Vol.1 No.3 2008
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研究論文:フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発(鎌田ほか)−199 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)ります。その社会的価値は、今日思うように進まない情報端末デバイス技術の裾野拡大の牽引というところにあります。したがって、その他の補完技術の詳細に触れることは、主論点をはずしてしまうこととなり、本論文で記載することはかえって逆効果と考えます。コメント(小林 直人)「フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術」の開発研究では、どのような有力な対抗すべき技術があるでしょうか。たとえば有機デバイスだけではなく無機半導体やガラス材料など異種材料・デバイスを使う場合と、同じ有機デバイスを使う中でも構成法やプロセスが違うものがあると思います。ある目標に向けた性能比較(ベンチマーク)が示されていると非常に分かりやすいと思います。全ての例示をする必要はありませんが、何か特徴的な例について行ってみてはいかがでしょうか。回答(鎌田 俊英)本文に追記いたしましたが、技術開発には技術指標を示し、そこに計画的に邁進するリニアモデル型研究開発と、最終イメージはあるものの技術指標をたてにくく計画的展開がしにくいノンリニアモデル型技術開発があり、ここでは後者のノンリニアモデル型技術開発をいかにして進めるかという視点での議論を投げかけているつもりです。ノンリニアモデル型は、その推進は概して特異的なひらめきに依存すると思われがちですが、実際には、全体マップを描き(全体の体系化を行い)その中で、いくつか尖っている部分を見出すという手法を用いれば、論理的・計画的技術開発が可能になるということを示してみようという趣旨です。したがって、例えば研究計画をたてるにしても、最初に有機材料とか無機材料とかの材料科学からのスタートにするのではなく、フレキシブルという物理量軸、溶解性という化学量軸等を用いて、その軸のもとに材料を体系化し、場面に応じて最適なものを逐次選択していくという手法ではないかと考えております。したがって、必要なことは一技術指標のもとにベンチマークを作成して一軸的な技術開発計画を立てるのではなく、マップを作成して、技術的にマッチングがとれる部分(複数存在する)を浮き彫りにし、そこを研ぎ澄ましていくような開発計画を立てるという手法が、技術分野にフィットしているということを表現したいということです。この理屈からすると、技術シーズから積み上げていくと、かえって技術展開エリアを狭めてしまうことになるかと思います。コメント(立石 裕)鎌田さんの回答を読んでから図1を見直してみたのですが、この図が私のmisleadの出発点なのかもしれません。中央幹線系 → 端末アクセス系 という構図の下にフレキシブルプリンタブルデバイス技術、という絵が配置されているため、私は無意識のうちに、「フレキシブルプリンタブルデバイス技術が、既存の端末デバイス技術を代替しようとするもの」として読んでしまいましたが、実はそうではなく、既存のデバイスと「端末機器」という意味では同じ階層にあるものの、「別方向への展開としてフレキシブルプリンタブルデバイス技術が存在する」、というように理解すべきなのでしょう。既存の技術が総じて言えば「汎用性のある、なんでもできる技術」としての性格を持つのに対し、フレキシブルプリンタブルデバイス技術は、「エンドユーザーのニーズに特化して単純化された機能の技術」としてとらえられるように思います。ただし、そのための製造技術が個々のデバイス毎に異なったものが必要だとすれば、とても産業としては成立しえないので、製造技術としては「汎用かつ異なったニーズへの対応が容易な自由度をもつもの」でなければ、裾野の拡大にはつながらないという点が、論文の主張のポイントになると思います。以上の私の理解が正しいとすれば、そのような意味合いを文章として入れ込んでいただくことは可能でしょうか?回答(鎌田 俊英)論文の主張点を汲み取っていただきましてありがとうございました。上記ご指摘いただきましたことが、まさに主張していきたい点です。本文の序章の段に、ご指摘いただきました点を意識して、少し追記しました。議論2 技術展開の方向性についてコメント(立石 裕)表1、表2に使われている「フェーズ」という表現には違和感があります。通常フェーズといえば、それは順次展開されていくものだと思いますが、ここで言われているフェーズはⅣ→Ⅲ→Ⅱ→Ⅰと進化してゆくような性質には見えません。むしろ「レベル」という感じに近いのではないでしょうか。回答(鎌田 俊英)ここで記述している「技術フェーズ」は、Ⅰ→Ⅱ→Ⅲ→Ⅳと発展していくものであり、その意味でフェーズという言葉は適切と考えます。「Ⅳ→Ⅲ→Ⅱ→Ⅰと進化するのではないか」いうご指摘は、現状の理解を誤っており、ここのところをご理解いただくことが、本論文では極めて重要なところです。情報端末機器など、より最終ユーザー(使用者)に近いところの技術は、より複雑な技術が後から開発されるという図式は必ずしも成り立ちません。使用者の要求と製造者の要求とがマッチしないと、産業技術として発展していかないためです。例えば、フェーズⅠは、統一規格のマスプロという性格が比較的強いことから、より製造者の意向が反映しやすい技術です。すなわち、技術提供者、生産者がともに容易に存在するために、産業技術としての市場展開は比較的速く行なわれます。しかし、フェーズⅣは完全に使用者よりの技術です。製造者にとっては、ビジネス利点がなかなか見出せないため、生産者・技術提供者として現われづらく、産業技術展開はなされにくいという性格を有しています。したがって、技術的難易度という指標ではなく、産業開花度というような指標からはフェーズⅠの技術よりは、はるかに遅れをとってしまいます。あえて言うならば、技術はフェーズⅠ→Ⅱ→Ⅲ→Ⅳの順に枝葉的に発展していくと見なすことができます。本論文では、このように技術オリエンテッドでは市場展開しにくい技術、されどそれを求めている人(使用者)が多いという技術を、いかにして発展させていくのかということに問題提起していくことが一つの重要な主張点となっています。議論3 産総研の果たすべき役割についてコメント(小林 直人)表1の展開のシナリオ、表2の技術開発のプレイヤーマップは、この分野特有のあり方について極めて示唆的でかつ独自性の高い指摘だと思います。将来的には、技術がProsumer Technologyを目指すとすると、開発者・技術ユーザー・エンドユーザーが密に意見交換する場(時間と空間)が重要だと思いますが、それを先導する何か良いアイデアがあればお聞かせ下さい。回答(鎌田 俊英) Prosumer Technologyは、言い換えると「自給自足」という概念であり、また視点を変えると究極のベンチャーという見方ができるかと思います。したがって、役割分担という考え方をはずしていかなければならないという方向となるため、始めに役割分担ありきで、分担された役割に基づいた相互意見交換を求めてしまうと、実は実現しにくくなってしまうように思います。実際に実現させるためには、自分がProsumer Technologyの実施者となるのだという意識を促すこと、そのための補助として①技術情報を提供する場を設けること、②モデルケースを提示し、手法の先導を行なうこと、③実際に実行するためのツールを提供するこということが必要と考えます。この中で、①や③はリスクシェアという視点から公的サービスとしての位置づけを検討すべきものではないかと考えます。また②は、セカンドジョブのような、新たな技術ライフスタイルを提示していくようなことかと思います。いずれも、産総研のような公的機関が産業技術社会の一つの(30)−
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