Vol.1 No.3 2008
25/81

研究論文:フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術の開発(鎌田ほか)−191 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)る。例えば、軽量、極薄、落としても壊れない等の使用感に関する要求や、設置場所や使用環境に左右されない情報端末デバイスの製造(どこでもデバイス)、欲しい人が自分の欲しいものを作製できるようになる製造(だれでもデバイス)など、端末デバイスの提供方法に関する要求なども強く求められるようになってきている。これらの多様な個別要求に対応していくためには、従来の画一的な仕様を満たすだけの技術では、個別対応に終始するようなこととなり、とても産業として成立し得ない。それで、できる限り多様な仕様に適合できる自由度を備えた技術の開発が必要とされるようになってきている。その一方、昨今の省エネルギー化推進の流れの中で、半導体プロセスにも大幅な省エネルギーが実現できるプロセスの開発(半導体技術のプロセス革新)が要求されるようになってきている。真空プロセスからの脱却、高温プロセスからの脱却、フォトリソグラフィープロセスからの脱却などが、特に重要視されていることで、適用されるターゲットによらず、決して見逃すことのできない重要な社会要請事項となっている。 2 研究開発のねらい2.1 Prosumer electronicsの実現を目指す「軽量・柔軟」「高生産性製造」「消費者が欲しいもの」などのような情報端末機器にかかる様々な要求を満たし得る技術としては、多様な仕様に適合できる自由度を備えた技術として、プラスチックや紙などのフレキシブル基板上に、液相プロセスでデバイスを作製可能にする技術、すなわち「フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術」の開発が一つの大きな目標となる。これは同時に、脱真空プロセス、脱高温プロセスなどの低環境負荷プロセスを実現するものであり、社会要請という点からも、実現していかなければならない重要な技術目標である。こうした技術が追求していく究極的な目標は、欲しい人が自ら欲しいものを作れるようにする、すなわち消費者による端末機器の生産(Prosumer electronics;Prosumer=Producer+Consumer)ということを実現させることにある。情報端末機器のように、使う人の個性を反映させることが究極の目標となるならば、それを実現できるツールを個人レベルに開放していくのが、技術目標となるということである。この究極的な目標を実現するためには、単にフレキシブル基板上に液相プロセスでデバイスが作製できるようになればよいというだけではダメで、できるだけ簡便な素材と簡便な製造プロセス(150 ℃以下の低温塗布)、簡便なマシンでデバイスを作製することが可能になるということを実現しなければならない。筆者らは、こうした技術目標を掲げて、それに資する技術開発を行ってきた。2.2 必要機能・デバイス性能とプロセス条件との整合化このような技術で作製される情報端末デバイスは、少なくとも用途に合致した必要最低限の性能は発揮されなければならない。単一技術で突出して性能が優れたものがあったとしても、それがトータルシステムの中に組み込むことが困難であるならば、技術価値は発生しない。その一方で、一部多少の性能が劣っている部分があったとしても、トータルとしての整合性が高ければ、効果的な技術となりうる。すなわち全体セットアップした段階でどのような価値が発生するのかが重要になるということであり、オプティマリー・コンシステント・デバイス(最適整合デバイス)というようなコンセプトである。そこで、本研究開発では最終製品を見据えたデバイス設計とそれによる基本仕様の抽出、およびそれらとプロセス条件との整合性が図れる技術を開発することを目標としている。 3 キーテクノロジーの開発3.1 開発技術の抽出上記目標を達成するためには、開発しなければならない要素技術は数多くある。しかし、まずは象徴的コンセプトとして掲げた「フレキシブルプリンタブルデバイス製造技術」が、そもそも実現可能なことなのかを示すために、実現のための代表的な技術課題を抽出し、それの解決の手法を提示することで、実現へのシナリオを描くことを試みた。例えば、フレキシブルデバイスというと、柔軟性を有する素材を用いたデバイス作製ということになる。柔軟性を有した最も代表的な素材は有機材料であるが、有機材料を用いる以上、加工には温度制約が必ず入る。すなわち、少なくとも素材が分解してしまわない200 ℃以下という加工温度で、必要性能を発揮するデバイスが製造可能になるのかを示す必要がある。また、プリンタブルデバイスといったとき、プリントという加工手法で、デバイス性能を向上させることができる加工精度が担保することができるのかということは最低限示す必要がある。そこで、我々はまずこうした代表的な課題に対して、その解決手法が存在することを実証するための技術開発に取り組み、以下のような成果を得ることにたどり着いた。3.2 低温塗布製造プロセス製造プロセスの低温化には、製造に要する熱エネルギーの代替エネルギーを付与することが有効である。熱エネルギーは、反応場に対して全体に徐々に均等に伝わるエネルギーであるため、これを用いて作製されたデバイス構成部位としての薄膜は、均質性が大きな特徴となる。しかしな(22)−

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です