Vol.1 No.3 2008
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研究論文:製造の全行程を考慮した資源及びエネルギー利用の合理化指針(北ほか)−216 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)(47)− 鉄のエクセルギーは6.6 MJ/kg(=368 KJ/mol)であり、製品の全重量が19 kgであるから、溶損が進行してDiに達したところで廃棄されるとすると、126 MJ/本が消費されることになる。鉄製のヒーターチューブを半年に1回交換するのに対して、窒化ケイ素は安定で反応し難く、7年後に炉の寿命と合わせて交換、廃棄される。7年間のエクセルギーの消費の経時変化を図9に示す。またこの間、廃棄に伴い消費されたエクセルギーは次式の通りである。・鉄使用時:126 ( MJ/本 )×14( 本 ) = 1764 MJ・窒化ケイ素使用時:229 ( MJ/本 )×1( 本 ) = 229 MJ 鉄製ヒーターチューブを使用した場合、溶損と廃棄を繰り返し、エクセルギーの消費が階段状に増大しているのに対して、セラミックスでは7年間ほとんど消費はなく、炉の寿命と同時にエクセルギー値(229 MJ)が排出されたことになる。なお、セラミックス使用時、鉄に比べ不純物の混入機会が少なくクリーンな溶湯が得やすいことが期待され、これもセラミックスの価値である。②ランニング(a) 溶解保持炉 鉄製ヒーターチューブを使用した垂直浸せき型では、運転時に9.4 kW、休止時には4.0 kWを要するのに対して、窒化ケイ素を用いた水平浸せき型の場合には、熱効率が改善され、運転時並びに休止時における消費電力はそれぞれ6.8 kW、3.8 kWとなる。1日のうち60 %運転(40 %休止)するとして、年間で360日稼動させたとすると7年間の総消費電力、すなわち投入エクセルギーはそれぞれ以下の通りである。・鉄使用時:(9.4×0.6×24+4.0×0.4×24)×360×7×3.6/1000=1576 GJ・窒化ケイ素使用時:(6.8×0.6×24+3.8×0.4×24)×360×7×3.6/1000=1219 GJ(b) ダイキャストマシン ダイキャストマシンの消費電力を20 kW、1日のうち60 %運転するとして、年間で360日稼動させたとすると7年間の総消費電力、すなわち投入エクセルギーはそれぞれ以下の通りである。・20×0.6×24×360×7×3.6/1000=2612 GJ3.4.2 製造・使用・廃棄 企業への聞き取りの結果、7年間の鋳造品の総製造量は約4300トンと試算された。なお、本稿では、原料ロスは考慮していない。したがって溶融アルミニウムの量も最終製品と同じく4300トンであり、そのエクセルギーは溶融した状態(温度700 ℃)で126802 GJ、また固化した状態で125582 GJと計算された。 図10はセラミックス及び鉄製のヒーターチューブの製造、及びそれらが溶解保持炉に使用され、7年間鋳造が行われた場合の投入・排出されるエクセルギー量とその流れを示した図である。上述した通り、炉を7年間運転した場合、鉄製チューブは溶損により14本を必要とする。したがって、その製造過程において投入、あるいは排出されるエクセルギーは下記の通りである。・投入:621(MJ/本)×14(本) =8694 MJ・排出:495(MJ/本)×14(本) =6930 MJ 一方、窒化ケイ素製チューブは同期間で1本のみであり、投入と排出に伴うエクセルギーは図7を参照して、それぞれ4175 MJ、3946 MJとなる。次に、使用時の溶損と廃棄に伴うエクセルギーは、下記の通りである。消費されたエクセルギーの量 (MJ) 溶損に伴うエクセルギー消費廃棄に伴うエクセルギー消費経過時間 (月) 鉄製チューブ(計14本)セラミックチューブ(1本)0122436486072840500200015001000排出 : 125582 GJA)セラミック使用時B)鉄使用時投入 : 130637 GJ投入 : 130999 GJ投入 : 4175 MJ排出 : 3946 MJセラ製造 溶解保持ダイキャスト電力 : 1219 GJ排出 : 1220 GJ溶融アルミ 126802 GJ排出 : 3832 GJ排出 :5055 GJ排出 : 125582 GJ電力 :2612 GJエンジン部品(4300トン)製品 : 125582 GJ製品 : 229 MJ溶融アルミ126802 GJ搬送集中溶解アルミインゴット燃料投入 : 8694 MJ排出 : 6930 MJ鉄製造溶解保持ダイキャスト電力 : 1576 GJ排出 : 1578 GJ溶融アルミ126802 GJ排出 : 3832 GJ排出 :5417 GJ電力 :2612 GJエンジン部品(4300トン)製品 : 125582 GJ製品 : 1764 MJ溶融アルミ126802 GJ図9 使用過程での溶損と廃棄に伴うエクセルギー消費量の比較(7年間の試算)図10 アルミニウム製エンジン部品鋳造におけるエクセルギーバランス(7年間)
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