Vol.1 No.3 2008
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研究論文:実用化をめざしての再生医療技術開発(大串)−172 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)時間が経過するごとに細胞数が増え、順調に細胞が増殖していることが分かる。このような細胞培養の微細領域を再現性をもって継時的に遠隔的に観察できる装置はこれまでになく、この装置の開発意義は大きい。また、本装置はこれらの観察結果を定期的に画像データとして記録することも可能である。以上、品質管理の精度の向上と作業員の負荷の低減の両方に貢献できる技術開発を行うことができた。より理想的には人手に頼らない細胞培養が望まれ、この点において、自動培養装置の開発も行っているが、紙面の関係上省略する。3.2 目的とする細胞の選択技術(細胞増殖の検証)さて、細胞の増殖過程は種々の再生医療において行われる最初のプロセスである。しかし、採取された細胞は種々雑多な細胞を含むのでその細胞集団より目的とする細胞の選択が必須である。例えば、我々は赤血球、白血球等の血球系細胞およびその他の細胞を含む新鮮骨髄から間葉系幹細胞を選択増殖することを行っている。具体的には培養皿に新鮮骨髄を播種し皿表面に接着する細胞を増殖・回収することで血球系の細胞を除去している。実際、このようにして回収された細胞集団は間葉系幹細胞に多く発現している種々のマーカー発現を呈する。しかし、この段階においても、種々の異なった増殖能をもつ細胞集団からなり均一ではない。すなわち、その時点で培養している間葉系幹細胞が予想通りに増殖するかの判断は困難である。我々はこれまでの臨床応用研究の過程で、培養中の間葉系幹細胞の核が薄くなり細胞形態が扁平になると、増殖速度が落ちることを経験してきている。そこで、この現象を定量的にとらえることにより、増殖能を予想することを考えた。具体的には、原子間力顕微鏡を用いて測定した間葉系幹細胞の厚みと細胞増殖活性の相関を検討し、増殖能の高い間葉系幹細胞は増殖能の低い細胞に比し、小型で細胞核部分での厚みが増加していることを見出した[3]。しかし、この原子間力顕微鏡は非常に高価であり、また操作も困難で計測にも時間がかかる。そこで、間葉系幹細胞の核にあたる部分の細胞厚みと光学顕微鏡像による細胞(平面)形態から、培養中の細胞増殖活性度の評価が可能かどうかを検討し、これらの指標を用いて細胞増殖活性を評価する技術ならびに増殖活性を測定する装置の開発をオリンパス株式会社と共同で行った。具体的には、光学顕微鏡による細胞厚み計測法として、培養容器に接着した間葉系幹細胞の位相像を取得し、画像解析ソフトによる画像処理により細胞厚みならびに細胞面積に対応した数値情報を取得した。図4に見られるように、本装置により、培養中の間葉系幹細胞が3次元で表示され、その厚みも自動的に測定できる。本装置を使用することにより培養中の細胞の増殖能が非侵襲的に予測されることとなり、用いる細胞の増殖の検証が可能となる。すなわち、より有効性を担保できうる細胞培養のできる技術開発に成功した。なお、本装置は既存の光学顕微鏡と連動することが可能であり、すでに各病院や研究室に設置されている顕微鏡の付属機器となりえる。このように、我々が開発した機器は、コストパーフォマンスにすぐれ、将来汎用性をもって各所で使用されることが期待される。3.3 細胞の分化の検証(生体材料と組み合わせる場合は材料上での分化の検証)我々は再生医療技術開発の中で、特に骨再生に関する技術開発を行ってきた。具体的には細胞培養により間葉系幹細胞を骨形成能力のある骨芽細胞へと細胞分化させ、その骨芽細胞による骨基質を種々生体材料上で形成する(再生培養骨)[4][5]という手法を用いての骨再生である。この再生培養骨の作製には種々の生体材料が用いられる。特に、細胞を保持する多孔体の構造をもつ材料が有用である。しかし、その生体材料が果たして細胞を効率良く保持でき、さらに生体内で新生骨形成能を有するかの評価が必要である。そのため、再生培養骨に使用される生体材料の性状、物性と間葉系細胞の活性の比較検討を行い、生体内で骨新生を評価する手法の確立を目指した。また、この評価法を標準化すべく、細胞のソース(この場合はラット大腿骨骨髄)を一定とし、手順も一定にするべく検討を行っている。具体的な手順を述べると、7週齢ラットの骨髄をフラスコ内で培養して間葉系幹細胞を増殖させ、細胞濃度が1×106 cell/mlになるように調整する。使用する多孔体材料を培養プレートに並べ、調整した細胞懸濁液にて浸漬する。骨分化誘導培地を用いて、さらに2週間培養する。培養終了後骨分化した細胞(骨芽細胞)の検出はアルカリフォスファターゼ染色によった。図5上図に見られるように、2種類(3)−コンデンサ光源細胞エッジを検出し細胞平面形態をトレース細胞厚みと細胞増殖活性との相関検証Z軸にスキャンし取得した複数枚の画像データから細胞厚み分布を計算オリンパス株式会社増殖活性計測装置の開発サンプル(培養容器)装置の構成(倒立型光学顕微鏡+画像処理部)産業技術総合研究所細胞核細胞核カメラ電動ステージZ軸図4 細胞厚み計測装置開発(細胞増殖活性計測評価技術と計測装置開発)

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