Vol.1 No.3 2008
11/81

研究論文:輸送用クリーン燃料の製造触媒の研究と開発(葭村ほか)−177 Synthesiology Vol.1 No.3(2008)サルファーフリー軽油を一世代前のS<50 ppm軽油製造用条件と同じ条件下で製造するためには、反応温度換算で約10 ℃高活性化(約2倍の活性)が必要とされている(言い換えれば、約10 ℃低い反応温度でも同等の脱硫活性が発現)。脱硫反応では通油時間の経過とともに脱硫活性が徐々に低下するため、S<10 ppmの品質は反応温度を徐々に上げていくことにより補償されている(例:約1 ℃増加/月)。しかし、高温反応条件下では触媒上への炭素質析出や触媒活性成分の構造変化等が顕著になり、その結果、活性低下が加速される傾向にあるため、高温域での温度補償には限界がある。このため、サルファーフリー軽油の安定製造には脱硫触媒の低温活性化(温度補償域の拡大)が不可欠である。既に、各触媒メーカー(Criterion Catalyst, Haldor Topsøe A/S, Albemarle Catalyst等)や石油会社(Exxon Mobil, IFP/Axens, コスモ石油株式会社、新日本石油株式会社等)でサルファーフリー軽油対応型の脱硫触媒が開発され製品化されているが、原料油種や脱硫設備の操作条件等の制約を受ける場合もあり、依然として脱硫触媒の高性能化(低温活性化と長寿命化)に向けた研究開発が継続中である。 我々は、軽油のサルファーフリー化用脱硫触媒の開発を行うにあたり、脱硫触媒の高性能化の鍵は触媒調製技術にあると考え、開発した触媒調製技術を「現行の脱硫触媒の商業製造ラインをそのまま利用できる触媒調製技術」にまで最終的に仕上げることを念頭に本格研究を実施した。具体的には、研究目標(代表例)を次のように設定した。<脱硫触媒の性能・利用面での課題>①従来型脱硫触媒(S<50 ppm軽油対応型)に比べ、活性が約2倍以上の脱硫触媒②触媒寿命が従来型脱硫触媒と同様に2年以上(活性劣化の温度補償率<1 ℃/月程度)の脱硫触媒③従来型脱硫触媒とほぼ同等のハンドリング特性や安全性を有する脱硫触媒<脱硫触媒の製造面での課題>④従来脱硫触媒と同様に低廉な触媒原料が可能であり、スケールアップが可能な触媒調製技術(数十 gのビーカースケールからtonレベル/日の工業規模レベルへ)⑤触媒調製工程における支配因子の抽出と支配因子制御技術⑥開発脱硫触媒の工業規模製造技術 もちろん、この全ての項目への対応は我々単独では不可能であるため、我々は得意とする①、④、⑤、特に脱硫触媒の新規調製技術に係る④と⑤に注力し、他の項目については触媒メーカーと共同開発を行った。 研究のアウトカムとしては、軽油のサルファーフリー化用新規脱硫触媒の商品化、並びにサルファーフリー軽油の市場への供給支援である。高性能排出ガス低減触媒を搭載したディーゼル車の普及にも間接的に貢献できるため、ディーゼルシフトによる運輸部門からのCO2低減への波及効果が期待できる。3 目標実現に向けた研究シナリオ 軽油中には、図3のGC-SCDクロマトグラムに示すとおり、各種の硫黄化合物(ベンゾチオフェン類、ジベンゾチオフェン類等)が含まれている。これらの硫黄化合物中のC-S結合が硫化物触媒上で切断され、硫黄は水素と反応して硫化水素として除去される(式1)。 硫黄化合物+H2→硫黄非含有化合物+H2S (1) この水素化脱硫(Hydrodesulfurization、略称はHDS)反応は高温・高圧反応条件下(例えば、反応温度=330 ℃~360 ℃、反応圧力=3 MPa~7 MPa)で行われており、反応器への脱硫触媒充填後、約2年間にわたり連続運転されている。脱硫触媒は、多孔性酸化物上にMo,W,Co,Ni等の(8)−図2 製油所における水素化脱硫プロセスの概要図軽油基材加熱炉反応塔分離槽ガス洗浄塔ストリッパー軽質ガスクリーン軽油メイクアップ水素循環水素水素化脱硫触媒図3 常圧蒸留で得られる軽油留分(直留軽油)中に含まれる硫黄化合物 202530354045保持時間 (min) DBTC1-DBTC2-DBTC3-DBTC4+-DBT4,6-DMDBT原料: 直留軽油サルファーフリー軽油S=1.11wt%S=7ppmSC2SC2 C2-BTC3-BTC4-BTC5-BTSC2SC2

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です