Vol.1 No.3 2008
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研究論文:輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発(葭村ほか)−178 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)金属種(主として金属酸化物)を担持したものがほとんどであり、脱硫操作に先立ち硫化処理が行われている。 水素化脱硫触媒上に発現する活性点の構造については長年にわたり議論がされてきており、現在では、硫化CoMo/Al2O3系触媒を例にとれば、多孔性γ-Al2O3担体上でMoS2粒子が高分散状態で存在し、MoS2粒子のS-エッジ部位にCo種が配位しており、脱硫活性の高いCo-Mo-S相が形成されるとする活性構造モデルが多く支持されている(図4)。る触媒調製法を開発した(図5の②)。これは、長期間脱硫反応に使用したCoMo/Al2O3やNiMo/Al2O3使用済み触媒では脱硫活性がある程度維持されているものの、低積層数(単層の割合が多い)かつMoS2の(002)面が成長したMoS2粒子が多く見られるため、低積層化でも性能が十分発揮できると考えたことによる。 さらに、我々はType IIのCo-Mo-S相の結晶性にも着目し、高結晶性化により次のメリットを期待した:①高結晶性であるため触媒の硫黄ポテンシャルが高く、Co-Mo-S相上の硫黄配位不飽和サイト(脱硫活性点)が硫化水素による吸着阻害を受けにくくなる、②配位硫黄の塩基性が高まり、硫黄化合物からのプロトン引き抜きによる脱硫反応促進や水素活性化に寄与しやすくなる、③配位硫黄の塩基性向上(近傍の硫黄配位不飽和サイトのLewis酸性低下)のため、脱硫反応が原料油中の塩基性芳香族化合物や窒素化合物の吸着阻害を受けにくくなる、などである。 このため、我々は、MoS2の高分散化・低積層化・高結晶化・MoS2エッジ相へのCo種の適正配位の鍵は触媒調製に用いる金属含有含浸溶液と考え、その調製法の構築に注力した(図6)。既に、MoポリアニオンやCoイオンが含まれる含浸溶液調製においてキレート剤(ニトリロ三酢酸、クエン酸[7]、CyDTA[8]等)の有効性が確認されていたが、我々は新たなキレート剤を見出し、さらに触媒調製における支配因子の抽出を図り、高性能のMo系触媒をラボスケールではあるが再現性良く調製できることを確認した。4 アプローチとしての要素技術の深化と複合化 前述の3.までを、proof of principle 型の研究として進めていく場合、図7に示す三竦みの触媒研究(触媒設計・調製技術―触媒構造解析評価技術―触媒反応評価技術からなる三位一体型)を行うのが一般的である。この三竦みの関係がぐるぐる回るとともに進化し、高性能の触媒開発に至るという流れである(ちょうど、コイル状のバネのような(9)−図5 脱硫触媒の高性能化に向けたアプローチType IType IIType IIuMoS2高分散化・積層化uCo(Ni)配位量増加Type IIMoS2相Co(Ni)種担体担体uMoS2高分散化・ 低積層化uCo(Ni)配位量増加uMoS2の高結晶化硫黄原子は未表示脱硫触媒の性能向上に対する考え方①②図6 新たな含浸液を用いた含浸法(従来法)による触媒調製法[Mo7O24]6-乾燥、焼成工程多孔性アルミ ナ 等(表面積~数百m2/g)含浸液Ni2+(Co2+)キレ ート 剤多孔性担体の製造金属含有含浸溶液の製造ラボ調製触媒工業脱硫触媒触媒メーカーの豊富なノウハウu低廉な触媒原材料が利用可能?uスケールアップが可能な調製技術?u触媒調製支配因子の精密制御?u現行商業製造ラインの利用?u・・・・・・・・図4 硫化モリブデン系脱硫触媒の活性相の構造モデルMoCo(Ni)種SCo9S8 (Ni3S2)SSγ-Al2O3等H2H2SType IType IIMoS2CoSx(NiSx)R.Candia, H.Topsøeet al., ( 1984 ).硫黄原子は未表示担体との相互作用HDSHDS Topsøeら[1]によれば、このCo-Mo-S相は、担体との相互作用が大きいTpye I型と担体との相互作用が小さいType II型に分類されており、単位Co量基準の脱硫活性は、Type II>Type Iであることが示された。このため、脱硫触媒の高性能化に向け、Type II型のCo-Mo-S構造を選択的に作り出す触媒調製法が開発されている。 コスモ石油株式会社[2][3]では、Type II型のCo-Mo-S相を多積層化する触媒調製法が開発された(図5の①、触媒調製工程でクエン酸をキレート剤として利用)。MoS2相の平均積層数~3.8で高活性が得られ、開発触媒は実用化されている(実用触媒では、脱硫性硫黄化合物中のアルキル側鎖による立体障害を回避するため、異性化機能を増強する目的でゼオライトを含有するアルミナ担体が用いられていると報告されている)。 産総研[4]−[6]では、Type II型のCo-Mo-S相を低積層化す
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