Vol.1 No.3 2008
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研究論文:水に代わる密度標準の確立(藤井)−207 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)(38)−量諮問委員会(CCM)の密度作業部会(WGD)で行うべき基幹比較(key comparison)について調べるために、各国の計量標準研究機関へアンケートを配布し、各国で保有している密度標準の現状と密度の校正方法について調査した。その結果、単結晶シリコン球体とそのための光波干渉計を保有し、産総研のように密度の絶対値の基準を保持している計量標準研究機関は極めて少ないが、既に多くの国において水ではなくシリコン単結晶などの固体密度標準に基づいてトレーサビリティの構築を開始していることが判明した。そこで、NMIJが幹事所(pilot laboratory)となり、CIPMが主催する密度の基幹比較を世界で最初に実施した。この基幹比較では各国の密度標準の国際同等性を評価するためにNMIJの単結晶シリコン球体を2001年から2002年にかけて参加国に輸送し、各参加国の液中ひょう量法によってその密度を測定し値を比較した。 NMIJを含む8ヶ国の計量標準研究機関での測定結果を図6に示した。NMIJの値は最も不確かさが小さく、他の参加国の値とも不確かさの範囲内で整合している。これらの値の重み付け平均から求められた参照値(reference value)はSIの定義にトレーサブルな密度の値として最も信頼性が高い。NMIJの値はこの参照値とも良く一致する。これにより我が国における密度の絶対測定技術と比較測定技術の信頼性の高さが検証された。 密度標準液についてもCIPMが主催する密度の基幹比較CCM.D-K2が2005年までに実施された。NMIJの校正結果はこの基幹比較においても国際同等性が検証されている。5 密度のトレーサビリティ体系の確立と社会への貢献 産総研ではJCSSによる密度標準供給を開始するために2000年頃からJCSS認定機関となる製品評価技術基盤機構との打合せを開始し、ISO/IEC 17025規格に基づいて密度の校正事業を実施するのに当たって必要となる技術的要求事項適用指針の策定を開始した。この指針は特定標準器となる単結晶シリコン球体へのトレーサビリティの確保の方法や校正の頻度、浮ひょうや密度標準液、振動式密度計の校正方法などを規定するためのものであり、候補となる複数の校正事業者との共同作業として検討を加えた。策定に当たっては登録校正事業者が構築する校正システムにできるだけ多くの自由度を与えながら、校正の不確かさを正確に評価することができるようにし、将来においても密度の校正事業を多様な形態で発展させることができるように配慮した。密度の校正事業のための最初の技術的適用指針が完成した2001年からは、JCSS登録校正事業者となるための申請が幾つかの校正事業者からあり、産総研関係者は技術アドバイザーとして製品評価技術基盤機構が実施する認定審査に協力した。 密度の絶対測定技術と比較測定技術によって構築したトレーサビリティ体系を図7に示した。密度が絶対測定された単結晶シリコン球体S4、S5をトレーサビリティの頂点(特定標準器)とし、これに連鎖して液中ひょう量法で校正されたシリコン単結晶(図3参照)が登録校正事業者の最上位の標準器(特定二次標準器)として用いられている。JCSSではこの特定二次標準器を基準としてISO/IEC 17025規格に適合した登録校正事業者が浮ひょう、密度標準液、振動式密度計などユーザーの計測器を校正している。 2001年から開始したJCSSによる密度の標準供給件数は順調に増加し、2007年までの実績として年間約6000件の校正証明書がユーザーの密度計測器のために発行されている。特に酒類のアルコール濃度計測に関しては従来は「振動式密度計によるアルコール分の測定」は「国税庁所定分析法とは異なる測定方法で合理的かつ正確であると認め物理量 単位 球体S4 球体S5 相対合成標準 不確かさuc,r/10-6体積 cm3 429.601242 429.615 387 0.119質量 g 1000.578 619 1000.612 019 0.016密度 kg•m-3 2329.086 89 2329.087 95 0.120表2 20 ℃、101.325 kPaにおける特定標準器S4、S5の体積、質量、密度の絶対値図6 CIPMが主催する密度の基幹比較CCM.D-K1の測定結果。持ち回り標準器として1 kgの単結晶シリコン球体を参加国の計量標準研究機関に輸送し、各参加機関の固体密度標準を基準とした液中ひょう量装置により持ち回り標準器の密度を測定した。エラーバーは拡張不確かさ(k=2)を表す。NMIJ:産総研計量標準総合センター。PTB:ドイツ、IMGC:イタリア(現在のINRIM)、KRISS:韓国、METAS:スイス、NRC:カナダ、CEM:スペイン、CENAM:メキシコの計量標準研究機関。Reference value(参照値)はこれら全ての測定結果の重み付け平均値を表す。6420-2-4-6NMIJPTBIMGCKRISSMETASNRCCEMCENAMReference ValueRelative density defference in 10-6
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