Vol.1 No.3 2008
15/81

研究論文:輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発(葭村ほか)−181 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)[5][6][7][8][9][10][11][12](12)−このため、オレフィン類の水素化を最小限(例えば、オレフィン類水素化率<15 %)にし、高い脱硫活性を与える脱硫触媒のニーズが今後益々高まる可能性がある。 FCCガソリンの脱硫選択性向上に向けては、主に、オレフィン類の水素化抑制の切り口から種々の検討が行われている。例えば、触媒担体の酸性を制御[10]することにより、塩基性オレフィン類の触媒担体への吸着を弱め、オレフィン中の二重結合の移行による異性化や水素化を抑制する方法等。しかし、従来型脱硫触媒の多くはType I型のCo-Mo-S相(図4)が共存しており、硫化水素雰囲気下でも水素活性化や二重結合の水素化が起こり易いため、オレフィン類の水素化抑制には限界があると推察される。このため、脱硫触媒中のCo-Mo-S相(あるいはNi-Mo-S相)をType II型のみとし、しかも硫黄配位不飽和サイトあたりの脱硫活性を向上させ、さらには担体の固体酸性の適正化等を図ることができれば、FCCガソリンの脱硫選択性の更なる向上に繋がると期待される。海外ではFCCガソリンの硫黄濃度は数百~数千ppmあり(我が国の値より1~2桁高い)、脱硫選択性の向上に対するニーズは我が国以上に高い。我々は今回開発した軽油脱硫触媒の調製法をFCCガソリンの選択脱硫触媒の製造に展開[11][12]し、開発技術の用途開拓を図りたい。謝辞 軽油のサルファーフリー化脱硫触媒LX-NC1の製品化開発は、触媒化成工業株式会社(現、日揮触媒化成株式会社)との特許実用化共同研究で行われたものである。同社に深い謝意を表します。本開発脱硫触媒は、旧工業技術院東京工業試験所から今日に至るまで約40年以上に渡り継続されてきた研究の中から生まれたものであり、諸先輩方や旧西嶋研究室の西嶋昭生、佐藤利夫、島田広道、松林信行、今村元泰の諸氏に謝意を表します。キーワードサルファーフリー軽油、水素化脱硫触媒、触媒調製、キャラクタリゼーション(受付日 2008.5.19,改訂受理日2008.8.21)執筆者略歴葭村 雄二(よしむら ゆうじ) 1980年京都大学大学院工学研究科博士課程化学工学専攻修了。同年、京都大学工学研究科研究生。1981年通商産業省工業技術院化学技術研究所入所、2001年から独立行政法人産業技術総合研究所研究グループ長。2007年から新燃料自動車技術研究センター新燃料製造研究チーム長。化技研入所後、エネルギー・環境関連触媒、特に輸送用液体燃料のクリーン化に係る触媒を基盤研究から応用研究まで幅広く捉え研究を実施。できるだけ「待ち伏せ」研究を目指している。文部科学大臣賞(2003)、産総研理事長賞(2006)等を受賞。本論文では主として触媒設計・調製、共同開発、特許作成を行った。鳥羽 誠(とば まこと) 1985年東京大学大学院理学系研究科化学専攻修士課程修了。同年、通商産業省工業技術院化学技術研究所入所。1994年博士(工学)(東京大学)。2001年から独立行政法人産業技術総合研究所主任研究員。2007年から新燃料自動車技術研究センター新燃料製造チーム主任研究員。化技研入所後、天然油脂の化学工業原料化用触媒等の石油化学用触媒の研究を実施、産総研発足後は輸送用液体燃料のクリーン化に係る触媒研究に携わる。産総研理事長賞(2006)を受賞。本論文では主として触媒の構造解析、共同開発、特許作成を行った。査読者との議論 議論1 本研究の特徴についてコメント(水野 光一) 脱硫という最終目標には、触媒の性能向上とともに蒸留など他の技術も貢献する訳ですので、これらの技術選択肢を解析した上で触媒の高性能化に的を絞って研究開発を行い、よい成果が得られたのが本論文の特徴のひとつであると推察します。 したがって、原文の「・・・しかし、これまでの軽油のサルファーフリー化は必ずしも脱硫触媒の交換のみでの対応に至っておらず、依然として高性能脱硫触媒の開発に対する期待は大きい。・・・」は少し意味が分かりにくい。平易な説明にするため、現状のサルファーフリー化(硫黄分<10 ppm)について、(1)改良した脱硫触媒以外の手法の具体例を記述、(2)その欠点も記述、(3)故に触媒単独での脱硫性能の高い触媒が要望される理由、という記述にしては如何でしょうか?触媒を用いた一段反応による直留軽油のS-free化, 石油学会第52回研究発表会講演要旨集, 100(2003).特許第4061380号.特開2004-344725.Y.Yoshimura, N.matsubayshi, T.Sato, H.Shimada and A.Nishijima: Molybdate catalysts prepared by a novel impregnation method, -Effect of citric acid as a ligand on the catalytic activities, Applied Catalysis, A:General, 79, 145-159(1991).K.Hiroshima, T.Mochizuki,T.Honma, T.Shimizu and M.Yamada: High HDS activity of Co-Mo/Al2O3 modified by some chelates and their surface fine structures, Applied Surface Science, 121/122, 433-436(1997).井田 崇: 軽油のサルファーフリー化技術, 第12回触媒化成技術発表会(2004).畑中重人: FCCガソリンの選択的水素化脱硫, 日石三菱レビュー, 44(1), 24(2002).U.S. Patent 7393807PCT/JP2006/303801[1][2][3][4]R.Candia, H.Topsøe, B.S.Clausen: Proceedings of the 9th Ibero-american Syposium on Catalysis, Lisbon, 211(1984).PEC幸手研究室:石油産業活性化センター「平成13年度新エネルギー・産業技術総合開発機構委託 石油汚染物質低減等技術開発成果報告書」(2002).藤川貴志, 加藤勝博, 中嶋伸昌, 橋本 稔, 桐山和幸, 篠田清二: 固体酸を付与したアルミナ系脱硫触媒の開発, 石油産業活性化センター主催第18回技術開発研究成果発表会(2004).葭村雄二, 鳥羽 誠, 神田幸雄, 三木康朗: NiMo/Al2O3参考文献

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です