12 産学官垂直連携によるイノベーション構成手法イノベーションの“短距離化” → 異分野融合と産学官垂直連携ナノテクノロジーイノベーションシーズの密度が高い組織ナノ結晶、単分散合成、ナノポーラス材料、自己組織合成、無機プロセス低抵抗電極、高イオン拡散性、高速電荷移動、ナノポーラス型電極、ナノ結晶の量産化技術大容量・高出力型電池、高速充放電電池、パワーツール電池エネルギー研究者の数とスペクトルが最も広い基礎化学無機化学プロセス異分野融合で新技術①大学 (川上)② 産総研③ 電池メーカー④ 自動車メーカー (川下)プロトタイプ電池★垂直連携で実用化をすばやく検証自動車用大型電池製品最適ナノサイズの探索、安価材料の検討、セルデザイン、リチウム二次電池ハイブリッド車電源、回生電源、電気自動車、分散型電源

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