Vol.1 No.3 2008
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研究論文:製造の全行程を考慮した資源及びエネルギー利用の合理化指針(北ほか)−217 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)(48)−・鉄使用時:126(MJ/本)×14(本)=1764 MJ・窒化ケイ素使用時:229(MJ/本)×1(本)=229 MJ 全ての過程を通してみると、投入されるエクセルギーは、鉄、窒化ケイ素使用時にそれぞれ130999 GJ、130637 GJ、また排出されるエクセルギーは同じく5417 GJ、5055 GJとなり、窒化ケイ素を使用することにより鉄に比べて投入・排出されるエクセルギーは362 GJ低減できることが判った。 以上の検討結果から、窒化ケイ素製チューブは製造過程において1本当たりでみると、約7倍ものエクセルギーを消費するが、保存性の高さから交換頻度が減り、効率の高い構造の炉が実現し、その結果消費電力が小さくできるために、製造、運用、廃棄のライフサイクルを通じた総量ではエクセルギーの消費量が鉄に比べて小さくなっていることが明らかとなった。3.5 合理化の検討 まず、現状のシステムを前提として、セラミックス、鉄の各部材を使用した場合それぞれの合理化の指針を示し、次に鋳造システムの合理化の現状や方向性をまとめた。3.5.1鉄部材 経済性に優れた鉄部材はヒーターチューブの主流である。鉄部材を使うことを前提とした場合には、寿命を延ばすために溶けたアルミニウムに侵食され難い材料、あるいはコーティング技術の開発が必須である。またリサイクル性も鉄の優れた点であり、その効率を高めることも重要である。3.5.2セラミックス部材 セラミックス製造の合理化をはかるには前述した通り、全工程の中で特に消費の大きい造粒と焼成工程を中心とした効率向上が不可欠である。こうした改善は環境負荷低減と同時に、経済性において優位な鉄部材への対抗手段としての意味合いが強い。①造粒 鉄鋼をはじめ金属のプロセスが、高温化することで原料を溶融させ、液体自身のもつ拡散能力により混合や反応を生じやすくしているのに対して、セラミックスでは重力場において拡散能力のない固体粉末を使用している。そのため混合時には固体粒子間に最終製品に残らない水やバインダーを介在させ、それらを除去するため更にエネルギーを要するという、本質的に非効率となる要素を含んだプロセスである。 水を介在させると粒子間距離が小さくでき、混合が容易になるが、後工程の乾燥造粒の工程ではスラリー中の水分を揮発させるのに多量の潜熱を消費することになる。投入されたエネルギーは水分に熱として伝わり、揮発し、水蒸気としてエントロピーとともに系外に排出されている。したがって、造粒時のエクセルギー消費を抑えるには解こう材の選定や粒度配合の調整も含めた水分量の低減が必要であるが、その場合、前工程である混合の時間が増加することも考えられる。造粒工程でのエクセルギー消費を低減するには、前後の工程への影響を考えた水分量の最適化が必要である。 また造粒にはLPGを燃料として使用している。LPGを使用した場合、投入されたエクセルギーはスラリーの乾燥・造粒以外に、燃焼に伴い不可避的に水や二酸化炭素を生成することになり、その系外への排出にもエクセルギーが消費されることになる。LPGに換えて電力を使用すると見かけ上、投入エクセルギーは低減できる。その場合、工場内でのエクセルギー消費は低減されても、実際には外界(発電所)でエクセルギーが消費されることになる。今回、造粒工程でLPGを使用したのはコストが優先されたためと考えられる。②焼成 図11はプロセスの合理化に向けて、原料、製品、ならびに投入エクセルギーの関係を整理した概念図である。参照種(エクセルギー=0)と原料とは、化学エクセルギー、および表面エネルギーに由来するエクセルギーがあり、さらに原料と製品(焼結体)とは、表面・界面に由来、および配置に由来するエクセルギーの違いがあると仮定をおいた。 窒化ケイ素のような共有結合性の高い安定な物質では、特に活性化エネルギーの障壁に相当するエクセルギーに加えて、さらに炉の運転や炉材の加熱に多大なエクセルギーを必要とする。これらは不可避的に廃エクセルギーとなり、廃熱回収の検討を行うことになる。 エクセルギー消費を低減するには、低エクセルギー原料を使用し、固体の有するエネルギーを利用して投入と排出を小さくすることができる。窒化ケイ素の化学エクセルギーは、1877 kJ/molと高い。さらに窒化ケイ素粉末はケイ素の窒化、得られた窒化ケイ素の焼成という分離された工程をとり、それぞれの工程で廃熱がある。 一方、ケイ素の化学エクセルギーは851 kJ/molと算出され、窒化ケイ素の約半分である。エクセルギー消費を低減するには、ケイ素から窒化ケイ素への転化、その後の焼結をひとつの工程で行う事は有効である。このプロセスは既知であるが、窒化過程での発熱の制御が困難であることや、ケイ素自体活性であるため、水を媒体にした混合が困難であるといった理由で普及するにはいたっていない。今後、実用的なプロセスにするには、水を媒体として短時間で混合し、粗いケイ素粒子を使用して低温で窒化できる触媒の開発が必要である。その他、効率を向上させるには乾燥炉や焼成炉の大きさを大きくして単位時間あたりの生産量を増
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