Vol.1 No.3 2008
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総説:個の「知」から全の「知」へ−229 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)「シンセシオロジー」創刊記念シンポジウムシンセシオロジー編集委員会 2008年5月13日、秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区)において、「シンセシオロジー―構成学」創刊記念シンポジウム“個の「知」から全の「知」へ―そのシナリオの共有と蓄積について”が開催され、産業界を中心に330名を超える方々にご参加いただきました。シンポジウムでは、小野 晃 シンセシオロジー編集委員長の挨拶の後、野間口 有 三菱電機株式会社取締役会長から「基礎研究、その今日的意義」と題し、また中島 秀之 公立はこだて未来大学学長から「構成的方法論と学問体系」と題してご講演いただきました。引き続き、経済ジャーナリスト柏木 慶永氏をモデレーターに、広瀬 研吉 科学技術振興機構理事、木村 英紀 横断型基幹科学技術研究団体連合会長、上田 完次 東京大学教授、前田 拓巳 株式会社島津製作所技術推進部長、持丸 正明 産総研デジタルヒューマン研究センター副研究センター長、赤松 幹之 シンセシオロジー編集委員会編集幹事をパネリストに、「技術の統合と共有の方法論について」をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。最後に、吉川 弘之 産総研理事長が総括・閉会挨拶をしました。当日の各挨拶、ご発言、コメント等の要約(本誌編集委員会作成)を以下に記します。個の「知」から全の「知」へ ー そのシナリオの共有と蓄積について 小野 晃 シンセシオロジー編集委員会委員長【開会挨拶】イノベーションの推進には、基礎研究の成果をどのように効果的に社会あるいは産業に結びつけていくかが重要です。私たちは、研究における最初の発見や発明のところを第1種基礎研究と名付け、そこから現実の製品に至る過程での異なる領域にまたがる構成的・統合的研究を第2種基礎研究とすることを提唱しています。第2種基礎研究の部分は、研究にとっては非常に困難な時期であり、「悪夢の時代」とか「死の谷」とも呼ばれます。そこに技術的な観点から、あるいは研究者側から積極的に取り組むことが大事ですし、悪夢の時代をいかに乗り越えるかというところに研究開発型独立行政法人の大きなミッションがあります。基礎研究の大きな担い手である大学、製品化への担い手である企業との連携の必要性も同時に認識しています。このような背景のもとに、第2種基礎研究をより深く掘り下げ、それを社会や産業界の方にもご理解いただこうと、雑誌「シンセシオロジー」を創刊しました。現在の科学技術は細分化された分野ごとに学術誌が刊行されています。しかし、現実の製品とか、社会に出て行く技術は、多様な分野の技術を統合していかざるを得ません。多様なディシプリンを統合する研究者には細分化された学術誌では不十分ですし、また、先端的なアカデミアの雑誌は産業界とか社会の人々が読めるような形になっていないという問題意識もあります。「シンセシオロジー」では、科学技術の全分野を対象に、第2種基礎研究のプロセスと成果を記述します。読者としてはいわゆるアカデミアの研究者だけでなく、産業界、社会の研究者、技術者の方々を想定しています。論文の記述上のポイントが幾つかあります。まず、研究目標の設定では社会的な意義や価値を科学技術の言葉で書くということで、従来のイントロダクションをより精緻にしたものになります。次が最も大事な点で、研究目標を達成するためのシナリオを書くこと、つまりどういう要素技術を組み合わせたり開発したりしながらいくのかという、研究者としての夢の達成の道筋を研究者自らが開示していこうということです。要素技術選択の理由や、組み合わせにおける問題なども記します。著者と査読者との議論を載せている点については、大変面白いという反応をいただいています。第2種基礎研究をどのように論文として記述するか、査読者と著者との議論の公開を通じて進化させていきたいと思います。(60)−シンポジウム会場
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