Vol.1 No.3 2008
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研究論文:水に代わる密度標準の確立(藤井)−206 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)が配置されている。この液中ひょう量装置は、JCSSにおいて密度の特定二次標準器として用いられるシリコン単結晶の他に分銅、ガラス、半導体結晶、貴金属など任意の固体材料の密度校正にも用いられている。液中ひょう量装置と密度校正されたシリコン単結晶を図3に示した。 3.3.2 衡量法による浮ひょう校正 図4に衡量法による浮ひょうの目盛校正の原理を示した。浮ひょうが作業液体から受ける浮力を電子天びんで測定することにより浮ひょうの棹に付された目盛を校正することができる[33]。従来の衡量法においては、水の密度が基準として用いられていたが、水の表面張力は大きく表面の汚染に敏感なため、小さい不確かさで浮ひょうの目盛りを校正することは困難だった。現在では水の代わりにトリデカンが作業液体として用いられている。このため、密度が校正されたシリコン単結晶の円環(特定二次標準器)によってトリデカンの密度を液中ひょう量法で校正する方法が用いられている。この方法により計量法における基準器検査やJCSSにおける浮ひょうの目盛校正が実施されている。3.3.3 磁気浮上式密度計による密度標準液の校正 振動式密度計[34]は感度の高い密度測定装置として石油化学業界、アルコール産業、醸造産業、食品産業、医療検査等の多くの分野で用いられている。通常は水と空気のみを密度標準物質として校正されるため、標準物質の密度と異なる領域で用いた場合の不確かさは大きい。このため、密度が約 0.5 g/cm3から 2.0 g/cm3までの領域において、密度の異なる幾つかの密度標準液を供給することにより、振動式密度計の信頼性とトレーサビリティを確保することができる。 図5に密度標準液を校正するために産総研で開発した磁気浮上式密度計を示した[35]。この密度計は図2に示した液中ひょう量装置と同じ原理で流体の密度を測定するものであるが、磁気浮上による非接触の懸垂機構を用いているため、メニスカスにおける表面張力の影響を受けることなく、加圧流体や蒸気圧力の高い液体の密度も測定することができる。 液中ひょう量装置によって密度が校正されたシリコン単結晶をシンカーとして用いることにより、広い温度・圧力範囲においてトレーサブルな密度標準液を供給することができる。この方法で校正された密度標準液の相対標準不確かさは 7×10−6である。産総研での測定結果は、JCSSにおける登録校正事業者の測定結果が正しいことを検証するための技能試験を実施する際の参照値として用いられている。4 校正の不確かさと国際同等性の検証 我が国では3.2節で述べたように固体密度の絶対測定によって単結晶シリコン球体の密度を決定し、これを計量法における密度の特定標準器に指定している。この特定標準器の値と不確かさを表2に示した。これらは2005年までに当所で実施した密度の絶対測定結果に基づくものであり、密度の相対合成標準不確かさは 1.2×10−7である。 我が国の固体密度標準の絶対値とその不確かさの妥当性を検証し、その国際同等性を確認することは、計量標準における国際相互承認(MRA)を進展させ、我が国の密度計測器の信頼性を示す上で重要な課題である。このため筆者は2000年頃から国際度量衡委員会(CIPM)質量関連(37)−図4 浮ひょうの目盛校正に用いられるシリコン単結晶図5 磁気浮上式密度計精密電子天びんへトリデカン浮ひょうシリコン単結晶液体恒温槽荷重交換精密電子天びんへ試料出口電磁石永久磁石シリコン単結晶荷重交換機構浮上位置検出センサー試料入口
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