Vol.1 No.3 2008
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研究論文:輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発(葭村ほか)−179 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)(10)−流れ)。 例えば、ある考えの下に試作した触媒、あるいは入手した市販触媒を基に、最新の分析装置を取り込み触媒のキャラクタリゼーションを行い、得られた触媒構造と触媒の活性サイトとを相関付け、触媒の高度化に向けた設計指針の提案に繋げるという一連の流れである。触媒の各種分析技術の進歩や触媒構造等の理論的な裏づけ(DFT計算等)に伴い、でき上がった触媒に関して得られる原子・分子レベルの情報は日進月歩の感があり、この三竦みの関係は進化しつつ、かつ成功している。しかし、工業触媒調製法の主流であり、ラボ調製でも汎用される湿式触媒調製に関しては、むしろ触媒ができ上がるまでの情報(例えば、含浸液中の金属イオン、金属錯体、コロイド等の状態等)が不可欠であるが、でき上がった触媒に係る情報は必ずしも調製段階までフィードバックされていない。この調製部分は知財と直結する部分であるため、でき上がった触媒の情報と触媒調製に係る情報を結びつける役に立つ情報が開示されていないという表現がむしろ適切であろう。本研究は、触媒調製に用いる金属含有含浸液の調製、その含浸溶液中の金属イオン等の構造解析等、通常の固体触媒に係る三竦みの関係を溶液状態まで一段下げ、触媒調製過程を化学的側面に加えエンジニアリング的側面から見直したことにも特徴がある。 我々は、ビーカースケールから工業規模触媒製造へスムーズに移行するためには次の条件が不可欠と仮定した。①工業触媒材料が安価であり、工業触媒材料のロット等のブレを吸収できる含浸液調製法であり、スケールアップした触媒調製工程にも耐える品質管理が可能なこと②現行脱硫触媒の商業生産ラインで受け入れられる触媒調製法であること 様々な検討の結果、ラボ調製ではあるものの、触媒調製支配因子の抽出を行うとともに、支配因子の制御技術の掘り下げを行い、触媒調製のレシピを構築するに至った。この後、産総研内で得られた成果を元に触媒メーカーと共同研究を実施し、産総研のレジピに様々な改善等が必要であることが判明したものの、大きな方向性には間違いがなかったことが確認された。共同研究を通して、工業触媒製造現場の生きたニーズに直接触れることができ、そのニーズに対しアカデミックな切り口からの対応を産総研で実施できたこ図8 開発したNiMo/Al2O3系触媒(硫化物)のTEM写真及びMoS2粒子の分散状態とが、ラボスケールからのスケールアップが比較的容易に行えた最大の要因と思われる。5 研究成果5.1 開発触媒の性能 産総研で試作・開発したNiMo/Al2O3系触媒の脱硫性能を、通常の製油所の脱硫操作条件下(反応温度=340 ℃、反応圧力=4.9 MPa、LHSV=1.5 h-1、H2/Oil供給比=250 Nl/l)、高圧流通式反応装置により評価した。この結果、直留軽油(S=1.11 wt%、N=105 ppm)からサルファーフリー軽油(S<10 ppm、N<1 ppm)を製造できることがわかった。5.2 開発触媒の構造上の特徴 開発したNiMo/Al2O3(硫化物)のTEM写真を図8に示す。MoS2粒子の平均層長は約4.4 nmであり、平均積層数は約1.7である。TEMで観察されるMoS2粒子は、従来型のNiMo触媒に比べて層長が短く、より高分散化していた。また、MoS2粒子の積層数は、従来型のNiMo触媒に比べて、低積層型となっていた。以上より、当初の意図どおり、γ-Al2O3担体上のMoS2粒子は高分散状態で、しかも低積層型で担持されていることが確認された。 開発したNiMo/Al2O3(硫化物)の広域X線吸収微細構造(Extended X-ray absorption fine structure, EXAFS)解析を行い、MoS2相の原子レベルの解析を行った。図9は、従来型NiMo/Al2O3触媒(conv.)及び開発NiMo/Al2O3触媒(lab.)のMo K-edge EXAFSスペクトルのフーリエ変換図である。図右上の表には、カーブフィッティング法から求めた各触媒のMo原子周りの硫黄原子の配位数(N)及びMo-S結合の原子間距離(R)、並びにMo 原子周りのMo原子の配位数(N)及びMo-Mo結合の原子間距離(R)を示す。双方の触媒共にMo-S及びMo-Mo結合の原子間図7 触媒開発の三位一体技術触媒設計・ 調製技術触媒反応評価技術触媒構造解析評価技術触媒の高度化0.62 nm産総研開発プロトタイプ触媒(NiMo/Al2O3系触媒)Av. slab length= 4.4nmSMo0.62 nm051015202530351234567891011120102030405012345MoS2粒子の平均層長(nm)MoS2粒子の平均積層数分率( %/nm)分率/積層数)( %
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