Vol.1 No.3 2008
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研究論文:フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発(鎌田ほか)−200 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)スタイルとして検討提示していくべきことではないかと考えます。質問(立石 裕)議論1の観点から、表1と表2を見ると、よく概念が整理されていることが分かりましたが、本文を含めて、産総研(鎌田グループ)のポジショニングについての記述がないのが気になりました。これらの表の中に産総研の戦略を具体的に記載するのは難しいでしょうか?回答(鎌田 俊英)公開論文という性格上、あまりあくの強い形で自己主張するのをはばかり、“自分が”というトーンは意識的に少し落としていたところはあります。ただ、実際には本論文の分析主張自体が産総研の立ち位置、我々の狙い(技術コンセプトの先導、リスクシェアなど)を強く主張しているものとなっております。ご指摘に従い、修正文においては、主語(我々は、)を意識的に追加しました。議論4 技術開発の展開の基本的な考え方について質問(小林 直人)材料・プロセス・素子を絶えずセットで捉える考え方は、極めて重要であると思います。また補完すべき他の異種技術との統合を行う面展開の考え方や連続展開の考え方も非常に大切であると思います。これらの考え方は、産業技術開発一般に共通して言えることだとも思いますが、今回の「フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術」の開発研究に特有の課題として他に何か特徴的なことがあるでしょうか。回答(鎌田 俊英)「フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術」がカバーしようとしている情報端末デバイス技術のように、その技術仕様の多くをエンドユーザー(使用者)が決めるような技術では、技術は少量多品種提供への対応ということになることが多いため、技術開発スタイルは、統一指標をもたないノンリニアモデル型となりがちです。このような場合、その技術コンセプトが、一要素を分担する製造者のビジネスコンセプトとマッチングがとれないというようなことだけでも、材料から素子、モジュールまでを一貫させることができなくなってしまい、結果としてその技術コンセプト全体が産業として花咲かせることができなくなってしまうということが数多く生じてしまいます。すなわち、一連の要素技術の中で、「技術抜け」ができてしまい、そこが律速となって技術開花しないというケースが極めて多いというのが特徴となるということです。しかも、その「技術抜け」が技術的困難さで生じるのではなく、ビジネス背景などから生じてしまうことが多いため、いくら待ってもプレイヤーが現われないという状況になっています。本文で記載した「面展開」という概念は、自分の守備位置を確認するために、全体像を把握する必要があるということを表現しているのではなく、「技術抜け」を生じさせないために全体像を把握し、「技術抜け」ができているところこそリスクシェアの役割を果すプレイヤーが取り組むべき課題が発生しているということを表現しようとしたものです。また、「連続展開」ということを敢えて強調したのは、少量多品種適用にかかる技術に共通の課題となっている「技術開発が単一ターゲット適用に見えてしまい、技術の奥深さが見えなくなってしまう」という問題点を解消することを意図しました。すなわち、一見単一技術適用に見える技術であっても、実は横展開ができるという具体的事例を示すことで技術の奥深さを示し、技術開発のプレイヤーとしての参入障壁を低くしてやる効果を発揮させることが必要であるということを主張しています。質問(小林 直人)今回の第2種基礎研究としての構成的方法は、4.4節「技術の効果・先駆性は、ものとして見せる。」に詳しく記されていると理解しました。特に「多元酸化法」、「三軸分配加圧アニール法」では、それらが「抜け技術」を補完する「脇役技術」と言う表現がありますが、しかしこれがないと技術として完成しないわけですので、極めてエッセンシャルな技術ではないかと思います。構成方法としては、完成しつつある部分に最後のピースを入れるような「はめ込み型」とも言えるかもしれません。そうであるとしたらそのような役割を強調した表現(「脇役技術」と言う表現でなく)が必要な気がしますが、上記解釈も含めてどのように考えられますか?回答(鎌田 俊英)「脇役技術」というのは、少し後ろ向きな表現で、適切性に欠けると認識いたしました。ご指摘いただきましたとおり、実態としては、トータル設計のために不可欠な技術です。ここのところの表記を、「抜け技術の補完」→「抜け技術の充填」、「脇役技術」→「last piece technology」のように変えました。 議論5 個々の要素技術の見極めの戦略について質問(小林 直人)「著しく優れた技術があってもデバイスはできず、一部多少の性能が劣っている部分があったとしても、トータルとしての整合性が高ければ、効果的な技術となりうる。」との指摘がありましたが、これは極めて重要だと思います。仮に、これを最適整合デバイス(オプティマリー・コンシステント・デバイス)と名づけたとして、それを構成する個々の要素技術をどこまで許容するか、あるいはそのうちの幾つかについてさらなる高性能化を図るかは技術開発戦略によると思います。その見極め(どこでオプティマムと判断するか)をどのようにするかについてのアイデアがあればお聞かせください。回答(鎌田 俊英)技術は進歩に対して受け入れられるということを考慮すると、まず「最適整合」というのは時間の関数として捉える必要があると考えます。取りあえず、現状と明確な差別化ポイントが認識できるようであれば、その技術は受け入れられると思います。ただし、進歩の歩幅があまりにも大きすぎると逆に受け入れられなくなってしまいます。そのため、「最適整合」は必ず時間で刻むこと、その刻んだ歩幅の中では明確な差別化ポイントが認識できるようにすることというのが、技術見極めを行なうための最初の指針かと思います。その上で見極めをどのようにするかは、差別化ポイントをどのように認識できるようにするかということになりますので、これに対して敢えて言うならば、開発者は可能な限り社会に出て、一市民となった時の感覚(社会性)を磨くことが重要なのではないでしょうか。繰り返し述べることになりますが、当該技術分野においては、技術仕様は製造者によるところよりも、エンドユーザーによるところの方が圧倒的に高いということが特徴となっているため、技術オリエンテッドではなく、いかに社会性オリエンテッドにすることができるかが、重要な点になるのではないかと考えます。(31)−

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