Vol.1 No.4 2008
10/87

研究論文:ナノテクノロジーから大容量・高出力型リチウム電池の実用化へ(本間)−253 Synthesiology Vol.1 No.4(2008)(7)−基点となる知見である。今回の研究開発において産総研はナノサイズ活物質がその特徴的なリチウム貯蔵メカニズムにより大容量・高出力特性を実現するのに有効な活物質材料であることを実験的に解明し、さらに、その迅速な実用化のための垂直連携開発ではミッシング領域の系統的な探索を行って試作電池の出力特性とサイクル特性を評価した結果、活物質サイズ50 nm前後に最適解があることを実験的に明らかにした。現在、世界各国でナノサイズ活物質を用いた高出力型リチウム二次電池の研究開発が加速している中で、具体的にどのくらいの活物質サイズが電池製品の実用化に最適なのかを追求した研究開発は今回が初めてである。筆者が遂行した垂直連携プロジェクトでは、大学・産総研で見出したナノサイズ活物質の優れたリチウム貯蔵特性を利用していち早く革新的電池製品を生み出すべく、これまでの活物質サイズにおけるミッシング領域を系統的に探索した結果、製品仕様に最適な活物質サイズを見出した。さらに電池セルを試作し十分製品化に耐えうる高出力特性と高サイクル特性も確認した。図11にプロジェクトで試作した電池性能をラゴンプロットに記載した。既存リチウム二次電池製品の性能をはるかに超え、プロジェクト目標値を達成する大容量・高出力特性が得られた。また、製品化において最も重要な仕様である充放電サイクル特性も高出力条件で10000回まで調べたところ容量保持率約60 %を示し、既存電池製品と比較してもその優位性が示され、製品化に十分耐えうる信頼性を有していることも判明した。現在、これらのナノ結晶活物質の革新的なエネルギー物性を生かした高出力型電池の製品開発が進行中である。このように革新的なエネルギー貯蔵材料であるナノ結晶電極というコンセプトを産総研が生み出し、基礎研究段階での高出力特性の実現、またサイズ効果と表面に起因する革新的なエネルギー貯蔵物性を学術的に明らかにし、さらに電池メーカーとの連携によりナノ結晶活物質の優れた電極特性を生かした高出力型のリチウム電池を実証した。4 異分野融合と産学官垂直連携によるイノベーションの“短距離化”本稿で述べるイノベーションの“短距離化”の戦略として、図12に示すような異分野融合と産学官垂直連携により本図11 試作した電池性能のラゴンプロットと充放電サイクル特性(どちらも既存型電池より高性能が確認された)市販Liイオン電池55 nm LiMn2O4 vs 100 nm Li4Ti5O121 A/g (2.4 mA/cm2)サイクル数容量 (mAh/g)020004000600080001000050100150プロジェクト目標値3 KW, 30 Wh/Kgリチウム二次電池電気二重層キャパシタコンデンサエネルギー密度 (Wh/Kg)出力密度 (W/Kg)10610110210310410510110210310-110010-2図10 ナノ結晶電極を用いたリチウム電池の出力特性050100123容量 (mAh/g)電位 (E/V)LiMn2O4 55nm0.1/Ag1.0/Ag5.0/Ag0.2/Ag2.0/Ag050100123容量 (mAh/g)電位 (E/V)LiMn2O4 150nm0.1/Ag1.0/Ag5.0/Ag0.2/Ag2.0/Ag

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です