Vol.1 No.3 2008
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研究論文:水に代わる密度標準の確立(藤井)−211 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)評価することは重要ではなく、その密度安定性を計測で保証できれば十分です。しかし、アボガドロ定数を決める場合には、不純物が密度や格子定数に与える影響を補正し、点欠陥や空孔などの濃度を定量化して、単位格子に含まれる平均原子数を正確に評価することが不可欠となります。通常の機械的除去方法によって球体を研磨すると表面付近に結晶欠陥が混入し、アボガドロ定数を正確に決めることが困難になります。このため、CSIROでは研磨の最終段階で化学的除去方法を取り入れた研磨方法(mechano-chemical polishing)を採用し、結晶に与えるダメージが最小とするような工夫を加えました。このような研磨を行うことによって、球体としての幾何学的精度だけではなく、結晶としての完全性も保証されるような球体が得られるようになりました。議論2 専門用語について質問(村山 宣光、田中 充)「相対合成標準不確かさ」、「SI単位の定義にトレーサブルな標準」について、定義や考え方を説明することにより、他分野の読者の理解が深まると思います。回答(藤井 賢一)謝辞の後に「用語説明」を加え、相対合成標準不確かさやトレーサビリティなどについて説明しました。議論3 科学的ニーズについて質問(田中 充)「2.2科学的ニーズ」 基礎物理定数の必要性として記載されているのは必ずしも科学的ニーズを網羅していないので、他の実例も挙げるのが良いと思います。「RK(あるいはα)を通じた理論の検証」などについても言及すべきではないでしょうか。回答(藤井 賢一)アボガドロ定数を測定する科学的ニーズとして、交流ジョセフソン効果や量子ホール効果などに用いられている理論の検証も挙げられることを2.2節に加筆しました。議論4 本格研究を構成する第1種基礎研究として位置づけるべき研究課題について質問(田中 充)単結晶によるアボガドロ定数決定の研究が、出発点として記載されています。むしろ、球の体積測定技術を第1種基礎研究としたほうがわかりやすいのではないでしょうか。科学的アウトプットも本格研究の目標に入れているので、単結晶によるアボガドロ定数決定の研究からスタートすると分かりにくいと思います。回答(藤井 賢一)第2種基礎研究のためのシナリオについてですが、球体の体積測定技術を高精度化するための研究を開始した1984年頃は、当時の計量研究所で行っていた水の密度の絶対測定のために石英球体の体積測定が必要だったということが挙げられます。しかし、この研究に必要とされる体積測定精度は7桁程度であったため、更に高い精度で体積を求める必要性が生じた理由はやはりアボガドロ定数の高精度化にあったと言えるでしょう。密度標準に不可欠な体積測定技術の開発を第1種基礎研究として捉らえることもできますが、体積測定精度を8桁まで向上させるに至ったきっかけは1987年にCSIROで開発されたシリコン球研磨技術であり、この開発もやはりアボガドロ定数の高精度化を意図したものであったと理解しています。議論5 社会や産業での製品化研究の記述について質問(田中 充)登録校正事業者への指導、認定審査への貢献、認定技術基準の作成など著者は成果普及活動に大きな貢献がありました。アルコール表などについても、産総研の告示や国税庁の通達の関係などについても述べるべきでしょう。また、CCM密度作業部会などの国際活動も追記されるほうが良いでしょう。回答(藤井 賢一)4章では我が国の密度標準の国際的同等性を検証するために筆者らが世界で最初に密度のCIPM基幹比較を実施し、CIPMの質量関連量諮問委員会(CCM)密度作業部会(WGD)の活動に貢献していることなどを加筆しました。5章「密度のトレーサビリティ体系の確立と社会への貢献」の部分ですが、登録校正事業者への技術指導、技術アドバイザーとしてのJCSS認定審査への貢献、JCSS認定技術基準の作成などにも貢献したことなどを加筆しました。特に、これらについては多くの時間を要した部分であり、トレーサブルな計測を行うに当たってのキーポイントを校正事業の関係者あるいは技術者に正しく理解して頂けるよう度重なる説明と打合せを実施しました。また、校正事業者との交流を通じてユーザーが求めている技術や情報が何なのかを知る機会が得られたことも貴重であり、産総研が社会貢献を果たす上で重要なプロセスであると考えています。(42)−

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