Vol.1 No.3 2008
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研究論文:フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発(鎌田ほか)−196 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)(27)−術開発の取り組み方向へのリスクを軽減させるという役割を担うことを狙い、このような取り組みを行っていった。こうした狙いの実践をもう少し具体的な事例で紹介してみる。プリンタブルデバイス技術(トップ&ボトムコンタクト型トランジスタ技術)の横展開として開発した技術に、三次元ナノポーラスデバイスというのがある[7](図8)。液相プロセスの特徴の一つである壁面加工を有効に生かすべく設計したデバイス技術であり、これにより、多孔体の孔内を通過、あるいはそこに取り込まれる物質の高感度計測を可能にするデバイス(農業用センサー)を実現したというものである。これは、そもそもエンドユーザー(農業従事者)からの相談を受けて開発した技術である。農作物の生産管理用に、農業者が使いやすい高感度農業用センサーを開発して欲しいというものであった。これに対して、技術のセットを検討してみると、材料は入手可能、作製プロセスも既存技術で問題なし、システム開発者は既に存在、そしてもちろんユーザーもいる。唯一存在していなかったのがデバイス開発者である。すなわち、「技術抜け」が生じてしまっている状態であったわけである。この場合のデバイス開発は、経済活動をしているデバイス技術開発者にとっては、ほとんど収益の期待できない技術であることから、その開発に取り組む技術者が皆無であるという状況であった。それで、我々は公的機関の研究者として、開発に取り組むにはリスクが高い要素技術に対しては積極的に関与するという「リスクシェアの役割分担」の狙いで、この開発を引き受け、結果としてトータルでセットされる端末機器の開発を実現させた[6](図9)。この成果はさらにProsumer electronics実現の可能性に関して強いメッセージを発するのに有効な技術ともなった。すなわち、ターゲットとしたセンサーは、取り付ける作物によってその形状・仕様等を少しずつ変える必要がある。しかも、取り付け場所は1個1個異なる状態にある。さらに、その製造には過度の負担をかけてはならないという製品構想である。このような現場の多種多様な個別要求に応えられる情報端末デバイスを、現場ユーザー(農業試験場)と共同で開発することができたというメッセージを込めて発表した。いずれの試作機も、開発技術がセットアップした後でも十分機能するということを実演するということで技術の確からしさを示すとともに、開発技術により今まで見たこともないものが出来上がっていくというメッセージを込めたものとして技術の魅力点をアピールしていったという点が大きな意義を有していたと認識している(図10)。最終的に、試作品そのものが実用化に向けて企業で取り組まれるようになるかは定かではない。しかし、こうしたメッセージの発信は、少なくともこれらの開発技術がその後企業で実用化への検討が進められるようになってきていることに大きく貢献しているものと思われる。 5 今後の課題・展開上述してきたように、プリンタブルデバイス製造技術がカバーしようとする情報端末デバイス技術分野は、普及を促進すればするほど多分岐化されていき、要求技術仕様は多様になっていくという性格を帯びている。それをそのまま受け取って開発に着手してしまうと、モグラたたきのような開発スタイルとなってしまい、モグラの数だけ技術が並列表記されるようになるだけで、およそ戦略的・計画的技術開発などというものが展開できなくなってしまう。そこでこれらを計画的に取り扱えるようにする取り組みとして、今後の技術展開の仕方として技術開発の面展開ということと連続展開ということを特に重要視するようにしている。5.1 セット化の取り組みとそのタイミング今日産業技術として展開させていくためには、単一技術だけで技術コンセプトを達成することは極めて困難である。多くの場合、開発技術を補完し合う異種技術の展開が図9 農業用フレキシブル蒸散センサの開発印刷デバイス製造技術の特徴多孔性抵抗体外側層炭化水素鎖水分子の通り抜け内側層有機半導体電極電極曲面加工、 壁面加工誘電体(半導体)A図8 フレキシブルセンサーのための三次元ナノポーラスデバイスの開発
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