Vol.1 No.3 2008
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研究論文:輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発(葭村ほか)−182 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)回答(葭村 雄二) ご指摘の通り、従来の低硫黄軽油(硫黄分<50 ppm)を製造する石油精製設備を用いてサルファーフリー軽油を製造するためには、反応器増設等の設備改造、高性能脱硫触媒への変更、原料自体の易脱硫性留分への変更、脱硫反応が進行し易い反応操作条件への変更、軽油基材の混合処理プロセス変更等を含めた総合的な対策が必要となります。しかし、反応設備改造に伴う設備投資コスト増、また、原料やプロセス変更等による石油製品バランス調整の必要性等の問題点も生じます。高性能脱硫触媒への変更は最も経済的な対策であり、高性能脱硫触媒に対する期待は益々高まっています。このため、軽油のサルファーフリー化手法についてまず説明し、その中での触媒技術の役割が明確になるよう本文を修正しました。議論2 ガソリンの脱硫について技術目標についてコメント(水野 光一) 今後の展開の中で、開発技術をガソリンの選択脱硫に展開させたい旨の記述がありますが、このパラグラフは「オレフィンの水素化を抑えると同時に脱硫性能を向上させる」ことが目的のようです。ガソリンで水素化抑制と脱硫向上を同時達成できる触媒が今まで未踏であり困難な技術であることが、あまり強調されていません。なぜ困難なのか、どうすれば可能なのかなど、文章を工夫して頂ければ読者にもわかり易いと思います。回答(葭村 雄二) レギュラーガソリンの主要基材は重油の流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking)で得られる高オクタン価FCCガソリンであり、また、レギュラーガソリン中の硫黄分の多くはFCCガソリンに由来するため、FCCガソリンの低硫黄化と高オクタン価維持を同時に達成可能な脱硫技術が求められています。FCCガソリンの脱硫選択性向上に向けては、主に、オレフィン類の水素化抑制の切り口から種々の検討が行われています。例えば、触媒担体の酸性を制御することにより、塩基性オレフィン類の触媒担体への吸着を弱め、オレフィン中の二重結合の移行による異性化や水素化を抑制する方法等。しかし、従来型脱硫触媒の多くはType I型のCo-Mo-S相(図4)が共存しており、硫化水素雰囲気下でも水素活性化や二重結合の水素化が起こり易いため、オレフィン類の水素化抑制には限界があると推察されます。このため、脱硫触媒中のCo-Mo-S相(あるいはNi-Mo-S相)をType II型のみとし、しかも硫黄配位不飽和サイトあたりの脱硫活性を向上させ、更には担体の固体酸性の適正化等を図ることができれば、FCCガソリンの脱硫選択性の更なる向上に繋がると期待されます。我々は今回開発した軽油脱硫触媒の調製法をFCCガソリンの選択脱硫触媒の製造に展開し、開発技術の用途開拓を図る予定です。議論3 燃料精製技術の将来展開について質問(水野 光一) 今回の触媒技術に係る成果は軽油のサルファーフリー化をターゲットとしたものであり、今後、ガソリン等のサルファーフリー化にも展開されるようですが、その他の用途開拓は可能でしょうか。回答(葭村 雄二) 石油価格の高騰による輸送用燃料資源の多様化・安定供給ニーズや京都議定書対応等へのニーズから、バイオ燃料(将来的には非食糧系バイオマスを原料とするバイオ燃料)に対する期待が急速に高まっています。非食糧系油糧作物であるJatropha等の水素化脱酸素触媒技術による炭化水素製造に加え、バイオマス残渣等の熱化学変換法により得られる燃料油(バイオオイル)の水素化脱酸素触媒技術による炭化水素燃料製造等は、新燃料製造技術として期待が高まりつつあります。これらの反応系では、C-S結合の開裂を伴う水素化脱硫反応と異なり、C-O結合の開裂を伴う水素化脱酸素反応等が主要反応となりますが、固体触媒上のヘテロ原子除去機構には類似性もあります。このため、今回開発した脱硫触媒の改良等を通し、これらのバイオ系新燃料の製造技術にも挑戦していく予定です。(13)−
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