Vol.1 No.3 2008
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−233 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)総説:個の「知」から全の「知」へ一般論文という形で出しています。毎号10編から10数編の論文を掲載し、約3000部をいろいろな機関や社内に配付しています。技術誌はいろいろなビジネストークに使ったり、共同研究するときの取っかかりの資料とすることで、別刷りも用意して活用しています。シンセシオロジーには、研究開発の成果を社会に活かすための方法論を記すという目的があるようですが、シナリオをきっちり作って研究するという姿勢は、当社の中の研究部門の特に若手の教育にも非常に意味があるのではないかという気がします。企業の研究部門は、研究のための研究といいますか、本当に研究が企業にとってどういう役に立ち、最後にどういう形になるのかを明確にイメージして、そのために最短距離でいくにはどういうシナリオで研究していくのか、何を押さえていかなければいけないのかを、ともすれば余りよく考えないで研究をしているというのがまま見られます。やはり研究をするときには、研究者が自分なりに十分考えた上でシナリオを作ってやってみる、だめだったらまた考え直すという、常にそうやって考えて研究をする、開発をするということが必要になってきます。そういう考え方を教え込むのに、シンセシオロジーは非常に役立つのかなと思えてきました。 持丸 正明 産総研デジタルヒューマン研究センター副研究センター長【パネルディスカッションコメント】産総研の研究の1つの特徴は、要素技術を研究するだけではなく、それらを組み合わせ構成してみるということです。私の例では構成したものを実社会に出す、そして実社会で動かした結果を観測、分析してみることです。私は足の形の研究をずっとやっていて、ある企業と一緒に足の形を測る機械を開発しました。世界中で1万足ぐらいのデータをアーカイブし続けていますが、なかなか終わりません。実際に社会に出してみると、わからない問題がようやく見えてきて、それに対して技術開発や必要なときは政策提言をしたりして動かなくてはいけない、つまり“手離れ”悪く研究をする、面倒見続けるということになります。シンセシオロジーでの査読についてはオープンになる査読は初めてで、まず緊張しましたし、かなり多くの時間を費やしました。著者と率直に話し合い、こんな点をもう少し強調すると面白いのではないかということも含めて、査読のやりとりはなかなか面白いと感じました。一方、執筆を依頼されたときは、また所報を作るのかと思いましたが、説明を聞いてみるとコンセプトが面白く、大変新しいことをえらく古い方法、つまり論文誌という方法でやるのだなと思いました。実際書いてみて難しかったのは、研究プロセスを一般化するために書くということ。研究上でどうやって手段を選び、構成していったかという方法論は書いたことがありませんでした。査読者とのやりとりも踏まえながら改めて考えてみると、どうもあまり合理的ではなかったかなと思うこともありました。それから、一般化は、残念ながら自分でもできたような気はしません。また、学術性を担保しつつ、異分野の読者にもどうしたら面白いと感じていただけるか、読者の理解をどう得るかは、やはり執筆者として苦労しました。技術的に難しかった点の1つは、企業との守秘情報をどう取り扱うかということで、共同研究先企業と率直に話をして、判断しながら論文を構成しました。シンセシオロジーそのものが悪夢の時代を迎えないようにするのが大事です。アーカイブすれば構成学は自然と構成されるのかというと、そうではありませんし、一般論を抽出し切れないところもあります。そういうところをワークショップとしてやってみると面白いのではないでしょうか。シンセシオロジーのレベルとかステータスを守るために、厳しい査読をしなければならないケースも出てくるでしょう。そういうことも含めて、まだまだ乗り越えなければならない山が幾つかあると感じています。 赤松 幹之 シンセシオロジー編集委員会編集幹事【パネルディスカッションコメント】新ジャーナルに名前をつけるとき、研究成果を社会に活かすには統合や構成がキーワードになると考え、「構成」に対応するギリシャ語のシンセシスに、「学」を表すロジーを付け「シンセシオロジー」にしました。シンセシオロジーは新しいタイプの学術誌と言えます。シーズとして転がっている研究成果を実際に使えるようにするためのプロセスやどう育てたらいいか、すなわち方法論を論文という形で収録するのです。知の共有を行うのがジャーナルという媒体だとすれば、物事を構成していく方法論を記録に残し、土台となるものをつくりたいというのがシンセシオロジーの基本的な考え方です。シンセシオロジーでは全分野を対象に、どういうふうに構成して社会の役に立てるようにしていくか、そういうことの共通的な方法論を見出すというのがポイントです。また論文の査読プロセスと査読者の氏名を公開しています。公開することによって査読者側は言わば読者の代表の立場(64)−

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