Vol.1 No.3 2008
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研究論文:輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発(葭村ほか)−180 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)(11)−距離が、それぞれ2.41 Å及び3.17 Åであり、同等のMoS2ナノ構造が得られている。しかし、開発触媒では、Mo-Mo及びMo-S結合の配位数が増加した。前者の増加は、MoS2の(002)面の中で高結晶化度域のサイズが大きくなっていることを示唆している。また、後者の増加は、MoS2のユニットセルがより単結晶のセル構造に近づいたことを示唆している。一方、前述の図8のTEM写真からは、開発触媒のほうが従来型触媒に比べMoS2粒子の層長が短くなっている。これらのことから、開発NiMo/Al2O3触媒(硫化物)ではMoS2層長が短いにもかかわらず、MoS2シートの結晶性が極めて高くなっている(ナノクリスタル状態)と推察される。以上より、当初の意図どおり、γ-Al2O3担体上のMoS2粒子は高結晶化状態で担持されていることが確認された。5.3 新規脱硫触媒LX-NC1の性能 この低積層型MoS2ナノクリスタル構造の高機能化を設計コンセプトとした新規脱硫触媒が触媒メーカーで開発された(商品名:LX-NC1)。開発されたNiMo系脱硫触媒の性能を図10[9]に示す。サルファーフリー軽油を現商業装置で製造するためには、S<50 ppm軽油対応の市販触媒(共同研究相手の脱硫触媒CDS-LX6)よりも反応温度換算で約10 ℃高活性の触媒が必要となるが、開発触媒LX-NC1はCDS-LX6に対して10 ℃を上回る17 ℃近い高活性を示し、軽油のサルファーフリー化が容易に達成できることが確認された。 開発触媒の活性安定性は工業触媒として最も重要な要素であるが、開発触媒LX-NC1の寿命評価試験(ベンチ装置)から、極めて高い安定性を有していることが確認された(硫黄分=7 ppmの軽油製造運転で、通油開始2ヶ月以降の活性低下率が約1.0 ℃/月)。6 今後の展開 この新しい設計概念と高度な触媒調製技術を用い開発された軽油サルファーフリー対応触媒LX-NC1は、直留軽油からサルファーフリー軽油への低硫黄化を経済的、かつ効率的に行うことのできる触媒であり、今後、我が国をはじめとして海外の石油精製各社のサルファーフリー軽油生産に十分答え得る触媒であると考えられる。サルファーフリー軽油の国内外導入により、硫黄被毒の問題が低減・克服された新規排ガス後処理技術等を含む新規自動車技術の早期の市場導入も加速され、ディーゼル排ガスの低減及びディーゼル機関の燃費向上(CO2低減)に繋がると期待できる。 一方、軽油と同様にガソリンの硫黄規制も強化され、我が国では2008年からサルファーフリーガソリン(S< 10ppm)に切り替わっている。プレミアムガソリンは以前からS<10 ppmであったため、レギュラーガソリンのS<10 ppm化が課題となっていた。レギュラーガソリンの主要基材は重油の流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking)で得られる高オクタン価FCCガソリンであり、また、レギュラーガソリン中の硫黄分の多くはFCCガソリンに由来するため、FCCガソリンの低硫黄化と高オクタン価維持を同時に達成可能な脱硫技術が求められていた。従来から、①流動接触分解反応塔内で脱硫を行う方法、②FCCガソリンの深度脱硫を優先させ(オレフィン類の深度水素化も進行)、その後にアルキル化処理等によりオクタン価ロスを補う方法、③FCCガソリンに含有されるオレフィン類の水素化を最小限に抑え(オクタン価ロスの最少化)、チオフェン類やチオール類の脱硫を選択的に行う選択脱硫法、④FCCガソリンに含有されるオレフィン類と硫黄化合物のアルキル化反応を行い、生成した高沸点硫黄化合物を蒸留操作等で除去するアルキル化脱硫法、等が検討されてきているが、②及び③の脱硫技術が実用化されている。この内、③の脱硫技術は我が国で開発された技術である[10]。しかし、レギュラーガソリンのオクタン価向上による燃費改善への影響等について我が国で検討が開始されており、そのオクタン価が欧州市場の95程度(我が国では90程度)まで引き上げられる可能性もある。図10 共同開発した工業触媒LX-NC1の脱硫性能CDS-LX6(CCIC)1101001000Temperature ( oC)-20 -10 Base +10 +20 +3017oC@ 7 wppmSSRLGO Feed: S=1.542 wt%N=130 ppmconventionalLX-NC1Product Sulfur (ppm)CDS-LX6(CCIC)1101001000Temperature ( oC)-20 -10 Base +10 +20 +30171101001000Temperature ( oC)-20 -10 Base +10 +20 +3017oC@ 7 wppmSSRLGO Feed: S=1.542 wt%N=130 ppmconventionalLX-NC1Product Sulfur (ppm)反応温度(ºC)生成油中の硫黄分(ppm)図9 開発したNiMo/Al2O3系触媒上のMoS2粒子の局所構造0123456Mo-MoMo-Sフーリエ変換強度原子間距離(Å)MoSFor unit cell: N(Mo-S)=6, N(Mo-Mo)=0 For crystal: N(Mo-S)=6, N(Mo-Mo)=6NiMo/Al2O3 (lab.)NiMo/Al2O3 (conv.)Mo K-edgeNR (Å)NR (Å)NiMo/Al2O3 (conv.)5.32.413.43.17 NiMo/Al2O3 (lab.)5.92.413.73.17CatalystsMo-SMo-Mo
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