Vol.1 No.3 2008
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研究論文:フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発(鎌田ほか)−195 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)ではない場合がよくみかけられる。本論文で検討の対象となっている、「情報端末デバイス技術」などもその一例である。技術的なバリアが高すぎるためにジャンプアップ技術の出現を待つのではなく、技術プレイヤーがいないがためにそこが技術欠けとなってしまっていて、その状態をあたかもジャンプアップ技術の出現を待つかのように取り扱ってしまう場合である。このような場合には、本来技術整理により、きちんとした計画展開ができるように持ち込めるはずなのである。 4.4 技術の効果・先駆性は、ものとして見せるところで開発した技術は、例え単一技術であっても、それを関連技術ときちんと組み合わせて、技術アピールする試作品を作製して見せることが効果的である。すなわち、技術開発のセットが可能であるということを示し、技術コンセプトを先導していくことである。ただし、ここで注意すべきは、単に試作して機能を示すだけでなく、そこにメッセージを込めることが重要である。例えば筆者らの上記の開発例では、それぞれ固有のメッセージ付けを検討した。「多源光酸化法」はディスプレイ用印刷TFTとして仕上げることを検討した。この試作検討の初期段階では、有機TFT駆動液晶ディスプレイで、カラー動画表示を世界で初めて成功させたというものとなった[3−5](図6)。印刷形成TFT技術への期待が高まっていた時期であっただけに、世界中で大きな話題となる成果となった。この技術には、将来的に大面積の極薄壁掛けスクリーンテレビが作製可能になるというメッセージを込め、技術的には高機能に加え、高信頼性、大面積加工適合性といった点を強調してアピールした。「三軸分配加圧アニール法」は、全印刷無線タグとして試作デモンストレーションした[6](図7)。これは、フィルム上に無線タグが印刷だけで作製できることを示した世界初の例である。このため、近い将来フレキシブルな情報端末が手に入るようになるというメッセージを込めたものとなり、技術開発の目指すところまでアピールする結果となった。ところで、ここで示した上記の開発技術例は、一般的に注目を集めやすいデバイスの活性層(半導体層)の作製方法ではなく、むしろ開発が後手になりがちな電極、配線、誘電体層の形成技術であるが、こうした技術に関して我々が積極的に開発に取り組んでいった事例をここでまず示したのにはもう一つの理由がある。それが、プレイヤー抜けの充填という狙いを紹介することである。ある技術コンセプトに対して、注目を集めやすい要素技術に対しては、自ずと多くの技術開発プレイヤーが集まっており、そこそこの技術発展が見込める場合が多い。しかし、上述のような要素技術は、往々にして技術ハードルではなく、ビジネス要因などその他の要因で技術開発に取り組めないような状況に陥ることがある。これではセットしようにもセットできない。技術コンセプトに対して「Totally consistent」ということが、成立させられないような状況になってしまうということである。したがって、技術コンセプトがトータルセットできますということをアピールするためには、抜け技術の充填をあえて狙って開発していく必要があるわけである。完結に向けた「last piece technology」というような概念である。我々は、公的機関の研究者として、技術開発コンセプトが、トータルセットができるということを一早く提示し、技術開発の方向性に対する先導性を示し、産業界での技(26)−図6 有機TFT駆動カラー液晶ディスプレイの開発図7 全印刷製造フレキシブル無線タグの開発図5 リニアモデル型技術開発とノンリニアモデル型技術開発リニア型技術開発◆ ロードマップの策定◆ 計画開発◆ 役割・分担関係ノンリニア型技術開発◆ ロードマップは策定しづらい◆ 目標はイメージとして設定◆ 分担関係が成立していない◆キー技術の開発でジャンプ アップが期待できる到達イメージ到達目標ロードマップ
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