Vol.1 No.3 2008
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研究論文:水に代わる密度標準の確立(藤井)−205 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)面は通常3~5 nmの酸化膜で覆われているので表面分析技術の導入が必要である。そのために従来はシリコン球体表面のエリプソメトリーを行ってきたが、近年ではX線反射率法(XRR)やX線光電子分光法(XPS)などの表面分析技術を併用し、より正確で信頼性の高い表面計測が行われている。シリコン単結晶にも一定の熱膨張係数があるので、直径測定の際の球体温度を1 mK程度の不確かさで測定することが求められる。そのため最近では真空中における物体の温度をより一定に保つためのアクティブな放射シールドを導入するなどの改良が加えられている。 シリコン単結晶の密度を絶対測定するための要素技術を表1に列挙した。SI単位の定義にトレーサブルな固体密度標準を確立するためには光周波数標準、温度標準、表面分析技術、質量標準など多くの計測標準が必要である。これらの標準を組み合わせて新たな密度標準を構築した。3.3 密度比較測定技術の開発 トレーサブルな浮ひょう、密度標準液、振動式密度計などをユーザーに供給するためには、特定標準器である単結晶シリコン球体の密度を基準として密度を比較計測する技術が必要である。このために産総研では以下に示す液中ひょう量装置、浮ひょう校正装置、磁気式密度計などの開発を行った。3.3.1 液中ひょう量法による固体材料の密度校正 シリコン球体の密度を基準として固体材料の密度を校正するために開発した液中ひょう量装置の構造を図2に示した[32]。作業液体には表面張力が小さく、密度が安定なトリデカン(n−C13H28)が用いられている。荷重交換装置を用いて単結晶シリコン球体と測定対象物である固体材料とを交互に液中ひょう量することにより、これらの密度差を 4×10−8の相対標準不確かさで校正することができる。温度分布や液体の自重による密度勾配の影響を補正するために、垂直方向に配置した2個の単結晶シリコン球体の中間に固体材料(36)−表1 シリコン単結晶の密度の絶対測定のために開発した要素技術図2 液中ひょう量装置の構造図3 液中ひょう量装置(左)と特定二次標準器として密度校正されたシリコン単結晶(右)。球体の他に円柱、円環など様々な形状のシリコン単結晶が特定二次標準器として用いられている。要素技術開発目標目標達成のために開発した要素技術光周波数の計測・制御周波数固定のガスレーザによる直径のナノメートル計測(広帯域での光周波数制御が実用的に困難だった頃の開発目標)エタロンの機械的走査(mechanical scanning)による干渉フリンジの変調・解析技術:3 nmの直径測定精度を実現(1994年)レーザダイオードの導入による光源周波数の広帯域制御と直径の完全自動計測化20 GHz帯域での光源周波数計測制御位相シフト法(phase shifting method)による直径の完全自動計測:直径測定精度を1 nmに改良(2007年)サブナノメートルの精度での直径測定ダークフリンジ法による干渉フリンジ計測:量子ノイズによる限界まで性能を向上(開発中)表面分析シリコン球体表面の酸化膜の厚さの評価球体表面の分光エリプソメトリー(~1996年)X線反射率法(XRR)とX線光電子分光法(XPS)の併用(2007年)温度計測・制御真空中におけるシリコン球体の温度の精密測定恒温水循環による真空容器の温度制御:ITS-90に基づく温度測定と熱電対による温度分布の評価により温度測定精度5 mKを達成(1994年)放射シールドの導入とそのアクティブな温度制御により温度測定精度1 mKを達成(2008年)球体の方位制御真空中での多方位からの直径測定真空中における球体の方位自動制御メカニズムの開発とそのコンピュータ制御(1994年)体積の誘導不完全な球体の体積の決定幾何学的考察による体積誘導方法の確立質量計測真空中におけるシリコン球体の質量評価空気浮力精密補正のためのシンカーシステムの導入シリコン球体表面での吸着係数の評価
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