Vol.1 No.3 2008
26/81
研究論文:フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発(鎌田ほか)−192 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)がら、エネルギーが徐々に伝わり、なおかつ全箇所等方的に伝わるために、不必要な箇所にもエネルギーが伝わり、これにより様々な副反応が生じてしまう。これらを回避する技術として、光エネルギーや機械エネルギーなどの代替エネルギーを付与する技術の開発を検討した。① 多源光酸化法 デバイスを高性能で安定動作をさせるためにキーとなる構成部材の代表的なものの一つとしてSiO2絶縁膜をあげることができる。このSiO2絶縁膜をデバイスに適用可能な高品質膜として形成させるためには、通常は少なくとも数百℃の加工温度が不可欠とみなされている。このような代表的デバイス構成部材を仕様通りの制約下(加工温度200 ℃以下)で加工可能にすれば、技術コンセプトが受け入れられるとの考えのもと、同部材の低温塗布加工技術の開発に取り組んだ。 数百度のケイ素化合物に酸素を反応させると二酸化ケイ素(SiO2)が生成する。これが溶媒溶解性の材料を原料として、反応後に高緻密薄膜として得られるようになると電子デバイス用絶縁層が液相プロセスで得られることとなる。しかし、この反応は酸化反応であり、通常は塗設後500 ℃以上の高温処理を要する。この反応温度を下げるためには、触媒を用いる工夫がなされたりするが、ここでは電子材料として用いるので不純物の混入を避ける必要があり、その意味では添加剤を用いることはできない。そこで、我々は光のエネルギーで必要なエネルギー量を局所的に注入するという構想を持ち、この反応を進ませる技術の開発に取り組んだ。その結果、多源光酸化法を開発することで技術導入に成功した[1](図2)。ここでの技術開発のポイントは、SiO2膜を作製するための反応前駆体に応力損傷を受けにくい結合種を有する材料を選択したこと、この結合種を励起させるのに適切なエネルギーを有する光源を選択できたこと、さらにこの前駆体と反応させる反応活性種を励起させるために適切な別光源を選択できたことなどにあり、特にこれらの光源にレーザーのような局所高密度エネルギー光源を用いるのではなく、ランプレベルの比較的汎用性が高い光源で反応を進ませることができるようにしたことが、新規開発プロセスの意義をアピールするのに大きなポイントとなった。全工程の中での最高反応温度を、200 ℃以下とすることができたため、膜の膨張収縮に伴う欠陥発生を抑制することができ、結果的に高緻密SiO2薄膜が得られるようになった。作製したSiO2薄膜は、抵抗率1015Ωcm以上、絶縁耐圧は7 MV/cm以上という高い絶縁性を示すものとなった。この技術は、現在主としてディスプレイ用TFTの絶縁層の構成材料などとして検討されており、ディスプレイの大面積化やフレキシブル化に資する技術として、ディスプレイメーカー等で実用化検討がなされるようになってきている。②三軸分配加圧アニール法 「フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術」とは言っても、使用される技術対象によっては、開発すべき技術の仕様に更なる大きな制約が入る。例えば、メモレベルの表示媒体を電子化する際には、生産コストの制約は極めて厳しくなる。この場合高価な材料は使用できなくなってくる。すなわち、低温加工ということに加え、使用できる材料にも制約が入るということで、こうした条件でも技術適用が可能であることを示す必要がある。そこで我々は、汎用プラスチックフィルム(PETフィルム)上に、汎用導電インクで、低抵抗配線を印刷で作製する技術の開発に取り組んだ。導電インクは、印刷パターン形成後、抵抗を低下させるために通常は400 ℃以上で焼成する。この温度を低下させる技術として、最近ナノ粒子の利用が良く検討されている。しかし、ナノ粒子を利用して材料コストを高騰させてしまっては、上記目的に合致(23)−樹脂タイプAgインクナノ粒子分散タイプインク汎用セラミックスタイプAgインク高温焼成タイプバルクAgPET基板の使用限界温度抵抗率 / Ω・cm焼成温度 / ℃020040060080010001×10-510-61×10-4本技術図3 低温印刷導電パターン形成のための三軸分配加圧アニール法の開発従来の塗布SiO2膜本技術開発Si熱酸化膜 (MV/cm)E漏洩電流密度J(A/cm2)24681010-1110-510-910-110-710-3図2 低温印刷絶縁層形成のための多源光酸化法の開発
元のページ