Vol.1 No.3 2008
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研究論文−212 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)1 はじめに 原材料を加工して有用な製品を得る「製造」とは、自然界に存在する天然資源を有用な形態の物質やエネルギーに変換する一方で、無用な物質やエネルギーを環境に排出するシステムである。製造の背後には、採掘に始まり、移動、使用、廃棄といった多くの過程が連なっているとともに、製造そのものは個々の工程というサブシステムの集合体である。また、製品はやがて無用物となって廃棄され、長い時間を経て環境に還っていく。広く長い時空間の中で、製造に関わる全てのシステムは、相互に関連しながら各階層の周囲環境との間で物質やエネルギーのやり取りを行いつつ、環境にも影響を及ぼすこととなる(図1)。 1960年代の高度成長期、製造の志向は大量生産・大量消費であり、廃棄物は埋めてしまえば良いという時代であった。しかし環境と経済を両立させねばならない現代、個々のシステムからの消費や排出が無為に増大することが許されるはずはなく、かといって単なる最適・最小化やその統合だけでは問題は解決しない。個と総体が相反することは通常であり、一見小さな消費に見える製造システムであっても、背後に大きな消費と排出を伴い、総体ではかえって負荷が大きくなる場合もあれば、その逆もある。競争力を維持しつつ、総体として消費や排出を少なくするためには、個を起点として総体に広がる消費・排出の過程を知り、その大きさや意味を明らかにするとともに、それらを開発に戦略的に活かしていくことが必要である。今回、こうした評価と開発を双発的に進めるための基軸概念としてのエクセルギーについて検討することにした。エクセルギーは環境を基準としたGibbsの自由エネルギーであり、着目するシステムが環境と熱的に平衡状態になるまでに為すことのできる最大仕事と定義されている[1]-[3]。 エクセルギーは、生産活動を通じて一方的に消費されており、物質とエネルギーに共通した資源消費性を定量化するために相応しい指標である。またエクセルギーを使って、循環の中で投入・排出されるモノやエネルギーのエネルギー的価値や、回収する場合の理論的限界を明らかにすることができ、それらはプロセスの合理化の指針とすることができる。エクセルギーを指標として使用し、状態を評価することはもちろん重要なことであるが、それだけでは変革をもたらすことにならない。評価結果を開発と連携させながら、環境負荷や資源消費の緩和に合理的なハードやプロセスを、広い階層における負荷低減という新しい価値とともに示していくことが必要であると考える(図2)。 エクセルギーはこれまで主に熱の有効利用の尺度としてJISにも記載されており[4]、熱機関や建築の設計指針として使用されてきた[2],[5]-[7]。製造分野では鉄鋼や化学プロセスの合理化に利用されているが、異種分野の製造を統合した研究論文製造効率を高め、環境負荷を少なくするには、1つの過程を起点として全体に広がる資源やエネルギーの消費と排出の過程を知ることが必要である。本稿では、まず、アルミニウム溶湯中で使用されるヒーターチューブを鉄とセラミックスで作製した場合のエクセルギー解析とその比較を行い、次にアルミニウム鋳造の全工程についてのエクセルギー解析を行った。これらの結果から資源とエネルギーを有効に利用するための鋳造プロセスにおける合理化指針を得た。製造の全行程を考慮した資源及びエネルギー利用の合理化指針北 英紀*、日向 秀樹、近藤 直樹産業技術総合研究所 先進製造プロセス研究部門 〒463-8560 名古屋市守山区下志段味穴ヶ洞2266-98 産総研中部センター*E-mail:hideki-kita@aist.go.jp(43)−製造宇宙環境地球環境国・地域・環境工場環境排出投入投入投入排出排出排出排出排出投入投入製造投入使用廃棄輸送採掘終末工程n工程3工程2工程1図1 製造システムと環境の関わりー アルミニウム鋳造工程のエクセルギー解析 ー
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