Vol.1 No.3 2008
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研究論文:実用化をめざしての再生医療技術開発(大串)−171 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)での培養環境、すなわちヒト細胞を専用に培養する施設(CPC:Cell Processing Center)を必要とする(図1)。このCPC内で細胞の増殖・加工作業を行うが、通常病院で採取された細胞は目的とする細胞以外に種々雑多の細胞を含む集団であり、その中から目的とする細胞を選択し増殖させなければならない。このためには、細胞選択技術開発をふまえて、その選択された細胞が増殖するかの検証も必要となる。さらに増殖した細胞は分化という加工プロセスを経て再生される組織・臓器に特異的な細胞へ転換される。この分化した細胞が果たしてその特異的な細胞としての機能を有しているのかの検証も必要となる。また、これらの操作された細胞を患者にそのまま移植する場合もあるが、多く(例えば我々が精力的に行っている骨・関節再生)は、細胞と生体材料とを複合化し、この複合体(ハイブリッド)が移植される。この場合、用いられる生体材料の安全性ならびに細胞に対する有用性、例えば細胞分化を支持する材料かの検証も必要である。さらに、これらの検証プロセスの規格化あるいは標準化により、より多くの患者に適応が可能となり、社会に認知される治療技術となる。以上の点を整理すると次の4点に集約される。1)ヒト細胞培養施設(CPC)の環境整備2)目的とする細胞の選択と増殖能検証3)細胞の分化検証(生体材料の検証)4)再生医療にかかわる標準化3 再生医療の課題に対する我々の取り組み3.1 ヒト細胞培養施設の環境整備図1に培養工程の模式図を示す。病院内で患者から細胞(骨髄)が採取される。この細胞は我々の細胞培養施設(CPC)へ搬送され、細胞の増殖が行われる。増殖された細胞そのものを移植される場合もあるが、さらなる分化過程を経て目的とする臓器・組織の構成細胞へ分化し、この分化細胞が再度病院に搬送され、病院で患者に移植される。通常、この分化過程は種々の生体材料上で行うことが多い[1]。上述のように、これら細胞の増殖・分化の過程で細菌や真菌が混入する(コンタミネーション)と細胞も増えるが細菌も増えることになり、このような細胞は使用できない。また、細菌は通常の環境内に常在している。そこで、半導体工場のクリーンルームなどで使用されているHEPA(ヘパ)フィルターで微粒子を除去した空気をCPC内に送り込み、滅菌したキャビネットの中で細胞培養操作を行う。このように、ある程度物理的にCPC内に無菌環境域をつくることは可能であるが、我々ヒトの体内には種々の雑菌が内在していて、外部からでなくヒト(作業者)そのものが感染源となりうる。しかし、このCPC内における細胞の増殖・加工というプロセスには作業者が必要である。また、このようなプロセス以外にも、例えば細胞が予定通り増殖・分化しているかの確認のために、CPC内での顕微鏡を用いての細胞観察も必須である。このCPC内へのヒトの出入りを少なくするため、我々は三洋電機株式会社と一緒に細胞自動観察装置を開発した[2]。図2に見られるように、本装置を用いることで、LANを介した遠隔地から、ユーザが指定する任意の培養容器の任意の位置の画像を観察することができる。すなわち、CPC内に立ち入ることなく細胞の観察が可能であり、無菌環境を保つことができる。さらに、培養工程は厳重な品質管理手順の下に行われているが、培養細胞のデータを記録する作業も作業者の負担になっている。図3に本装置によって観察された細胞の24時間ごとの画像を示す。すべて、同一部位(定点)を観察している。(2)−観察室事務室他施設(ヒト細胞培養施設)CPCクリーンルーム自動観察装置管理室サーバ三洋電機開発LANヒト細胞、24時間毎定点観察図2 ヒト培養施設の環境整備(細胞自動観察装置開発)図3 細胞自動観察装置による定点観察(細胞観察機能付自動搬送インキュベータ)

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