Vol.1 No.3 2008
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研究論文:実用化をめざしての再生医療技術開発(大串)−174 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)clinical trial)というプロセスを経て、最終的に培養された細胞が厚生労働省の許認可の下、再生医療製品として販売される必要がある。例えばアメリカのGenzyme社は米国食品医薬品局(FDF)の認可の下、1万例以上の患者に対して増殖軟骨細胞を製品として販売している。我が国では、広島大学の越智教授により、軟骨培養をコラーゲンゲルの中で3次元培養を行い、この軟骨・コラーゲンゲルの複合体を用いての軟骨再生技術が開発された。この技術はジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(JTEC)に移転され、治験がほぼ終了状態にあるもののまだ製品としては出回っていない。この点に比し、JTECが軟骨再生を開始するのとほぼ同時期に韓国のSEWON Cellontech社が軟骨再生事業にとりかかり、すでに韓国食品医薬品局(KFDF)の認可の下3,000名近くの患者に適用している。また、軟骨再生よりさらに歴史の古い皮膚再生においては、既に諸外国で複数の製品が出回っている。しかし、日本においてはJTEC がつい最近再生医療製品として承認を受けた段階である。このように、この再生医療分野においては諸外国に比し日本の産業化の遅れは明白である。すなわち、許認可に対する日本のスピードの遅さは明白な事実である。今後、再生医療の産業化を推進するためには、再生医療製品の安全と有効性の科学的根拠の確立に行政側からの取り組みも必要とされるであろう。現在、日本の医療制度は、事業段階においては薬事法で規制する仕組みになっており、例えば、医薬品や医療機器を販売するには、上述の薬事法で定めるところの治験というプロセスを経る必要がある。また、この薬事法はその性格上、不特定多数に対しての製造販売を念頭においた法体系となっている。しかし、我々が行っている再生医療、すなわち患者から細胞を分離、培養増殖して同一患者にその培養細胞を移植する医療は、患者自身の細胞(自己細胞)を利用する再生医療技術である。すなわち、特定の個人対象の医療であり、不特定多数を対象とした薬事法にはなじまない可能性がある。さらに、この再生医療技術においては、医師が患者から細胞の採取を行う必要性があり、必然的に細胞を治療目的で患者に移植するかなり以前より、医師と患者の間には一対一の対応が成り立ち、自己細胞を用いる再生医療のリスクとベネフィットの説明・許諾がなされ得る。このように、自己細胞を用いる再生医療は他家細胞を用いての治療技術とは明らかに異なるものであり、この医療技術に関しては、新たな認定体制の検討も必要であろう[9]。このように、再生医療という新しい技術革新に関しては、既存の考え方にとらわれない新しい体系構築も考えるべきと思われる。謝辞本論文はセルエンジニアリング研究部門の組織・再生工学研究グループの皆様の協力の下になされ、中でも国際標準に関しては廣瀬志弘研究員の精力的な活動が不可欠であった。細胞自動観察装置の開発は新機械システム普及促進事業“幹細胞の培養状態自動観察システム開発”の支援をうけ三洋電機株式会社と共同での開発で、バイオメディカ事業部の原田 雅樹氏、ヒューマンエコロジー研究所の山本 宏氏のご協力に感謝する。また、細胞厚み計測装置に関しては健康安心プログラム“再生医療の早期実用化を目指した再生評価技術開発”の一環として、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託をうけてオリンパス株式会社との共同での研究であり、医療新事業プロジェクトの福田 宏氏のご協力に感謝する。キーワード再生医療、細胞培養、細胞分化、生体材料、国際標準H. Ohgushi and AI. Caplan: Stem cell technology and bioceramics: From cell to gene engineering, J. Biomed Mater. Res., 48(6),913-27(1999).H. Yamamoto, M. Harada, A. Michida, M. Houjou, Y. Yokoi, A. Sakaguchi, H. Ohgushi, A. Ohshima, and S. Tsutsumi: Development of cell culture system equipped with automated observation function, Journal of Biomechanical Science and Engineering,2(3),127-137 (2007).Y. Katsube, M. Hirose, C. Nakamura and H. Ohgushi: Biochem. Biophys. Res. Commun.,368(2),256-260(2008).H. Ohgushi, Y. Dohi, T. Katuda, et. al: In vitro bone formation by rat marrow cell culture, J. Biomed Mat. Res., 32,333-40(1996).Y. Tohma, Y. Tanaka, H. Ohgushi, et. al: Early bone in-growth ability of alumina ceramic implants loaded with tissue-engineered bone, J. Orthop Res., 24,595-6037(2006).H. Ohgushi, N. Kotobuki, H. Funaoka, et. al: Tissue engineered ceramic artificial joint-ex vivo osteogenic differentiation of patient mesenchymal cells on total ankle joints for treatment of osteoarthritis, Biomaterials,26(22),4654-61(2005).T. Morishita, T. Honoki, H. Ohgushi, et. al: Tissue engineering approach to the treatment of bone tumors: three cases of cultured bone grafts derived from patients mesenchymal stem cells, Artif. Organs, 30(2),115-8(2006).N. Nagaya, K. Kangawa, T. Itoh, et. al: Transplantation of mesenchymal stem cells improves cardiac function in a rat model of dilated cardiomyopathy, Circulation, 112,1128-1135(2005). 自己細胞再生治療法ワーキンググループ編:“自己細胞再生治療法”法制化の考え方, ティッシュエンジニアリング,313-326,日本医学館,(2007).(受付日 2008.4.14,改訂受理日2008.6.2)[1][2][3][4][5][6][7][8][9](5)−参考文献

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