Vol.1 No.3 2008
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研究論文:フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発(鎌田ほか)−198 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)励賞受賞。フェーズⅠ、Ⅲ向け材料、プロセス技術の開発に取り組み、本論文では低温製造プロセスの開発部分を担当した。星野 聰(ほしの さとし)1993年3月東京工業大学大学院総合理工学研究科電子科学専攻修士課程修了。日本電信電話株式会社基礎研究所研究員、NEDOフェローを経て、2003年4月産業技術総合研究所入所。2001年東京工業大学博士(工学)。これまで、発光素子、センサー素子、そのネットワーク化などに関する開発研究に従事してきた。本論文では、フェーズⅡ、Ⅲ向けデバイス技術として三次元ナノポーラスデバイスを開発、またフェーズⅠ向けデバイス基礎科学解析を担当した。高田 徳幸(たかだ のりゆき)1995年3月九州大学大学院総合理工学研究科博士課程修了。1995年4月工業技術院物質工学工業技術研究所入所(現産業技術総合研究所)。これまで、有機ELや、メカノルミネッセンスなどの発光素子に関する研究に従事してきた。主として第1種基礎研究に取り組み、本論文では開発技術の基礎科学解析を担当した。査読者との議論 議論1 フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の位置づけについてコメント(立石 裕)本論文における研究目標は、表題の「フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発」に端的に表現されているとの理解が正しいとすると、この研究目標の持つ社会的価値の記述が不十分であると思います。具体的には、情報端末機器に要求される仕様―様々な使用感、どこでもデバイス、だれでもデバイス―と、フレキシブル・プリンタブルデバイスの概念の間にはギャップがあります。フレキシブル・プリンタブルデバイスは、あくまでも上記のような仕様を満たしうるオプションの一つであり、これがすべてではないはずです。他にも候補があるが、ある条件が加わった時に、フレキシブル・プリンタデバイスがベストチョイスになる、その条件(あるいは詳細仕様?)についての説明がないと、始めにフレキシブル・プリンタブルデバイスありきの議論になってしまいます。製造工程上の省エネルギー化の要請だけで説明するのは無理があります。どのようなニーズのために、なぜこのようなデバイスが必要なのか、あるいは効果的なのか、その説明が欠落しているように思います。この問題は図1に端的に現れています。中央の「多分岐化」でくくられた階層とフレキシブル・プリンタブルデバイスの間には、明らかにギャップがあります。この図だとフレキシブル・プリンタブルデバイスがすべてを解決するように見えますが、そう単純な話ではないだろうと思います。回答(鎌田 俊英)情報端末デバイス技術は、これまでローエンドターゲットなどと呼ばれ、あたかも技術的には、ハイテクを結集すればでき上がってしまう付属技術であるという印象を持たれることが多くありました。しかし、実際にはその感覚に反して当該技術フィールドは思いのほか開拓することができず、産業技術展開しうる技術がほとんどないという状況におかれてしまっています。これは、ひとえに技術要求と市場要求とのマッチングが取れないためで、技術指標のみからだけでは産業技術が開拓できないということを示しております。ご指摘いただいたような事項をそのまま受け止めてしまうと、結局はこの技術指標から積み上げるという悪循環サイクルの中に落ち込んでいってしまいます。そこで、このような状況を打破し、技術フィールドを開拓していくには、この問題を解決しうる象徴的な技術を掲げ、その旗のもとに技術牽引を図るというのが、一つの好適な手法です。本論文では、現状では最も好適な技術指標として捉えられている「フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発」というコンセプトを象徴的に用い、当該技術フィールドの裾野開拓をしようとしている技術戦略について記述してお執筆者略歴鎌田 俊英(かまた としひで)1990年3月京都大学大学院理学研究科後期博士課程修了。1992年4月工業技術院化学技術研究所入所(現産業技術総合研究所)これまで、有機材料を用いた光電子デバイスの開発に従事。NEDO「高効率有機デバイスの開発」事業では、プロジェクトリーダーを務める。2005年第11回東京テクノフォーラム21ゴールドメダル受賞、2006年第38回市村学術賞功績賞受賞。本論文では、ディスプレイの開発ならびに全体構想・戦略立てを担当した。吉田 学(よしだ まなぶ)1999年3月千葉大学大学院自然科学研究科物質科学専攻後期博士課程修了。2001年4月産業技術総合研究所入所。有機材料を用いた新規電子デバイスの開発を得意とし、これまでフェーズⅡ、Ⅲ向けのデバイスおよびプロセス技術の開発に従事してきた。2006年第38回市村学術賞功績賞受賞。本論文では三軸分配加圧アニール法およびトップ&ボトムコンタクト型トランジスタの開発部分を担当した。小笹 健仁(こざさ たけひと)1993年3月大阪大学大学院理学研究科修士課程修了。1993年4月工業技術院物質工学工業技術研究所入所(現産業技術総合研究所)。これまで、有機無機ハイブリット材料を用いた光学デバイスや電子デバイスの作製技術の開発に従事して来た。2006年第38回市村学術賞功績賞受賞。本論文では、フェーズⅠ向けプロセス技術の開発を担当し、多源光酸化法の開発等で貢献した。植村 聖(うえむら せい)2001年9月千葉大学大学院自然科学研究科高次物質科学専攻後期博士課程修了。NEDOフェローを経て、2003年4月産業技術総合研究所入所。これまで、バイオマテリアル、ソフトマテリアルを利用したデバイスの研究に従事してきた。2006年応用物理学会講演奨T.Kodzasa, S.Uemura, K.Suemori, M.Yoshida, S.Hoshino and T.Kamata : Development of SiO2 dielectric layer formed by low-temperature solution processing, Proc. 13th Inter. Display Workshops, (2) 881 (2006). M.Yoshida, S.Uemura, S.Hoshino, N.Takada, T. Kodzasa and T.Kamata : Electrode effects of organic thin-film transistor with top and bottom contact configuration, Jpn. J. Appl. Phys, 44(6), 3715 (2005). M.Kawasaki, S.Imazeki, S.Hirota, T.Arai, T.Shiba, M.Ando Y.Natsume, T.Minakata S.Uemura and T.Kamata : High mobility solution- processed organic thin-film transistor array for active-matrix color liquid crystal displays, J. Soc. Information Display, 16, 161 (2007).M.Kawasaki, S.Imazeki, M.Ando, Y.Sekiguti, S. Hirota, S.Uemura and T.Kamata : High-resolution full-color LCD driven by OTFTs using novel passivation Film, IEEE Trans. Elect. Dev., 55, 435 (2006). 鎌田俊英:有機TFT技術によるディスプレイの革新,月刊ディスプレイ,11, 1 (2005).鎌田俊英:有機エレクトロニクスを印刷で創る(1),日経エレクトロニクス,925, 131 (2006).S.Hoshino, M.Yoshida and T.Kamata : Organic semiconductor-based flexible thin-film water vapor sensors for real-time moniroting of plant transpiration, Sensor Letters, 6, (2008) in press.(受付日 2008.5.22,改訂受理日2008.9.3)[1][2][3][4][5][6][7]参考文献(29)−
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